土井善晴の「すこし洋風・すこし和風」は、洋風料理でありながら、それを和風にアレンジしたもの。レシピの半数以上にニンニクが使われていて、参考になる。
おかずのクッキング2016年2月3月号の特集は、「すこし和風な洋食のレシピ集」。中でも特に、土井善晴の「すこし洋風・すこし和風」が参考になる。
これはこのブログで「中華的」「韓国的」と称して取り組んでいることと、考え方が似ていると思う。
土井善晴は書いている。
日本の家庭料理は、すでに洋風化しつつ、中国化しつつあるのです。それは、肉を食べて、油を使って調理することで、すでにそうなっているのです。
でも料理は、けっして複雑化しない。素材がいいのにややこしいソースをかけられたりすると、「なんでこんなんすんねん。もったいない」と、言わないまでも思うのです。
要するに、洋風料理を作っていると言いましても、どことなく和食の心意気が入っているところが日本のいいところです。
名前は外国料理でも、少し和風を取り入れることで洗練した日本人が作る洋風、いや和風になります。
明治になり、肉食が解禁されたけれど、その前1000年以上にわたって肉を食べてこなかった日本人は、肉の料理法の手持ちがない。そこで外国料理を参考にし、それを和風にアレンジしていった。
とんかつや肉じゃがなどは代表例で、これらは輸入された時期が古いから、もう外国料理とすら思われないようになっている。
なので土井善晴が上のように言うことは、今に始まったことではない。明治の開国以来200年近くにわたって、日本人が営々と続けてきたことだ。
ただし以前は、外国で当たり前に使われるニンニクを、日本に輸入される際には使わないようにするのが普通だった。戦前までは、日本人はニンニクをほとんど食べなかったみたいだし、戦後になってもしばらくは、ニンニクにたいする抵抗感はあったようだ。
でもそれも、今やだいぶ薄れているだろう。
なので現在は、「ニンニクをどう和風として取り入れることができるのか」が中心課題なのではないか。「ニンニクを取りもどせ!」としてこのブログで展開している「中華的・韓国的」料理とは、その一つの試みだ。
土井善晴はこの特集の中で、言葉でニンニクについては語っていない。
でもレシピを見ると、どうやら同じことを感じているようなのだ。
一つの例として、「洋風おでん(和風ポトフ)」。
ポトフは洋風にやるならば、かたまり肉を数時間煮出してだしを取り、ニンニクとローリエでコクをつける。それを土井善晴は、ベーコンのかたまりを入れるものの、煮込み時間は30分くらいとし、かわりに煮干しと淡口醤油をつかう。
でもそれだけだと、具は玉ねぎやじゃがいも、ウインナーなど洋風のものが使われているとはいえ、味はただの「おでん」になってしまう。
そこで土井善晴は、さらにニンニクと黒粒コショウを使うのだ。
「大根と油揚げのドライカレー」なども同様。
これは具が大根と油揚げで和風、味つけはカレー粉で洋風、という企画。コクはバターと醤油で出している。
でもそれだけだと、これは肉も入っていないし、一味足りなくなるはずだ。そこでやはり、ニンニクを加えている。
紹介されている全13メニューのうち、半数以上の7品にニンニクが使われている。
土井善晴も、「和風とニンニク」の取り合わせに新しさを感じているのではないだろうか。
土井善晴が紹介しているほかのメニューは、ドリア、白身魚のナージュ、土鍋で煮込むビーフシチュー、魚介のしゃぶしゃぶ風ブイヤベースなど。どれも和風の考え方を取り入れて、比較的手軽に作れるようになっている。
土井善晴は、この特集以外にもレシピを10品提供している。
またウー・ウェンやコウケンテツを初めとする、その他大勢の人のレシピもあるから、それらもまた参考になるものもあると思う。
540円(税込)。