昨日はなじみの飲み屋から連絡があり、ブログを見てくれている女性と食事をした。
女性と話をしているうちに、「仕事のし過ぎには気を付けないといけない」と、改めておもったのである。
連絡をくれたのは、「酒房京子」の女将、京子さんである。
ぼくのブログを見た人が、訪れることがあるようで、気が向くと、「今から来ませんか」と電話してくる。
電話をもらったからといって、いつも行けるとは限らないが、また京子さんの、タイミングがいいのである。
「5分ズレたらもう行けない」という、計ったような時間のすき間に電話が鳴るのだ。
昨日もぼくは、もう晩酌の支度をはじめていた。
献立も、こと細かに考えていたのである。
下ごしらえを終わり、これから火を使おうという、まさにその寸前に、
「ブログを見た女の人が来てはるんやけどー」
と電話が入った。
下ごしらえだけだから、冷蔵庫に入れれば済むし、「女の人」というのもポイントは高く、出かけることにしたのである。
酒房京子は大宮で、女性が一人で入ってもまず間違いなくたのしめる、数少ない店の一つである。
早い時間は年配の男性が多いが、夜がふけるにつれて若い人が多くなる。
料理が気が利いているのはもちろん、女将である京子さんの細やかな配慮が行きとどく。
まわりのお客さんとうまく話をつないでくれ、気の置けないひと時をすごせるのはうけあいだ。
酒房京子で待っていたのは、堀北真希にすこし似た、20代半ばの女性。
京都に住み、「四条大宮」で検索していて、ぼくのブログを見つけたそうだ。
初めての酒房京子にいきなりは入れないと、何度か行ったことがある立ち呑み「てら」で、生ビールを5杯も飲んでから来たという。
かなりの酒豪なのである。
京子さんは早速、心づくしの品々を次々とならべてくれる。
酒房京子には品書きがなく、京子さんも何を作るか、はっきりは決めていないそうだ。
お客さんの顔を見て、それから考えるとのことで、出てくるものは毎回ちがう。
かなりのご馳走が出てくるのだが、お勘定はお客さんの年齢に応じて、「安いな」とおもえる値段になる。
昨日はまずは、セリと湯葉の和えもの。
醤油と砂糖のやさしい味つけ。
イカとゴーヤのごま和え。
イカとゴーヤの取合せがまずよく、ゴマで和えるのも気が利いている。
レタスの焼きうどん。
豚ひき肉にネギ、レタス、細うどんで、醤油ベースの和風の味つけ。
すりつぶした山椒をかけて食べる。
ソイの煮付け。
豆腐がやさしく煮えている。
アユの煮付け。
これが非常にうまかったのだが、味つけを聞くのを忘れたのである。
柿のなます。
柿の甘みと酸味の取合せが、しみじみと癒やされる。
やわらかな柿と、シャッキリとした大根の、歯応えの違いもたのしくなる。
ニシンのうどん。
このころには酔いがまわり、写真がブレているのである。
昨日も一人でこれだけ食べ、酒も存分に飲んだのに、「えっ?」とおもうような値段だった。
炭水化物が多めなのは、若者を意識したからだったとおもう。
堀北真希は、よくしゃべる女性で、昨日はあれこれ話がはずんだ。
話をしながら、ぼくはあらためて、「仕事のし過ぎには気を付けなければいけない」とおもったのである。
さて堀北真希と話したのは、「会社」についてである。
堀北真希はつい最近、会社を辞めたのだそうだ。
憧れて入社したが、すぐに失望したという。
「石の上にも三年」と言うが、「これ以上いても時間のムダ」と見切りをつけ、3年をまたずに辞めたそうだ。
その会社は、社員にたいし、「人間的成長」とか、「自己実現」などということを強調していたのだそうだ。
それ自身は悪いことではもちろんなく、堀北がその会社に入ったのも、「仕事をとおして人間的に成長したい」というのが一つの理由だったという。
しかしその一方、時間外労働がひどく、労働基準法など守る気もなかったとのこと。
先輩社員と話しても、「人間的に成長している」ようには見えず、「これはダメだ」とおもったのだそうである。
この会社は、今流行りの言葉でいえば、「ブラック企業」になるのだろう。
こういう会社が、今は増えているのではないかとぼくにはおもえる。
「社員を会社にしばりつける」のは、外国のことは知らないが、日本では昔から、よく行われてきたとおもう。
社員が「仕事だから」と割り切っていると、なかなか力を発揮しない。
「自分ごと」になって初めて、人間は大きな力を出すようになる。
それで社員に、仕事を自分ごとにさせるため、会社は様々な工夫をするわけである。
「仕事を自分ごとにする」こと自体は、ぼくは間違っていないとおもう。
たしかに単に「仕事」のままだと、身を入れてやる気にならない。
