自炊は外食とくらべて節約でき、栄養バランスも取りやすいとわかっていても、なかなか続けにくいのが難点だ。
自炊が続けにくいのは、自分だけのために料理する際には「義務」が発生しないのが大きな理由だといえる。
そこで自炊を続けるには、「楽しみ」としてどう位置づけられるかがポイントになってくる。
また、食材の購入・管理方法にも一人暮らしならではの工夫が必要だ。
この記事では、それら自炊を続けるためのコツについて紹介していく。
自炊が続かないのは「義務」が発生しないから
自炊が続きにくい大きな理由として、自分だけのために料理する際には「義務」が発生しないことがあげられる。
自分以外の誰のためにもならないから、しなければしないで済んでしまう。
あるいは、外食すれば店主・店員のためにはなるから、そちらのほうが張り合いがあることになるわけだ。
したがって、自炊を続けるためにはモチベーションを、義務などの外部にではなく、自身の内部に求めることが最重要なのである。
内部のモチベーションとして最強なのは「楽しみ」だ。
自炊を「義務をともなう労働」としてではなく、「楽しい趣味」として位置づけることが、自炊を続けるためには必要なのだ。
自炊を「楽しみ」と位置づけるためのコツ
それでは、自炊をどうしたら「楽しみ」と捉えられるようになるのか。
そのためのコツをいくつか紹介したい。
「時短」はあまり考えない
最初に強調したいのは「時短」をあまり考えないことなのだ。
料理本やネットには時短レシピが多くある。
しかしそもそも時短とは、料理が義務をともなう一種の労働であるときに、意味を持ちえるものだといえる。
趣味としての自炊を考える際には、時短をすればするほど料理が労働と捉えられることになり、楽しみから遠ざかってしまうのだ。
もちろん、仕事で忙しい人などが「一刻も早く食事を作って食べたい」と思う気持ちもわかる。
しかし、その気持をちょっと抑え、最初に包丁を研いでみるとか、何ならお酒を飲んだりなどしてみながら、せわしない仕事の時間からゆったりとした趣味の時間へと、頭を切り替えるのがおすすめだ。
理想は「時間を忘れるくらい料理に熱中すること」である。
趣味なら誰でも熱中して時間を忘れ、ふと我に返って「しまった」とすら思うことがあるだろうからだ。
スーパーへはできるだけ頻繁に行く
自炊を楽しみと位置づけるために次に重要なポイントは、スーパーなどへの食材の買い出しはできるだけ頻繁に行くことだ。
自炊の効率を追求すれば買い出しは、一度にできるだけたくさん買って冷凍庫などに保存し、回数を少なくするほど良いことになる。
しかし、冷凍・冷蔵での食材保存にはそれなりの技術が必要であるため、その技術がともなわない初心者が食材を保存すると、食材の鮮度が大幅に落ちることになる。
鮮度が落ちた食材を使うのでは、料理のモチベーションが下がるのだ。
また、スーパーへ行けば、さまざまな食材が並んでいる。
それらの食材を見ていると「これを使って何か作りたい」と、料理のアイディアが浮かぶことも多いと思う。
ただし、初心者のうちは「使ってみたい」と思える食材を見つけても、使い方・調理法がわからないことも多いだろう。
特に魚は、種類に応じた調理法を選ぶ必要があるので難しい。
その場合、最もおすすめなのはスーパーの店員に聞くことだ。
魚の調理法なら、鮮魚コーナーの担当に聞けば喜んで、ていねいに教えてくれる。
また、スーパーへ行く時間が夜分遅いなどするために店員が近くにいない場合は、スマホでネット検索もできる。
「○○(食材の名前) レシピ」と検索すれば、適切な料理法をその場で見つけられると思う。
道具に凝ってみたりする
趣味を続けていると道具に凝りたくなるのはよくあること。
自炊についても、道具へのこだわりはモチベーション・アップにつながる。
自炊を「節約目的」と捉えた場合は、道具に凝るのは目的に反することになりかねないが、趣味であればそんなことは関係ない。
お金が許す範囲でバンバン買ってしまおう。
