京都駅・中央口から5分くらいのところにあるラーメン店「本家・第一旭」は、いつ行ってもズラリと行列ができている。
超有名店で、ガイドブックにも当然載っているだろう、観光客もここを訪れる人は多いようだ。
でもきょうも、大きなキャスターバッグを持った、明らかに観光客らしき男性に、行列の最後尾にいた僕は聞かれた。
「何分ぐらい並びますかね?」
「30~40分だと思います」と答えたら、その男性はあきらめて帰っていった。
ただし「30~40分」は僕のまちがいで、20分くらいですんなり入れたから、その男性には悪いことをした。いつも夜にばかり来るものだから、酒を飲むお客さんが少ないこの店のお昼間の回転の速さを、僕は知らなかったのだ。
東京に住む僕の叔父も、京都へ来たとき、この店のことを教えたので来てみたけれど、行列のスゴさに怖れをなして、やはり入らなかったそうだ。そういう人は多いのではなかろうか。
しかしこの「本家・第一旭」は、20~30分並んでも食べる価値があるのである。それには5つの理由がある。
ちなみに本家・第一旭の隣に「新福菜館」という名前の、やはり行列ができるラーメン店がある。ここのラーメンも非常に奥深いのだが、あまりに奥深すぎるので、初めて京都のラーメンを食べる府外の人にはすぐには理解できないと思う。
京都ラーメン初心者は、まずは本家・第一旭で食べてみるのがおすすめだ。
それから「第一旭」という名前のラーメン店は、京都にもたくさんあるし、神戸や名古屋にもある。でもそれらの店は、本家・第一旭とは経営的に関係がまったくなく、味もちがうと思っていい。
ここで書いていることは、あくまで「本家・第一旭」のみにいえることだ。
理由その1 京都B級グルメのすごさを身をもって知ることができる
京都は「味の都」でうまいものが山ほどあるのは知れたこと。料亭やそれに準ずる場所で京料理を楽しむのは、観光客なら誰でもしてみることだと思う。
でも実は、京都はB級グルメもすごいのだ。
ラーメンはもちろんのことで、お好み焼きや、牛すじやテールの煮込みなど、京都独自のものがたくさんある。京都観光も上級者となってくれば、やはりありきたりの京料理ばかりでなく、そういう京都B級グルメも味わってみるべきだ。
B級グルメといえば、代表格は、やはりラーメン。そして京都のラーメンで、この本家・第一旭は最も代表的なものとなる。
ここのラーメンを食べることで、京都B級グルメのすごさを身をもって知ることができるのだ。
理由その2 昼から酒を飲んでも罪悪感を感じない
B級グルメに、やはり酒は欠かせない。しかし最近のラーメン店は小洒落たスタイルのところも多く、酒を飲む雰囲気でないところも少なくない。
しかしさすが本家・第一旭はちがう。昼間に来ても、半分くらいの人はビールを飲んでいる。ビールを頼むことに罪悪感を感じない。
しかもタバコも吸い放題だから、愛煙家にもおすすめだ。
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理由その3 ギョウザがうまい
京都の場合、ラーメン店で飲む酒のツマミは、まずはギョウザだ。本家・第一旭のギョウザはラーメン同様、京都・ラーメン店のギョウザの代表的な味がする。
特徴はやや小ぶりで、あんはドロリとなめらかであるのに対し、皮はカリッと焼いてあること。東京の、あんに比較的食べ応えがあって皮がやわらかいタイプとは正反対なので、特に東京の人は、ここのギョウザは食べてみるべきだと思う。
理由その4 「男の世界」が堪能できる
ラーメンは、もともとは労働者が食べたもの。ラーメンの豚肉とネギが、スタミナをつける効果があるからだ。
だから本来、ラーメンは男のものだ。小洒落たラーメン店は、女性も入れるようにして裾野を広げようとしているわけだが、それはやはり邪道である。
その点、本家・第一旭は、あくまで「男の世界」を貫いている。店員は全員男性。女性店員など、もちろんいない。丸坊主でいかつい人とか、けっこういる。
しかもその丸坊主でいかつい男性店員が、愛想はとてもいいのだ。男性はもちろん女性でも、この店の雰囲気のよさに涙するのはまちがいない。
理由その5 ラーメンが2,930回死ねる
そしてもちろん、この店に並んでも入る価値がある最大の理由は、その味だ。2,930回はまちがいなく死ねる。
スープは豚骨。豚骨スープというと白濁したものをイメージする人も多いと思うが、ここのは澄み切っている。そのため臭みが皆無のコクのあるスープにしょうゆでキリリと味がつけられ、ひとことで言えば男性的でありながら上品な、高倉健のような味。
そのスープが、わりと柔らかめにゆでられた麺にじんわりと絡むのは、まさに「極楽」なのである。
それにチャーシューが、ぷりぷりとしていて、モッソリ感がまったくない。これは新福菜館も同様で、京都ラーメンの特徴だ。
あと入っているのは、もやしと九条ねぎ。もやしもネギも「たっぷり」指定が無料でできるのも嬉しいところ。
ただしもやしとネギを両方たっぷりにしてしまうと、本当にドバっと入ってくるから、スープが冷めてしまうおそれがある。たっぷりにするのはネギだけにしておくのがおすすめだ。
本家・第一旭
- 住所 〒600-8213 京都府京都市下京区東塩小路向畑町845
- 電話 050-5570-0973
- 営業時間 午前5時~深夜2時
- 定休日 木曜