この本は、家庭で中華料理を作ろうと思う人には、とてもおすすめだと思うのだ。
中華というと、中華鍋を強火で煽って料理するイメージだ。というか日本人が中華料理を作っている姿といえば、中華屋などで見かけるそのようなものしかない。
料理を始めたころは、中華料理にはかなり凝った。男性は、道具から入る人が多いと思う。おれも例に漏れず、中華鍋とあの中華用の大きな杓子は2~3個ずつ、それに油切り用のジャーレンだの、中華鍋をレンジにセットするためのゴトクだの、続々とそろえていた。
それらを使い、レンジを最強の強火にして、料理していたわけなのだ。
それが変わったのは、この『大好きな炒めもの』を読んでから。
ウー・ウェンはこの中で、自分が中国の家で作っていた、家庭料理を紹介している。作るのに中華鍋は使わず、使うのはスーパーで売っているような、テフロン加工の炒め鍋。また火加減も、強くても中火で、弱火を使うこともある。
目からウロコが何枚も落ちるようだった。
考えてみれば中国だって、アパートなどに住む人も多いのだから、中華料理屋にあるような強い火力がどこにでもあるわけがない。中華屋は、やはり作る時間を短縮するため、あのような強い火力を使うのではなかろうか。
家庭では、料理屋とはちがう家庭料理ならではの作り方があることは、中国だって当然のことだった。
実際それから何回か、日本にいる中国人に、料理を作るところを見せてもらったことがある。みなウー・ウェン同様、ごくごく普通のガス台とテフロンの炒め鍋を使い、器用に料理を作っていた。
日本の料理番組の場合だと、まだまだ中華料理屋の職人が料理を教えることが多いと思う。でもそうではない、「家庭料理としての中華」を知るには、この本は非常に優れていると思う。
紹介されているものも、中華料理屋にあるような、中華の定番メニューは一通り網羅されているし、「レタス炒め」「トマト卵炒め」「家常豆腐」などなど、家庭料理ならではのメニューも多い。
材料も調味料も、わりと普通に手に入りそうなものばかり。
ただし時々誤植がある。明らかに「小さじだろう」と思うところが「大さじ」になっていたりなどのことがあるにはあるが、ウー・ウェンはカワイイから、おれは許す。
値段は、1,490円(税込)。