昨日は強烈にうまそうなブリのあらが売っていたので、それを大根といっしょに煮付けた。
「ブリ大根」は、これからが一番おいしい季節なのである。
魚にも野菜にも「旬」があり、それが季節とともに移り変わっていくことは、何とも楽しいものである。
スーパーなどで買い物をしていると、魚でも野菜でも、年中おなじようなものが出ていて、旬の移り変わりに気づきにくい。
だからどうしても、特売などで「安く」売っているものに、ついつい手が伸びることになる。
まあそれでも、旬のものは安いことが多いから、安いものを選んでいると、自ずと旬のものを買うことになるとは思うが、ただ「安い」というだけで魚や野菜を選ぶのは、せっかくの楽しみをみすみす逃すようなものだとぼくは思う。
スーパーとはちがって魚屋や八百屋などの商店は、売り物をおく場所が狭いから、自然、旬のものを目立つ場所に並べることになる。
これが季節とともに変わっていくのを眺めることは、桜やもみじを見るのと同じく、その季節をしみじみと味わうための、またとない機会なのである。
また旬のものを選ぶことは、ただ「安い」だけに留まらず、献立を考える手間を省いてくれることにもなる。
旬のものを順に選んでいくだけで、一年中ちがったものを、自然と食べられることになるのだ。
さてこれからは、「ブリ」と「大根」の季節である。
寒くなるにしたがって、ブリにはたんまりと脂が乗り、大根はやわらかく、そして甘くなる。
この二つを合わせた「ブリ大根」は、冬場のゴールデンメニューなのだ。
「おなじ季節に旬になる、海のものと山のものとは相性がいい」と言われるが、ブリ大根も、ブリのくどさを大根のクセがやわらげ、何ともたまらない味になる。
ブリ大根を作るなら、まちがいなく「あら」がいい。
これはまず、切り身よりはるかに安く、昨日もたっぷりと入ったパックが300円で売られていた。
さらに「脂の乗り」も、あらは切り身より断然いい。
長く煮てもパサつく感じがまったくないから、ブリ大根を作るのに、あえて切り身を選ぶ理由は一つたりともないのである。
ブリ大根を作るには、まずはブリを「湯通し」する。
べつにこれは、「あらだから」ということではなく、切り身を使う場合でもやはり湯通しは必要だ。
熱湯にひたしてシャブシャブとし、表面が白くなったら水に取る。
さらに水でよく洗い、臭みの元となるヌメリや血をていねいに落としておく。
これを大根と煮るわけだが、ブリ大根の煮方には、さまざまな流儀がある。
一番ていねいにやるのなら、まずブリをコッテリと煮て、次にその煮汁をうすめて下ゆでした大根を煮るとなるが、これだとどうしても、けっこうな時間がかかることになる。
そこで昨日は、「最も簡単なやり方」でブリ大根を煮ることにした。
ブリと生の大根を初めからいっしょに煮てしまうのだが、これでもいくつかのことに気をつければ、とてもおいしく出来るのである。
というわけで、「最も簡単なやり方」でブリ大根を煮るのだが、大根はまず下ゆでせず、皮もむかずに「大きめの乱切り」にする。
乱切りは、輪切りにくらべて火が通りやすく、味もしみやすいのである。
また皮をつけておくことで、大根が煮くずれするのを防ぐことにもなる。
今回は大根をしっかり煮るので、皮も十分やわらかくなり、皮を剥くよりかえっておいしく食べられるのだ。
鍋にブリと大根を、できるだけ平らになるように入れ、ショウガのうす切り5~6枚を入れたら、ブリと大根が少し顔を出すくらいまで水をそそぐ。
水をいれる時は、計量カップを使い、何カップいれたか覚えておく。
強火にかけ、煮立ったら中火にし、まずアクを取る。
ブリ大根を作るには、アクをしっかり取るのが一つのコツなのである。
アクが一通り取れたところで、しょうゆ以外の味をつける。
しょうゆは分子が小さいから、砂糖などの分子の大きいのと一緒に入れると、しょうゆばかりがしみ込んで、塩辛くなってしまうのだ。
分量は、水1カップにたいして酒とみりん、砂糖をそれぞれ大さじ1。
昨日は水5カップだったから、それぞれ大さじ5を入れた。
落としブタをし、中火のまま10分煮たら、しょうゆを入れる。
しょうゆも最終的には他の調味料と同じく、水1カップにつき大さじ1を入れるのだが、ここではそれより大さじ1だけ少なくした量を入れる。
水5カップの場合なら、しょうゆは大さじ4となる。
残りのしょうゆ大さじ1は、火を止める直前に入れ、「風味づけ」にするのである。
落としブタをし、煮ていくわけなのだが、ここで最大のポイントは、「火加減」だ。
ここからの煮時間は「30分」で、それ以上煮てしまうと大根はやわらかくなりすぎ、ブリも脂が抜けてしまう。
その30分で、煮汁は「3分の1」くらいまで煮詰めると、今回の分量では味がちょうどよいことになる。
だから火加減は、「強めの中火」くらいを保ち、20分が経過したくらいの時点で、もし煮詰まり切らないようなら、火を強くするなどの調整が必要だ。
煮汁がだんだん減ってきたら、最後は落としブタを外してスプーンで煮汁をかけながら、さらに煮ていく。
30分たち、煮汁がほどよく煮詰まったところで、しょうゆ大さじ1を入れ、サッと煮たら火を止める。
煮上げたら、あとはブリと大根を煮汁にひたしたまま冷ます。
煮汁にひたしておけばおくほど、味がしみていくのである。
冷えた煮汁を温めなおして皿に盛り、青ねぎやカイワレなどの青みをふる。
旬のブリは、脂が乗って「トロトロ」だ。
大根も、やわらかく味がしみ、「何ともうまい」わけである。
昨日はあとは、壬生菜の吸物。
2カップのだしに酒とうすくち醤油大さじ2ずつで味をつけ、まず油あげを少し煮たら、壬生菜を一瞬、サッと煮る。
冷奴。
一味と味つけポン酢をかける。
先日の残りのゴボウの煮物。
鶏の煮汁は煮凝りになるから、冷たいまま食べるのもうまいのだ。
酒はぬる燗。
「ブリ大根に燗酒」は、冬場の最大のたのしみの一つなのである。
「冬はおいしいものが多くていいね。」
ほんとにそうだよな。
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コメント
はじめてコメントします。
旧ブログの時から毎日こっそりブログを拝見しています。
おっさんのおいしそうな料理写真に触発されて初めてイカを調理してみたり、万願寺唐辛子を調理してみたりもしました。(おいしかった!)
おっさん最近いろいろ話題になっているみたいですけど、
私はこれからもおっさんが生きている世界を記したおっさんひとり飯を楽しみにしています。
おっさんよいお年を!
(あ、数日前に今更ながらおっさんひとり飯本を購入してみました。今度はこれ見ながら新たな料理にチャレンジしてみますね!)
下準備が面倒でこの2年くらい、ぶり大根を作っていませんでしたが、
この方法ならば・・・今年はやってみようと思います。