ブリ大根に、かますご、菜の花。
春の物が出はじめたのである。
相変わらず寒いのだが、気は少しラクになった感じがしている。
「寒いのに、慣れたかな」
そう思う。
振り返ってみれば12月は、「もうこの先、行きていけないのではないか」とすら、真剣に思った。
ヌクヌクとした布団から出る気がせず、食事も、鍋以外には食べられない。
今もヌクヌクとした布団から出る気がしないのは変わらないが、食事については、鍋以外のものも食べられそうな気になっている。
そうなってくると、思うのである。
「まだ、旬のブリ大根を食べていない、、、」
ブリは、1月が旬の最盛期。
「今食べずして、いつブリを食べるのか」という話だろう。
そこで、魚屋へ出かけることにした。
「うまいブリあらを手に入れるなら、やはり魚屋だ」
ただし、ブリあらは毎日出るとは限らない。しかももう夕方、出たとしても、売り切れているかもしれない。
「でも、ブリあら以外に考えられない、、、」
そう思って魚屋へ、足早に向かったところ、、、
無事、おいしそうなブリあらを、手に入れることができたのである。
しかも魚屋には、「かますご」もあった。
かますごは、春の魚。
さらに八百屋へ向かったところ、菜の花もあった。
「ようやく、春の物が出はじめた、、、」
寒い冬を、何とか乗り切れそうな希望がわいてきたのである。
ブリ大根には、いくつかの作り方がある。
まずは下ゆでをするやり方で、魚屋の女将に聞くと、それにも2つあるそうだ。
いちばん丁寧に作るときは、まずブリを煮て、その煮汁を別鍋にとってうすめ、下ゆでした大根を煮る。
簡単にやる場合には、大根を下ゆでし、ゆで汁にそのままブリを入れ、調味料もくわえて煮るという。
それから、ブリと大根を、はじめから一緒に煮てしまう作り方。
大根を下ゆでするのは、一つは大根のアクを抜くのが目的だが、べつに大根はたいしてアクが出るわけでもなし、しかも大根とブリはよく合うので、下ゆでしなくても味的には問題ない。
それから大根は、きちんと煮立てないと火が通らないから、おでんなど煮立てずに、静かに味をしみさせる料理の場合は、下ゆでしておく必要がある。
しかしブリは、煮立ててしまって何も問題ないのだから、ブリ大根を作るには、大根を下ゆでせず、はじめから一緒に煮てしまうのが簡単だ。
ただしその場合、はじめから最後まで、強い火で煮ることになる大根が、煮くずれする心配がある。
そこで大根は、皮をつけたままにして切る。
大根は、皮もおいしい。
煮れば普通にやわらかくなるが、身の部分よりはコシがあるから、皮と身を一緒にしておくことにより、煮くずれを防いでくれるのだ。
ブリあらは、煮立てて火を止めた湯に入れ、しゃぶしゃぶと湯通しする。
そのあと水洗いして、皮のヌメリや血の塊を丁寧にとりのぞく。
鍋にだし昆布を敷き、まず大根、その上にブリをならべる。
酒を2分の1カップほど、そして水を、ブリが少し顔をだすくらいまで入れる。
調味料を、どのくらいの分量にするかは、考えどころだ。
ブリ大根は、強めの火で煮立てながら、煮汁を3分の1くらいの量まで煮詰めていく。
この、最後の煮詰まったときの煮汁の濃さで、味が決まることになるから、調味料は、「どのくらいの量の煮汁を残すか」をあらかじめ予想して、それに応じて分量を決めることが必要だ。
きのうは水と酒、あわせて約4カップ。これを3分の1まで煮詰めると、水は「1カップ半」になる。
魚の煮物は、残った水1カップにたいして、砂糖とみりん、しょうゆをそれぞれ「大さじ3ずつ」が、調味料の標準の分量だから、1カップ半なら、
「それぞれ大さじ5ずつ」
というくらいになる。
まず大さじ5ずつの砂糖とみりんだけ入れて、強火にかける。
煮立ってきたら、中火くらいの火加減にし、しっかりと煮立てながら、アクを丁寧にとる。
ブリ大根を作るには、「湯通しをする」ことと、「アクを丁寧にとる」ことがポイントだ。
この2つだけしておけば、ブリが新鮮なものならば、ショウガなど入れなくても臭みは出ない。
アクを取りながら15分煮れば、大根はやわらかくなっている。
ここではじめて、しょうゆを「大さじ4」入れる。
しょうゆを後から入れるのは、そうしないと大根に、甘みが入らなくなるから。
また残したしょうゆ「大さじ1」は、煮上げるとき入れ、しょうゆの風味を出すのに使う。
落としブタをし、煮汁の泡がきちんと上まであがってくるよう、火加減を強めにたもちながら、30分くらい煮る。
煮汁が予定通り、3分の1くらいまで煮詰まったところで、残りの「しょうゆ・大さじ1」を入れる。
火を止めて、スプーンで煮汁を上からかける。
フタをして、そのまま30分ほど置いて、味をしみさせる。
器によそい、青ねぎと煮汁をかけて、七味をふる。
ブリは脂が乗って、もう、トロトロ。
それからカマスゴ。
熱したフライパンでさっと炙り、おろしショウガと味ぽん酢をかける。
菜の花。
からし醤油とちりめんじゃこで和えた。
酒は、熱燗。
「季節のものを食べるのは、つくづく気分がいい、、、」
そうため息をつきながら、きのうもまた、いつも通り飲みすぎたのであった。
「毎日毎日飲みすぎだよ。」
そうだよな。
◎関連記事
豚肉とニラのマーボー丼 ・・・人をけなす暇があるのなら、めしを作ったらいいのである
手羽元の鍋は、インパクトが強すぎも弱すぎもしない「みそキムチ味」にしたのである