和風の豚肉の肉吸いをベースにし、中華風のコクとトロミをつけたもの。体が芯からあたたまり、まちがいなく100回死ねる。
またしても、本当にウマイものを作ってしまったわけですよ。和的中華風・豚の肉吸い。
「和的中華風」とは、今回はじめて作った言葉。
要は、冷蔵庫に豆腐が入っていて、それを食べなければいけなかった。
豆腐となれば、合わせるのはやはり豚肉。それも肉豆腐ではなく、汁が並々と入った「肉吸い」が食べたくなった。
さらにそれを、ニンニクがたっぷり入った中華風の味にしたい。
そこで肉吸いという和食をスタートとしながら中華風に仕立てたこの料理、「和的中華風」と呼んでみたわけなのである。
これが「歴史的」とも思えるほど、会心の出来。食べながら、100回死んだ。
肉吸いは、和風につくる場合には昆布と削りぶしのだしを使う。でもそれだと中華にするには弱いので、だしはやはり植物系および魚介系である、干し椎茸のもどし汁とオイスターソースにする。
味つけは、ベースは和風の酒とみりん・淡口醤油。そこに油で炒めたニンニクと唐辛子・コショウ、そして片栗粉でとろみをつけて、ゴマ油と酢をすこし加える。
基本は和風でありながら、濃厚な中華風のコクがある。とろみのあるこの汁をすすると、体が芯からあたたまる。
そしてもちろん、具にはコッテリとした豚肉と、プリっと弾力のある豆腐。
これは絶対、誰でも死ねるはずだと思う。
これを今回、さらにフライパンではなくアルマイトの鍋で作った。
いやもちろん、べつにフライパンで作ってもいい。でも日本人としては、やはり汁物は鍋で作らないと気分が出ない。
中華だと炒めるから、アルマイトだとくっついてしまうと思うでしょう?
ところが違うのだ。
炒めるのは、弱火でやればいいのである。というか肉を炒める場合には、火を入れ過ぎると硬くなるから、むしろ弱火でじっくりやった方がいい。
弱火でやれば、アルマイトでもくっつかないのだ。
入れる具は、豚肉と豆腐のほかには、小松菜と白ねぎ、それにだしの椎茸。
小松菜は、今回は最初から入れたけれども、シャキシャキとさせたい場合は、最初に炒めて取り出しておき、トロミをつける直前に入れてもいい。
作るのは特にむずかしいことはないから、失敗はしないと思う。
あえて言えば、肉は硬くなるし野菜はやわらかくなり過ぎるから、「煮過ぎない」ことがポイントになるかとは思うところだ。
まず干し椎茸のだしを取る。
鍋に、
- 水 3+2分の1カップ(これで3カップのだしが取れる)
- サッと洗った干し椎茸(中) 4枚
を入れて中火にかけ、煮立ったら火を止めて、フタをしてそのまま置く。15分くらいすると、椎茸はもどり、だしが取れる。
並行して豆腐を下ゆでする。
下ゆでをして水気を出しておいた方が、味がしみ込みやすくなるし、身がしまって扱いやすくなる。
スプーンで2~3センチ大にすくい取った木綿豆腐・1丁(400グラム)を、塩1つまみを振った水に入れて中火にかけ、煮立ってきたらフタをして火を止め、そのまま置いておく。
鍋に、
- サラダ油 大さじ2
- みじん切りのニンニク 2かけ
- ヘタを取って種を出し、細かくちぎった赤唐辛子 2本
を入れて、弱火にかける。
ニンニクがきつね色になってくるくらいまで、じっくりと熱して味を引き出す。
一旦火を止め、鍋に豚うす切り肉(きのうは肩ロース)200グラムを広げて並べ、
- 塩 1つまみ(小さじ2分の1)
- コショウ 少々
をふりかける。
ふたたび強めの弱火くらいにかけ、色が変わるまでじっくり炒める。
- 斜め切りにした白ねぎ 2分の1本
- ざく切りにした小松菜 2分の1把
- 汁気をしぼり、石づきの先端の硬い部分だけ落とし、2センチ大くらいに切った椎茸
- ザルにあけ、水を切った豆腐
を入れ、さらに1~2分、豆腐をくずさないように気をつけながら、全体に油がまわるまで炒める。
- 椎茸のもどし汁 3カップ
- 酒 大さじ3
- みりん 大さじ1
- 淡口醤油 大さじ2
- オイスターソース 大さじ1
- コショウ 1~2ふり
で味をつけ、5分くらい弱火で煮る。
味をみて塩加減し、中火にして、
- 片栗粉 大さじ1
- 水 大さじ2
の水溶き片栗粉を、スプーンで入れては混ぜしながらトロミをつける。
- 酢 小さじ1
- ゴマ油 小さじ1
を加え、ひと混ぜして火を止める。
粗挽きコショウをかけて食べる。
これは、マジでたまらないですよ。
あとは、白めし。
和風の肉吸いの場合には、じつは生卵が、イマイチ相性の悪い肉と醤油をあわせるのに、大きな役割を果たす。
でも中華風の場合には、生卵はなくても味のバランスは十分なので、ただの白めしの方がよかった。
酒は、焼酎水わり。
ここまでうまいものを作ってしまえば、それは酒も進むのだ。
知らないうちに、手が勝手に酒を作ってしまうのだから、飲み過ぎるのも仕方がないのだ。
「手は勝手に作らないよ。」
そうだよな。