しかし同時に、会社が社員に教えなければならないのは、「仕事を就業時間内に終わらせるすべ」であるはずである。
でも伝統的に日本では、その反対の方向に行くようである。
バブル以前に、日本で長く行われてきたのは、「飲ませろ食わせろ」だったとおもう。
上司が部下に酒を飲ませて、自身の考え方を聞かせ、部下の愚痴を聞いてやる。
それによって部下と強いきずなを作り、部下は仕事をやる気になる。
飲み代は、ポケットマネーの場合もあるが、会社の経費が使われることも少なくなかったはずである。
しかしバブルがはじけてしまい、上司も会社も、社員に金を使えなくなった。
それで、それに代わって出てきたのが、「人間的成長」や「自己実現」なのではないかとぼくは見ている。
誰でも人間的に成長したいし、自己実現もしたいだろう。
そこにつけ込まれることで、時間を忘れて仕事をすることになってしまうわけである。
これらのことは、「洗脳」ともいえることである。
洗脳された人間が、どのような末路を辿るのかは、ぼくたちは散々目にしてきている。
バブル以前は、会社に全ての時間をつかい、「仕事が生活」と錯覚した莫大な数のお父さんが、退職したあと、何をしたらいいのか分からなくなってしまった。
「会社」という擬似生活しか経験していないから、本当の生活ができなくなってしまったのだ。
退職したその途端に、奥さんから離婚をされたお父さんも少なくなかった。
奥さんも、ご主人のあまりの錯覚ぶりに嫌気がさしていたのである。
このことにたいする反省があるから、男性については、生活のすべてを仕事につぎ込む傾向は、減ってきているのではないかとおもう。
「料理男子」「お弁当男子」などが登場するのは、それを反映しているだろう。
しかし今は、「女性が危ない」のではないかとおもうのである。
多くの女性が結婚しても、または結婚をせずに、仕事をするようになったのは、ここ最近のことだろう。
だから女性は、その結末をまだ見ていない。
男性とは異なり、反省材料がないのである。
ずいぶんの年齢になっても、仕事しかしていない女性を、ぼくは何人も知っている。
プライベートな初めてのメールで、「お疲れ様です」とか、「お世話になっております」などと書いてくることも少なくない。
「ああ、この人は、プライベートで人と出会ってきていないのだ」と、それを見てぼくはおもうのだ。
日本ではこれから、バブル期の、退職したお父さんと同じことを、女性が経験するようになるのだと、残念ながらぼくはおもう。
洗脳されているのだから、止めることはむずかしい。
もしわずかでも、「自分の今の状態はおかしい」とおもったら、とりあえず立ち止まってみることを、ぼくは願うばかりである。
ただ昨日の堀北真希は、世代がずいぶん下だからだろう、洗脳とは無縁に見えるのが頼もしかった。
「もし子供を作りたいなら、早めに考えないといけませんよ」と言ったら、
「もう彼氏はいますし、子供は作る気がないのでだいじょうぶです」
としっかりしている。
堀北真希とは、12時ごろまで酒を飲み、そのあとタクシーまで送っていった。
シャンとしていた堀北にひきかえ、ぼくはまたしても飲み過ぎて、昨日も終盤、記憶があいまいなのである。
「でもおっさんみたいに、仕事しなさ過ぎるのもどうかとおもうよ。」
ほんとだよな。
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酒房京子
大宮通錦小路下ル「養老乃瀧」向かいの路地を東へ入り、2軒め南側
不定休で営業時間もマチマチのため、ぼくにメールをくれれば、京子さんの携帯番号をお教えします。
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一杯のつもりで飲みに行ったら、10杯飲んでしまったのである。
コメント
ついこないだ私も
黒そいの煮付けを食べたところです
あれは旨い。
しっとりしていて
いい雰囲気で手頃で
客を第一に。そんな店は
本当にありがたいし、
だからこそ愛されているのでしょうね。
仕事を仕事と思わないことが
大切のように思います
高野さん、こちらからお久しぶりです。
酒房京子さん、いつもお料理の種類がとても素敵ですよね。
なんとか訪ねさせて頂きたく、うずうずしています(笑)
また素敵なお若い女性に出会えたようで♪♪
(ラーメン餃子の昼のみもからの梯子を狙っています…。)
京都は一見ではなかなか難しいと認識していますが、
京子さんでしたら失礼なければ大丈夫でしょうか…。
そして、自家製しめサバを3時間のしめで食せるよう
仕入れと時間の取れるタイミングを狙っています。
脂のりの旨いうちに。
京子さんは、その通り、普通に礼儀正しくすれば、全く問題ないですよ。