冷蔵庫に豚ひき肉を冷凍したのが残っていた。
ハンバーグは食べる気がしなかったので「つくね」を作ったのである。
冷蔵庫を見てみると、まだあれこれ食べるものがある。それできのうも、買い物へは行かずに残り物の処理をすることにした。
メインになり得る材料は、冷凍してあるツバスの切り身と豚のひき肉。
魚と卵の相性のよさを、おととい生節のオムレツを作って知ったから、ツバスに卵をからめて焼いてみるのもうまそうだと思ったが、それよりは肉が食べたくなった。豚肉は、ぼくがもっとも好きなものの一つである。
豚ひき肉は、麻婆ナスを作るために買った。ひき肉にとろみを付けて何かにかけるのはうまいものだが、きのうはナスも豆腐もなかったし、かける相手がない。
となればひき肉は、「こねて丸める」になるだろう。
こねて丸めるといえば、ハンバーグ。でもぼくは、どういうわけか、ハンバーグにはまったく興味が持てないのである。
もちろんこれまで、100万回はハンバーグを食べている。家でも母はよく作ったし、父に外食に連れて行ってもらうとなれば、食べるものはハンバーグ。高校の頃できはじめたファミレスに、行って食べるのもハンバーグ。
これまで一番食べている食べ物は「ハンバーグ」ではないかとすら思うのに、それでは今、「たまにはハンバーグが食べたい」と思うのかといえば、そうはならない。これは「カレー」や「牛丼」とは大きなちがいだ。
カレーと牛丼もずいぶん食べた。カレーは40歳くらいまで、週に一ぺんのペースで食べ続けているのではないかと思うし、牛丼は、10代後半から20代後半くらいまでの10年ほど、週に2~3回のペースで食べた。
これらは「ソウルフード」的な感覚があり、今でも時々「食べたい」と思う。べつに高級なものである必要はなく、カレーは立ち食いそば屋で出てくるようなものでいいし、牛丼は吉野家がいい。
それがなぜ、ハンバーグを食べたいと思わないのか不思議である。
カレーや牛丼とはちがい、「ハンバーグにはだしがないからか」とも思うのだが、同じようにだしがない「とんかつ」は、たまに食べたくなる。寿司も同様。
ハンバーグを食べたくならない理由は謎なのだが、まあそういうわけで、豚ひき肉をこねて丸めようとなっても、「ハンバーグを作ろう」とはならず、「つくね」を作ることにしたのである。
ハンバーグとつくねの違いは、「洋風か和風か」の違いであり、ハンバーグがつなぎにパン粉を使うのにたいし、つくねは片栗粉を使う。それだけの話となる。
ハンバーグは香味野菜としてタマネギを入れることが多く、つくねはネギが多いと思うが、べつにつくねにタマネギを入れていけないということはない。
ああ、なるほど、ここまで来て、「ぼくはパンが嫌いなのか」と思い至った。ぼくはパンをまったく食べないし、食べようと思えば食べられるが、進んで食べたいとは思わない。
でもやっぱり、とんかつはパン粉を使うのだから、それも違うかもしれない。
まあとにかく、つくねを作るのは簡単である。
器に豚ひき肉200グラム、溶き卵2分の1個分(残りはしょうゆを入れてその場で飲む)、みじん切りのネギたっぷり、みじん切りのショウガ大さじ1くらい、片栗粉大さじ1、しょうゆと酒を小さじ1、塩小さじ2分の1をいれ、粘り気が出るまでよくこねる。
こねたあと、しばらく寝かせておくようにすると、味がなじむ。
フライパンにサラダ油少々をいれて中火にかけ、小判状に丸めた肉を焼く。
5分くらい焼き、こんがりと焼き色がついてきたら、裏返して3~4分。
裏面にも焼き色が付いてきたところで、タレを入れる。
タレは酒とみりん、砂糖を大さじ1ずつ、しょうゆとオイスターソースを大さじ2分の1ずつ。
そのまま煮詰め、表裏を返しながらからめれば、出来上がりとなる。
七味をかけて食べる。
つくねが酒にバッチリ合うのは言うまでもないのである。
あとは炒りこんにゃく。
こんにゃくをスプーンで2センチ角ほどの大きさに千切り、中火にかけたフライパンで水気がなくなるまで炒る。「ドボドボ」としょうゆを入れてさらに炒めたら器に盛り、削りぶしと一味をかける。
ちくわと新タマネギ。
味ぽん酢とゴマ油、一味をかける。
それにとろろ昆布の吸物。
すぐき。
酒はぬる燗。
きのうも飲んで、ツイッターで吠えたわけである。
◎関連記事
残りもの処理の料理は「発見をみちびく」という意味でうってつけなのである。