自炊は「幸せの最小単位」である

「自分の人生は何のためにあるのか」
そのように悩む人も多いのではなかろうか。

人生の意義や目的は人間にとって中心課題の一つであり、古今東西、多くの議論がされているだろう。
筆者はそれらの議論について詳しくはないものの、人生の意義や目的は「幸せ」と深く関係するものと考える。
なぜならば「人間は幸せを求めて生きるもの」と思えるからだ。

近年では旧来の「幸せのステレオタイプ」が崩れ去り、といって新たな幸せ観もいまだ構築されていないから、人生の意義・目的を見失いやすい時代といえるのかもしれない。

新たな幸せ観がこれから構築されるにあたり、筆者は「自炊」が重要なポイントになってくると考えている。
なぜなら自炊は、「幸せの最小単位」といえるものだからである。

崩れ去った幸せのステレオタイプ

40~50年前までは、

「いい大学に入学し、いい会社に就職し、結婚して家庭を持ち、家や車を購入する」

ことが男性についての「幸せ」と考えられていた。
女性についての幸せは「そのような男性と結婚すること」だったろう。
うちの親などはそれを真剣に信じ、子どもがそれを可能とするよう教育費を投じていた。

この「幸せのステレオタイプ」が、今ではすでに崩れ去っていることに異論は少ないだろう。
崩れ去った理由は、日本経済のバブル崩壊による縮小をあげられるかもしれないし、価値観が多様化し、ステレオタイプに当てはまらない人生を選択する人が増えたこともあるだろう。
あるいは、このステレオタイプを忠実に実践した僕などの親世代(昭和ヒト桁)の人たちが、積木くずしで子どもがグレたり、あるいは自分は定年退職後に熟年離婚するなどし、「あれは本当に幸せだったのか」との反省が下の世代に生まれたこともあるかもしれない

考え方や価値観は時代とともに変化するものだから、旧来の価値観が崩れることに問題は特にない。
しかし問題は、このステレオタイプが崩れて以降、「新たな幸せ観」が構築されていないように見えることである。

人間は、「幸せになりたい」と思いつつ生きていくのが本来の姿ではないかと思う。
その「幸せ」のイメージが明確でないことが、現代において人生の意義や目的を見失う一つの理由ではないかと思うのだ。

「幸せの最小単位」としての自炊

それでは新たな幸せ観として、どのようなものをイメージすればよいのだろうか。

現代では「いい大学」どころか大学へ入ること自体が、学費の支払いなど経済的な事情により難しくなっている。
結婚を選択しない人も増えているから、家庭を持たず一人で暮らすケースも多い。

そこで僕が提案したいのは「自炊」なのだ。
なぜならば、自炊こそは「幸せの最小単位」なのである。
とりあえず自分で料理を作りさえすれば、前を向いて生きていけるだけの、そして「このまま死んでもいい」と思えるだけの、必要最低限の幸せを得られることは、僕の経験上まちがいなくいえることだ。

自炊は、まず料理を作ること自体に大きな喜びがある。
料理は一つの創作活動といえるから、「作品」を創り上げる達成感が非常に大きい。
自分がその時々で食べたいもの、あるいは必要な栄養素を最も感知できるのは自分自身であるわけだから、自炊により自分が食べたい通りの料理、体が必要としている通りの料理を、ものの数十分で目の前に出現させられるわけである。

そして、創り上げた料理をいざ味わうと、しみじみと幸せを感じるのだ。
「まさにこれが食べたかった」と泣ける気分になるなのである。

「一人の食事はわびしい」と思う人もいるかもしれない。
しかし、そんなことは絶対ない。

もちろん、食事による幸せは、気の合うパートナーや家族・仲間といっしょであれば、さらに大きなものになるだろう。
しかし自炊である限り、一人で作り、そして一人で食べたとしても、必要十分と思えるだけの最小限の幸せを得られるのだ。

自炊は人生の悩みを軽減する

幸せとは、欲求の充足と深く関わるものではなかろうか。
その意味では、人間の基本的かつ最大の欲求である食欲は、幸せに直結しても不思議ではない。

しかし人間は、単に「腹が一杯になればいい」というだけの存在ではないのである。
「食べたいもの」を思い描く存在であり、自分が食べたい通りのものを食べられたとき、最も大きな幸せを感じられるのではないかと思う。
そう考えれば、自炊は幸せを追求するにあたって最強の手段なのだ。

もちろん、「自炊だけすれば幸せになれる」と言うつもりはない。
社会には人々の幸せを阻害するさまざまな不公正があるわけだから、一方でその解決に取り組むことも必要だ。
しかし、人生に悩んでいる人が自炊をしていない場合には、その悩みの多くはもしかすると自炊により解決できるかもしれないと、僕は思うわけである。

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