昨日はゆでイカのワタ味噌付けを食べた。
イカは、酒に本当によく合うのである。
今日も本題に入るまえに、まずは前置きなのだが、「だし」についてである。
ぼくは特に男性にたいしては、料理の「おもしろさ」を知るためには、ぜひだしを自分で取ってみることを勧めたいのだ。
もちろん料理は、何でも好きなものを、好きなように作ればいいに決まっている。
ましてや独り暮らしが自分のために作る料理なら、人からとやかく言われる筋合いはない。
ぼくもこのブログでは、料理のリクエストは基本的に受け付けないことにしている。
それはぼくも、人のためではなく、自分のために、料理を作りたいからだ。
ただ「料理をしなくはないのだけれど、どうもイマイチ、おもしろさがわからない」ということは、あるのではないかとおもう。
ぼくも料理に「開眼」する以前はそんな感じで、料理は「手作業」としてのおもしろさはあるし、レシピを見てあれこれ作ればおいしいのだけれど、それ以上にどうということはなく、ましてや自分で新しい料理を考えようなど思い付きもしなかった。
そんなぼくだったのだが、それが料理に開眼し、料理のおもしろさを発見したのは、自分でだしを取ったことがきっかけだった。
これはぼくに限った話でなく、やはりだしを取ることで料理に開眼した男性を、ぼくは何人も知っている。
一番はじめにぼくがやったのは鶏がらだしで、独りで過ごす正月で雑煮くらいは食べようと、元妻がやっていたやり方を思い出して5時間かけて取ってみた。
これがまず、「うまい」のである。
顆粒のだしとは比にならず、雑煮は心底ホッとする味になった。
ただこれは、5時間かけたからうまいのではなく、昆布とかつお節のだしを5分で取っても、やはりおなじように、まちがいなくうまくなる。
次にこのだしが、雑煮を2~3杯食べても使い切れなかったのだが、そうなると、
「このだしを他にどうやって使おうか」
と考えるようになるのである。
だしがあまりにおいしいから、何か他のものを作ってみたくなったのだ。
これはぼくにとって、初めての経験だった。
それまではレシピを見て、料理を作ることしかしなかったのが、そのとき初めて、「自分で料理を考える」ようになったのだ。
作ったのは、塩で味付けした鶏の水炊きと、しょうゆを入れてナスを煮たのだけれど、レシピを見ずに作るから、今おもえば作り方はめちゃくちゃだが、どれもおいしくできたのだ。
だしがおいしいからである。
これもぼくに限らず、一般的に言えることではないかとおもう。
だしさえきちんとおいしければ、他の何をまちがってもそうそうひどい味になることがないから、新しい料理に挑戦する勇気がわくのである。
さらにだしを自分で取ることは、特に男性にとって大きな意味があると、ぼくはおもう。
だしは料理の「中心」だから、そこに自分で手をかけることにより、「料理を理解すること」につながるのだ。
まあこれは、男性も女性も変わらないのかもしれないが、ぼくは男性だから、男性についてはまちがいないとおもえるのは、
「何かをおもしろいとおもうためには、それを理解することが必要だ」
ということである。
ぼくは、そして多くの男性は、わからないものを「おもしろい」とは、なかなか思えないのではないかとおもう。
料理の中心は、「だし」であり「スープ」である。
これを化学調味料やレトルトにたよってしまうと、料理の中心がブラックボックスになってしまい、全体像を理解するのがむずかしくなるのである。
料理は、人類100万年の歴史にわたり、すべての人間が、毎日、「何を食べようか」と考えることによって生み出されてきた、他のどの文化とも比類ない、莫大な広さと深さをもった文化である。
料理を作ることにより、その文化に触れ、それを愛で、さらにそれを生み出す側にまわることが、どれほど知的好奇心をかき立てられることか、という話なのである。
だしのとり方は、昨日の記事にやや詳しく書いてある。
ものの5分でできるから、男性は、ぜひやってみてほしいとおもう。
というわけで、今日も前置きが長くなったが、「イカ」なのである。
イカはスルメイカなら、1パイ200円ほどで買え、財布にやさしいものでありながら、酒には本当によく合うのである。
