イカときゅうり、万願寺のオイスターソース炒めで酒を飲んだ。
これは取り合わせとしてはちょっと意外な感じがするが、実は「王道」ともいえる味なのである。
自分が作った料理を肴に酒を飲むのが、どんなに幸せなことであるか、知らない人は多いだろう。料理をしない人には、知ることができない世界である。
もちろん、それだけが幸せだと言うつもりはなく、幸せの形は様々にあるだろう。
ぼくも、好きな女と好きな料理を肴に酒を飲むのは、一人の酒とは比べ物にならないくらい、圧倒的と言いたくなるほどの幸せを感じるのはよく知っているし、子供を育て、温かい家族に囲まれるのも、やはり感じる幸せは大きいことだろう。
しかし、家族がいない、彼女もいない、金もない、「だから不幸せだ」と思うのは、「無知」のなせる業である。単に、自分で料理をしたことがないだけなのだ。
すき家で280円の牛丼を食べる金があるのなら、その金で、牛肉と玉ねぎを買い、自分で牛丼を作ったらいい。
すき家で牛丼を食べるより、はるかに満ち足りた気持ちを味わえるはずである。
人間は、自分以外のものの中に、「自分」を見つけることに幸せを感じるよう、できているのではないだろうか。恋愛なども、あのめくるめくような幸せは、相手と自分が切り離すことのできない、相手が自分の一部になったような感覚によるだろう。
料理は、きちんと考えて作れば、自分自身の分身となる。「今、まさに自分が食べたいもの」がそこにあるわけだから、それを食べて、幸せにならないわけがないのである。
「何かがないから不幸せだ」と思うのは、その何かに縛られているだろう。
「何もなくても、自分で飯を作りさえすれば幸せ」と思えるとき、真の自由が得られるのではないかとぼくは思う。
きのうはイカときゅうり、万願寺とうがらしのオイスターソース炒めを作った。
これはツイッターで、フォローしている人が作っているのを見たのである。
ツイッターはわりと楽しく、ぼくはツイッターは、一つには情報入手の手段として使ってるのだが、それだけでなく、様々な人の何でもない当り前の日常の、徒然に触れられるのがいい。特にぼくが好きなのは、やはり料理に関することで、中でも一人暮らしの人が自分で作る料理については、メニューや写真をしげしげと眺める。
先日も、このイカときゅうり、甘長とうがらしのオイスターソース炒めの写真がツイッターのアップされ、それを見た瞬間に、自分でも作ってみたくなった。
イカにきゅうりと甘長とうがらしを合わせるのは、かなりのセンスではないだろうか。
イカと香味野菜を合わせ、オイスターソースで炒めるのは、イカの食べ方としては定番だろう。ブロッコリーは王道中の王道だし、セロリなどを合わせてもうまい。
しかしきゅうりと甘長とうがらし、またピーマンを考えたとき、きゅうりだけだと、あのブロッコリーの茎のような柔らかな食べ応えは、やはり柔らかなイカによく合うだろうが、味的に、ちょっとクセがなさすぎる。
逆にとうがらしやピーマンだけだと、イカの淡白な味に対してクセは十分なのだが、食べ応えとしては物足りない。
ところがこのきゅうりと甘長とうがらしの両方を合わせることにより、食べ応えとクセの両方を兼ね備えた、ブロッコリーのような状態になるのである。
これを考えた人は、非公開アカウントだからここにアカウント名を出すことはしないが、以前からかなりのものだと思っていたのだが、今回のこのイカ料理を見て、「大したものだ」と改めて感心した。
イカはスルメイカが一番いいと思うけれども、スーパーへ行ったら小さなイカしかなかったから、それを買った。
スルメイカなら、中身を引き出し、ワタと軟骨、クチバシを取り去って、と下処理しないといけないけれど、これは小さいから、丸まま炒めてしまうことにする。
きゅうりはタテ半分に割り、5ミリ幅くらいの斜め切りにする。万願寺もタテ半分に割り、種を取って、1センチ幅くらいの斜め切りにする。
これをきのうは、一緒に炒めてしまったのだが、やはり別々にやった方がいい。
きゅうりは中火で、青臭みが取れるまで、ややじっくりめに、それに対して万願寺は、強火でサッと炒めて歯応えを残す。
きゅうりと万願寺は一旦皿に取り出しておき、あらためてフライパンにゴマ油少々と鷹の爪を入れ、強火にかける。
煙がもうもうと出てくるほどにフライパンを熱してから、イカを入れる。
スルメイカの輪切りやぶつ切りなら、炒め時間はほんの30秒ほど、イカがピンクに色付くほどでいいのだが、きのうは丸ごとだったから、1~2分、やや長めに炒めた。
きゅうりと万願寺を戻し、ひと混ぜしたら間髪入れず、合わせ調味料を入れる。
合わせ調味料は、酒とオイスターソースを大さじ2ずつ、おろしショウガと砂糖を小さじ2分の1ずつ、塩小さじ4分の1、酢と片栗粉を小さじ1ずつ。
ひと混ぜし、とろみの付いた調味料を絡めつけるようにして、火から上げる。
これは思った通り、抜群にうまかった。
イカはワタが入っていたから、その味が加わったのもまたよかった。
あとは、とろろ昆布の吸物。
お椀にとろろ昆布、削りぶし、淡口しょうゆ、水にひたして絞った焼き麩、青ねぎを入れ、お湯をそそぐ。
おとといの手羽元煮。
新ショウガの梅酢漬け。
酒は焼酎水割り。
酔うとツイッターは、ぼくにとって「言いたい放題」の場になるのである。
「言い過ぎないよう気を付けてよ。」
そうだよな。
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