きのうは、ブリのはりはり鍋。
水菜とブリは、相性がいいのである。
商店街は、もう年末体制。
魚屋も、
八百屋も、
正月の品々を、店先にドンとならべている。
ぼくもきのうは、正月の買い出しをした。
「おせち」とまではいかないが、京都ならではの正月料理がいくつかあるから、それは作ってみようとおもっている。
まずは、芋棒。
棒ダラと、
海老芋
を炊き合わせる。
「棒ダラ」は、タラをカチンコチンに干したもの。
これを一週間かけ、水にひたして戻したものを、パックに詰めて売っている。
棒ダラは、昔はどこでも、よく食べられていたようだ。でも鮮魚がいくらでも手に入るいま、正月だけとはいえ食べ続けているのは、京都くらいなのではないだろうか。
魚屋では、正月にむけ、かなりの量の棒ダラを売りにだす。それが年内にはすべて捌けるから、ずいぶんとたくさんの人がいまだに棒ダラを煮ているようだ。
それから、これは「京都ならでは」とはいえないかもしれないけれど、真ダラの子とフキの煮物。
真ダラの子は、もう下ゆでしたのを魚屋で売っている。
堀川ごぼう。
これはぶつ切りにして煮しめにする。
雑煮も京風につくる予定。
里芋の親玉「殿芋」と、小さな里芋「小芋」、祝大根、金時ニンジンをいれ、白みそ仕立てにする。
買い出しを終え、仕事をしようとコーヒー屋へ行く。
買い出しに時間がかかったから、いつもより遅い時間になってしまったが、「まさにこれから始めよう」というちょうどそのとき、携帯にメールがきた。
喫茶店「PiPi」店主・マチコちゃんである。
「壺味に高野さんファンなうですよ。」
ぼくのブログ読者の人が、たこ焼「壺味」にきているらしい。
「マジすか(^O^)」
ぼくはそれだけ、メールを返した。
これから、仕事をしないといけないのだ。まだ酒をのんでしまうわけにはいかない。
しかしマチコちゃんは、立て続けにメールをしてくる。
「サイン本ご購入!」
壺味には、「おっさんひとり飯」のサイン本を置いてもらっているのである。
さらに、
「来ないですか?」
ときた。
マチコちゃんが、ここまで踏み込んで誘ってくるのは、珍しいことである。
たとえば飲み屋に、仲がいい大宮の酒豪「池井くん」がいたとして、
「池井くんがいるよ!」
と言ってくることはあっても、「来ない?」とまでは言ってこない。
それでぼくが、ノコノコ出かけていくと、
「誘ってもいないのに来た」
と笑うのである。
そのマチコちゃんが、「来ないですか?」と言ってくるのは、よっぽど「会わせたい」と思うからだ。
これは、行かないわけにはいかないだろう。
「神様は、きょうもぼくに『仕事をするな』と言っている、、、」
ぼくは観念し、仕事をやめて壺味へむかった。
壺味へいったら、いたのは25歳の青年とその女友だち。
愛媛からきたとのこと、シュッとしたイケメンの、好青年。
家族旅行で大阪へきて、
「高野さんに会いにいってくる」
と、家族とはべつの単独行動、京都に帰省している女友だちを誘い、壺味へきたそうだ。
大宮へくればぼくに会えると、固く信じているところが、なかなか無鉄砲でいい。
マチコちゃんは、
「高野、よんでみた」
と減らず口をたたく。
しかしこの青年のひたむきさなら、「会わせたい」とおもうのも納得できる。
それからしばらく、ぼくはビールを2杯と、レモンサワー。
つまみはおでん。
青年と女友だちがにこやかに話をきいてくれるから、ぼくは気分がよくなり、久しぶりに延々としゃべり倒した。
9時になり、二人はサイン本を購入し、帰っていった。
さてぼくも、家に帰り、飯をつくることにした。
もう、つくるものは決めていた。
ブリのはりはり鍋。
水菜が食べたかったのだ。水菜には、まずは豚肉、そして、ブリ。
「はりはり鍋」は、もともと水菜とクジラの肉でつくるものだったそうだ。でもクジラがとれなくなり、いまは水菜で代用されることが多い。
脂ののった、こってりとしたブリに、サッと煮たシャキシャキの水菜は、とても相性がいいのである。
ブリは、切り身でも問題ない。
ただしブリの切り身は、部位によって、味がかなり大きくちがう。
赤身の部分は脂が少なく、モソモソとしがちである。
これは「好み」なのだが、ぼくは腹に近い、脂がたっぷりのったところを選ぶようにしている。
食べやすい大きさに切り、熱湯でサッと湯通しする。
表面が白くなる「霜降り」の加減にしておけば、臭みが出ることはない。
だしは昆布でとる。
削りぶしを入れてもいいが、ブリはだしがしっかり出るので、なくても問題ない。
4カップの水に10センチくらいのだし昆布をいれ、10分以上、昆布の香りがしっかり立つまで、煮立てないようにしながら煮出す。
このだしに、
- 酒 大さじ3
- みりん 大さじ1
- 淡口しょうゆ 大さじ3
で味付けする。
いれる具は、水菜とブリ、それに厚揚げ。
水菜は一把全部をつかっても、まちがいなく食べられる。
ここからは、テーブルの上のコンロでやる。
酒は、熱燗。
鍋にだしを張り、まず一度で食べられる分のブリと厚揚げだけを、あまり煮立てないようにしながら10分くらい煮る。
水菜をいれ、サッと煮たら、火を落とす。
はりはり鍋は、水菜がシャキシャキしているのが身上だ。
くれぐれも煮過ぎないようにしないといけない。
器によそい、大根おろしや一味をかける。
トロトロに脂がのった、旬のブリ、それにシャキシャキ水菜、味を吸った厚揚げ、、、
たまらない味である。
きのうもまた、「うめー、うめー」と、ひとりで唸りながら酒をのんだ。
仕事をしなかったおかげで、寝たのは12時。いつもよりだいぶ早い時間である。
「朝早く起きたら、きょうできなかった仕事をしよう」
そうおもって眠りについた。
ところが目が覚めたのは、9時。
いつもとおなじだ。
壺味でそれなりに酒をのみ、さらに家に帰って普段どおりにのんだから、だいぶ飲み過ぎていたようだ。
おまけに布団が、ぬくぬくとして気持ちがいい。
しかし、神様が「仕事をするな」と言ったのだ。
これは仕方がないのである。
「のんき過ぎにもほどがあるよ。」
そうだよな。
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