イカがどうしてこれほど酒に合うのかは、事情のほどはわからぬが、乾き物の代表といえば「スルメ」だし、「塩辛」も肴の代表的存在ともいえるわけで、イカと酒の相性についてはお墨付きになっている。
イカはどのように料理しても、酒にはまちがいなく合うから、酒飲みの人は、安心して多用してもらいたい。
イカを買うなら、やはり捌いたものではなく、ワタが入った丸ごとのやつがおすすめだ。
スーパーでも、新鮮なスルメイカはちょくちょく入荷していて、鮮魚コーナーの人に「塩辛にできますか」と聞けば、鮮度を見分けることができる。
イカを食べるには、まずはサッとゆで、ショウガ醤油で食べるのが、一番簡単で、しかも酒によく合う。
でもせっかくだから、ワタを活用したいところである。
そこで昨日は、ワタを味噌とあわせてタレを作った。
このタレを、ゆでたイカに付けながら食べるのが、またうまいのである。
さてゆでイカワタ味噌付けを作るのだが、まずイカを捌かないといけない。
これはとても簡単で、やったことがない人にとっては敷居が高いこととはおもうが、YouTubeの動画も色々あるとおもうし、ぜひチャレンジしてみてほしいところである。
イカは胴の内側に、タテに入った細長い軟骨にそって、中身とつながった部分があるから、ここを指を中に入れ、とどく範囲でまず外す。
そのうえで、胴と中身を両手でもち、「えい」と引っ張ると、中身はスルスルと抜けてくる。
胴は、軟骨を折らないように抜き取り、5ミリ幅くらいに輪切りにする。
中身は目の下の部分で半分に切り、ゲソは足の根元にある硬いくちばし1対をとり、ぶつ切りにする。
ワタ袋に包丁をいれ、器に中身をしごき出す。
ここに味噌、ぼくは昨日赤だし味噌を使ったが、これは何でもいいとおもう、それに酒とみりん各大さじ1づつと、砂糖大さじ2分の1をいれ、よく混ぜておく。
まずはワタ味噌から作ることにする。
フライパンか鍋を弱火にかけ、ワタと調味料を混ぜたものをいれる。
1~2分炒りつけて、少しドロッとしてきたら出来あがりである。
このワタ味噌は、ここにおろしショウガを混ぜ込んでおくと、これだけで、ご飯は何杯でもいけるし、酒もいくらでも飲めるというスグレモノなのである。
さて次に、イカの胴とゲソをゆでることにする。
グラグラと沸いた水に塩一つまみをふり込み、イカをいれる。
ものの30秒ほどで、イカはピンク色になってくるから、そうしたらザルに上げる。
火を通すとイカは硬くなるから、くれぐれもゆで過ぎないのがポイントだ。
おろしたショウガと青ねぎをたっぷりとふりかける。
淡白なイカと濃厚なワタ味噌のコンビネーションが、酒を強力に後押ししてくれるのである。
あとはとろろ昆布の吸物。
とろろ昆布を入れたお椀にしょうゆで味つけ、昨日はここに三つ葉とユズの皮を入れた。
ちくわとキュウリの酢の物。
ちくわとみょうがはうすく切る。
キュウリはうすく切り、塩で揉んでしばらくおいて、水で洗って水気をふき取る。
酢1:みりん1.5:うすくち醤油0.5の三杯酢で和える。
湯葉とセリの和えもの。
これは酒房京子で食べたのを真似したのである。
セリはさっと湯通しして水気をふき取る。
うすく切った湯葉、ちりめんじゃこと、みりん1:うすくち醤油1で和える。
酒は日本酒。
常温で一杯飲んだら、そろそろ冷たく感じる季節になってきたから、2杯めは燗にした。
燗酒は、温めるのがゆっくりであればあるほど、甘みが出てうまくなる。
湯をグラグラと沸かない程度にあたため、コップを入れてじっくりつける。
燗のつけ具合は、ぼくはぬる燗。
熱くもなく、冷たくもない、何の刺激もないのが一番好きなのである。
「おっさんは、だしになると熱弁するね。」
ちょっと盛り上がり過ぎだったよな。
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コメント
寒くなりましたね
キュウリなどの「なりもの」は身体を冷やすので、そろそろ終わりにしたほうが・・・
さて「四労四苦」で、「四浪四留」を思い出しました
1年間の学費が12000円という人びともいました
年度末には、学費滞納者が名前入りで張り出されていた時代
「個人情報」も糞もない時代
1980年代初頭、大学進学率40%にいかない時代
日本の社会「は」それを受け入れる余裕がありました