筆者 高野は鍋を見ると買いたくなる癖があり、一時は中華鍋を4つ、雪平鍋2つ、アルマイトの両手鍋5つなどを持っていたこともあった次第だ。
自炊写真をネットにアップする
料理は一種の創造行為だから、でき上がった料理は「作品」といえるものだ。
しかし、せっかくできた作品を鑑賞するのが自分だけでは、やはり物足りない気持ちになることもある。
そこで、作った料理をSNSなどでネットに投稿するのは非常におすすめだといえる。
「いいね」やコメントをもらえば自炊のモチベーションが大変高まる。
また、一人の食事だと軽視しがちな「盛り付け」も、写真写りを良くするためにちゃんと考えるようになり、食事自体をよく楽しめる効果も期待できる。
ちなみに、高野が運営するフェイスブックグループ「自炊隊」は、まさに自炊のモチベーション・アップを目的として運営しているから、気が向いたら加入してもよいだろう。
だしは自分で取る
だしやスープを自分で取ることも、自炊のモチベーション・アップにつながる。
なぜならば、こちらの記事(『自炊に「開眼」する方法』)で紹介している通り、だしを自分で取ると料理体系の理解がしやすいからだ。
よくわからないブラックボックスが存在するものより、隅から隅まで理解できるもののほうが面白いから、続けやすくなるのである。
同様の意味で、カレールウをはじめとする特定の料理のためにあらかじめ調合された調味料も、時短にはなっても、自炊のモチベーションはむしろ下げることになるので気をつけよう。
一人暮らしの食材購入・管理ポイント
一人暮らしの食材購入および管理のポイントを見てみよう。
特に初心者のうちのポイントは「できる限り保存をしない」ことに尽きるのだ。
できる限り1回分の食材を買う
初心者のうちはスーパーなどで、できる限り1回分の食材を買うようにするのがおすすめだ。
1回分の食材を買うのは効率としては悪いが、初心者にとっては前述のとおり、スーパーで食材を見ることにより自炊意欲のアップになるという大きな利点がある。
また、初心者が複数回分の食材を買うと、以下のことが起こりやすい。
- まだ数日先までの献立の計画が緻密にできず、また食材の使い回しもできないため、食材を余計に買ったり、余分なものを買いがちになる
- 保存がうまくできないため、食材をダメにしやすい
- 買い物をしたときには作りたいと思うものでも、数日経ってしまうと作りたくなくなる
最近では、スーパーでも小分けパックなどが多く販売されている。
高野は以前京都の八百屋で、九条ネギを「1束」ではなく「1本」ずつ売ってもらっていたこともあった。
食材廃棄に罪悪感をもたない
食材を極力1回分のみ買うようにしたとしても、1回では使い切れないことも多くある。
その場合、特に毎日は自炊しない人だと、保存した食材をダメにしてしまうこともあるかと思う。
食材をダメにしてしまった場合には、罪悪感を持たずに廃棄しよう。
「もうこの食材は食べたくない」と思ったら、もしかすると食べられるかもしれないものでも、捨ててしまうのがおすすめだ。
食材をムダなく使い切るためには、買い物や献立作成、あるいは調理に、それなりに高度な技術や経験が必要なのだ。
初心者は、まだその技術や経験がないから、食材をダメにするのは仕方ないのである。
自炊を継続するためにいちばん重要なのは「モチベーションの維持」である。
とりあえず自炊を継続できれば、そのうちに食材もうまく活用できるようになるのであり、初心者のうちは、モチベーションを低下させかねない食材廃棄の罪悪感などは思い切って切り捨てよう。
まとめ
自炊を続けるために重要なのは、労働ではなく「趣味」と位置づけることである。
そのためには、「時短」などの労働効率化についての要素、あるいはモチベーションを低下させかねない食材廃棄の罪悪感などは、できる限り切り捨てるのがおすすめだ。
また逆に、労働と考えれば必要なくても、モチベーションをアップできる要素は積極的に取り入れよう。
自炊を続けることにより、広くて深い料理の世界をぜひとも自由に探求してほしい。