イカワタ甘辛みそ炒めで酒を飲んだ。
これは「圧倒的」とまではいかないが、うまいのである。
スルメイカはほんとに「お助け食材」で、まず値段が一パイ200円ほどなのがいい。
量もかなりで、ひとりで食べるなら十分お腹が一杯になり、ありがたいことこの上ない。
季節にあまり関係なくいつでも食べられ、このお助け感に匹敵するのは、ほかにはイワシくらいだろう。
しかもこれが、「酒に合う」のである。
どういう訳だかわからないが、イカはどんな風に料理しても最高の肴になる。
酒の肴の代表が「スルメイカの干物」であるのも肯けるところだろう。
イカを食べるにあたって考える必要があるのは、「ワタをどうするか」ということだ。新鮮なスルメイカならワタも食べられるから、これを捨ててしまうのはもったいない。
このワタが、淡白で控えめなイカの身からは想像できない、強烈な個性を持っているわけで、この「ジギルとハイド」のような二面性がイカの魅力となるだろう。
身とワタをいっしょに使うか、別に使うかで、イカの料理はまったく違ったものになる。
イカワタ料理の代表といえば「塩辛」となるわけで、これは本式に作ると数日かかるが、3時間ほどの浅漬でもそれなりにうまい。一匹分のワタではイカの身すべてを漬けるには足りないから、塩辛にするのはゲソだけにして、胴は別に料理するというしつらえにするのがオススメだ。
あとはワタだけを甘辛いみそで炒めるのもいい。
これだけで、ご飯でも酒でも何杯でも進むものになる。
しかしイカワタ料理で最強と思えるものは、檀一雄レシピの「イカのスペイン風」なのである。ワタもろともぶつ切りにしたイカをオリーブオイルとニンニク、赤唐辛子で炒めるもので、非常に簡単にできながら、圧倒的にうまい。
前にこれを人に食べさせたら、彼は「自分がこれまでに食べたものの中で一番うまいかも」と言っていた。
もしイカ料理に入門してみたいなら、ぜひこれをやってみたらいい。
ただし大変残念なことに、この料理にはニンニクを使うから、和食の献立には合わない。とろろ昆布の吸物やら酢の物やらは、まったく味がしなくなる。
それで普段は、これを和風に変換することとしている。
甘辛いみそ味にするわけで、これはこれで、「圧倒的」とまではいかないが、「大変うまい」ものになる。
イカはさばかずぶつ切りにするのだが、胴の内側にタテに入っている軟骨は引き抜いておく必要がある。
軟骨は折れてしまいやすいから、まっすぐ横に引っ張りだすのがコツとなる。
それから足の根元にあるクチバシもむしり取る。
これは二つある。
その上で、ハシからぶつぶつと切っていく。
ゲソは3センチ長さくらい、胴は5ミリ幅くらいに切ると食べやすい。
ぶつ切りにしたイカを器に入れ、みそと酒、みりん、砂糖それぞれ大さじ1ずつ、おろしショウガ小さじ1、塩小さじ4分の1を加えてよく揉み込む。
30分くらい置いておくと、さらに味がしみていい。
フライパンに多めのゴマ油をひき、強火にかける。
十分熱くなったら、漬け込んだイカと、ざく切りにしたたっぷりのネギを入れる。
炒め時間は1分ほど。
イカが赤く色付いてきたら火を止める。
たっぷりの一味をふって食べる。
酒もご飯も、いくらでも進むのはまちがいない。
食べ終われば皿には汁がたっぷりと残ると思う。
ご飯ならかけてしまえばいいし、ぼくは取っておき、今日うどんにかけるつもりにしている。
あとは酢の物。
キュウリとレタス、ゆでワカメとミョウガ、ちりめんじゃこ。
レタスとキュウリは塩で揉み、水で洗ってよく絞る。
砂糖小さじ3、酢大さじ3、塩少々で和え、ひねり潰したゴマをふる。
それからとろろ昆布の吸物。
冷やしトマト。
酒は冷や酒。
きのうもこれを2杯飲んだ。
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