昨日は料理に集中できず、家での晩酌はあきらめて、外へ飲みに出ることにした。
ちょっと飲もうとおもったのに、結局朝まで飲んでしまったのである。
このごろは、朝型の生活にシフトしたいとおもっていて、「遅くても1時」に寝るのを目標にしている。
1時に寝るためには、ぼくは料理に2時間、食べるのに1時間半かかるから、9時には料理を作りはじめる必要がある。
昨日も9時に、酒を作って料理を考えはじめたのだが、どうにも料理に集中できない。
あれこれ関係ないことばかりを考えてしまうのである。
そこで料理はあきらめて、飲みに出ることにした。
時間は10時だったから、1時までの3時間で、十分飲めるはずである。
「まずは食べよう」とおもい、行ったのは立ち飲み「てら」。
うまい肴を安い値段で食べるなら、圧倒的にここである。
頼んだのは、スパサラ100円。
板わさ200円。
豚天250円。
串カツ各80円~100円。
それぞれ信じられないような値段で、しかもどれも、うまいのだ。
ぼくはまだ、てらの「常連」とは言えないので、知っている人や話しかけてくる人がいれば話しをするけれど、あとは話を聞いている。
でも関西の人は、笑い話がうまいから、聞いているだけでも十分楽しめるのである。
昨日も常連のお客さんが、阪神の選手について、面白おかしく話している。
つい大笑いしながら、ビールを飲んだ。
腹が膨れたところで、よく行っているバー「スピナーズ」へ行った。
最近早い時間に行くことが多く、遅めの時間は久しぶりである。
バーはどこでもそうだとおもうが、常連さんは多くの場合、来る時間帯が決まっている。
だから昨日は、久しぶりに会う常連さんがたくさんいたのだ。
阿部慎之助に似た男性が話しかけてきた。
阿部慎之助は料理男子で、さらに最近彼女ができ、スピナーズへはいつもいっしょに来るのである。
阿部慎之助が、「新爆肉飯」を完成させたとツイッターで見ていたから、作り方をくわしく聞いた。
まずゴマ油でニンニクと豚肉を炒め、一旦皿にとり出しておく。
次に鶏がらスープに、塩と香りづけ程度の醤油で味つけ、白菜の茎をやわらかくなるまで煮たら豚肉をもどし、白菜の葉とニラ、シメジを加えてサッと煮たあとカタクリでとじ、ご飯にかけるのだそうだ。
なるほど、これは醤油を入れすぎないのがポイントだと、ぼくも納得したのである。
そのあとは、画家の小森さんの隣の席があいていたから、ぼくはそこに座って、小森さんと話をした。
ぼくは絵など何もわからないのだけれど、小森さんの話はすごみがあって、いつもおもしろいのである。
さて小森さんは、
「絵の本当のすごさは、すぐに分かるものではない」
と言う。
すぐに分かるようなものは、大したものではないのであり、本物は、そう簡単に理解されないのだそうだ。
だから本物の画家は、理解されるまで200年かかり、生きてるうちには評価されない。
それを承知で、何とか食べられるくらいの生活をしながら、高みを目差しつづけるのが画家なのだと言うのである。
生きているうちには評価されないとは、気が遠くなるような話である。
しかもそれを小森さんは、深刻な顔をせず、飄々とやっていくのが、すごいところだとおもう。
小森さんは、持っていた画集を見せてくれた。
小森さんが、「日本で一番すごい画家だ」という人である。
小森さんは若い時分、今日の20円に困ったころに、16万を出し、この人の絵を買ったのだそうだ。
「そのことで、『絵をやっていく』という自分の腹が決まった」
と、小森さんは言う。
中を開けると、すべて子供が書いたような絵なのである。
「簡単そうに見えるけれど、この線や色が、なかなか出せないものなんです・・・」
小森さんは話してくれる。
ぼくはよくはわからないながらも、全ページを開いてじっくりと見させてもらった。
本物は、すぐには理解できないのだから、まずは見るだけでいいわけである。
画集を見おわり、時計を見たら、2時だった。
寝ようとおもった時刻を、もう1時間もすぎている。
しかしまだ、何かすこし食べたかったのである。
家には前日下ごしらえだけしたものが冷蔵庫に入っているから、それを肴にもう少しだけ飲むことにした。
下ごしらえをしてあったのは、ちくわの酢の物である。
ちくわはうすい小口切り、キュウリもうすく小口切りして塩もみし、しばらく置いて水で洗い、水気をふき取る。
水でもどしたワカメと合わせ、酢1、みりん2、うすくち醤油1/2の三杯酢で和えてゴマをふる。
最近は京子さんの影響で、酢の物に凝っているのである。
飲みはじめたら、何だかのんびりしてしまい、あっという間に2時間がたった。
結局寝たのは5時近く、朝になってしまったのである。
「せっかく早寝で来ていたのにね。」
また一から出直すよ。
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コメント
高野さん!是非ともスパサラを作って記事にしてください!『てら』のスパサラを見てたら『高野さんが作るならどう作るのだろう』と気になりました。お願いします。
ぼくはリクエストは、受け付けていないんですよ。
気が向いたら作るかもしれませんが、たぶん作らないとおもいます。