水菜と豚肉を、ニンニクを加えたうす味うどんに仕立てたもの。やはり水菜と豚肉は、生卵などを入れて日和るのではなく、シャキシャキとコッテリの対立をより激化させるのがおすすめ。
水菜の食べ方として「豚肉を合わせる」のは最高のものの一つであって、「ハリハリ鍋」が代表だ。ハリハリ鍋は、元々は鯨肉が使われていたのだが、クジラが手に入らないようになって豚肉やブリで代用されるようになった。
要はシャッキリしゃきしゃきとした水菜と、コッテリとした豚肉やブリの組合せという話なのだ。
この水菜と豚肉のハリハリ鍋、水炊きにポン酢で食べればまずは文句なくおいしいわけだが、ポン酢を使わずだしにみりんと醤油だけで調味すると、実は一味足りないのだ。豚肉と醤油の相性がよくないために、「惜しい」という味になる。
豚肉や、牛肉でも同じなのだが、肉は焼いたのにただ醤油だけかけてもおいしくないことからも分かる通り、魚とちがって醤油との相性があまりよくない。それを解消するのに「酢」はまずは王道であるわけで、とんかつに酸味のあるソースをかけたり、おろしポン酢で食べたりするのはそれが理由だ。
「和風だし」も、豚肉と醤油の相性の悪さを解消する一つの方法であるとはいえる。チャーシューや豚骨だしなどの豚肉を使うラーメンに、煮干しだしを加えたりすることがあることからもそれは分かる。
ただ和風だしだけでは肉と醤油の相性の悪さは、まだ完全には解消されない。それを大きく解消するのが、一つは「生卵」であるわけで、すき焼きを生卵で食べたり、肉吸いに卵かけご飯をつけたりするのはそういうことなのである。
なので水菜と豚肉のハリハリ鍋を、ポン酢ではなく和風だしで調味しようと思う場合、生卵をつけ汁とするか、または割り落とすことは、おいしく食べるための一つの方法。
しかしそれでは、「水菜のシャキシャキと豚肉のコッテリ」の対比が、やさしい味の卵によってちょっと薄れてしまうというキライがある。
そこで登場するのが、「ニンニク」なのだ。ニンニクが肉と醤油の相性の悪さを強力に解消する効果があるのは、焼肉のタレが砂糖と醤油、それにニンニクを基本材料として作られていることから証明される。
ラーメンも、最近のはほとんどにニンニクが入っていると思う。
そこで水菜と豚肉の醤油仕立てを作る場合も、生卵のかわりにニンニクを使うことで、「シャキシャキとコッテリ」の白黒対決を存分に味わえることになる。
というわけで、おととい作ったのは「水菜と豚肉の韓国的うどん」。
簡単に言ってしまえば、「ニンニクを入れたうどんだしで豚肉と水菜を煮たもの」だ。ラーメンではなくうどんのだしにニンニクを入れるなど、日本人的には考えられないかもしれないが、これが基本的に非常にうまく、いくつかの工夫をすることにより、さらに死ねるものになる。
その工夫のまず第一は、かならずコショウを使うこと。ニンニクとコショウは相性が大変よく、「夫婦」といってもいいくらいの関係だ。ニンニクの、わりとダラダラと広がってしまいがちの味を、コショウが「キュッ」とシメてくれる。
それから和風うどんだしの場合には、昆布とかつお節のだしが基本だけれど、ニンニクを使う場合はもっと強いだしの方がいい。それでおとといは、昆布のかわりに干し椎茸、かつお節のかわりに煮干を使ってみたところ、バッチリとコクがあって完全に死ねる味となった。
具には、水菜と豚肉に加えて、まずは油あげ。トロミをつけない汁の場合、汁を吸う具材を入れるのは基本となる。
それから、だしに使う干し椎茸、コク出しの長ねぎに加え、タケノコも入れる。そうすることで、「水菜・タケノコのシャキシャキ軍」と「豚肉・椎茸・長ねぎのコッテリ軍」が編成され、シャキシャキとコッテリの対立がより激化することになるのである。
作り方は、具材を水に順番に入れていくだけだから、異常に簡単。
ただしうどんを煮て、それをどんぶりに取り出してしまってから、その後に水菜を煮るようにするのが、水菜のシャキシャキ感を保つための大きなポイントだ。
鍋に、
- 水 2+2分の1カップ
- 煮干し 1つまみ (頭とワタをとり除く)
- 干し椎茸(中) 2枚
- ニンニク 1かけ (つぶして薄皮を取る)
を入れて中火にかけ、煮立ってきたら小さく沸騰するくらいの弱火を保ちながら10分くらい煮る。
干し椎茸だけ取り出して、石づきの先だけ落とし、半分に切って鍋にもどす。
- 酒 大さじ2
- みりん 小さじ2
- 薄口醤油 大さじ2
- コショウ 1~2振り
で味をつけ、
- 豚バラうす切り肉 50グラムくらい (「コッテリ」のためにはやはりバラ肉。食べやすい大きさに切る)
- 水煮タケノコ 4分の1本 (2~3ミリ厚さの食べやすい大きさに切る)
- 長ねぎ 5センチ (斜め切り)
を入れて、やはりコトコト煮立つくらいの弱火で5分くらい煮る。
中火にし、ゆでうどん・1玉を入れて、ほぐしながら1分ほど煮る。
まずはうどんだけを器に取りだす。
つづいて残った汁に、水菜・2分の1把(ざく切り)を入れ、中火でひと煮立ちさせてうどんにかける。
一味をわりとたっぷりかけて食べる。
「シャッキリ」と「コッテリ」が、コクのある汁のなかで激しく戦ってくれるのは、マジでたまらないですぜ、旦那。
翌日は朝早く家を出ないといけなかったのだけれど、飲み出せば、やはりきちんと酔っ払うまで飲むのである。
おかげで用事に遅刻してしまったのは、仕方がないことなのだ。
「甘えてちゃいけないよ。」
そうだよな。