きのうは、ブリカマ塩焼に、カブと豚肉の吸物など、皿をならべた。
人間は、なぜ毎日ちがうものが食べたくなるのか、不思議なんすよね。
我ながら、よくも毎日飽きもせず、こうして食事をつくるものだとおもわなくもないのだが、好きなのだから仕方がない。
だいたい、酒が好きなわけだから、少しでもおいしく酒をのもうとおもえば、肴はうまいほうがいい。
酒については、同じものをのみ続けるのがいいとおもっている。
ぼくは月桂冠の上撰、酒パックのやつを愛飲するが、とくに日本酒の場合には、体が慣れてくるのだろう、「古女房」のような感覚で、のみ続けるほどにうまくなる。
へたに高級な酒をだれかにもらったりしても、結局のまずに、料理に使ってしまったりすることもある。
しかしこと、「食いもの」にかんしては、毎日おなじものを食べつづけるのは、たぶん誰にもできないだろう。
これが、ぼくには不思議におもえる。
毎日ちがうものを食べるのは、動物のなかでは人間だけだ。パンダなど、飽きもせず、笹の葉ばかりを食いつづける。
ネコにしたって、「うまい/まずい」はきびしく判別するようだが、それなりの質のものなら飽きたりはしないようだ。
人間にしてみても、毎日ちがうものでないといけないのは、食いものだけではないだろうか。
「女房」は、ふつうは一人で十分なわけだし、「着るもの」などにしたって、他人の目を気にしなければ、いつもおなじで困ることはなさそうだ。
食いものだけは、自分一人のためであっても、毎日ちがうものでないといけない。
このことには、なにか奥深いものがありそうな気が、ぼくなどはするのである。
というわけで、きのうも何を食べようか、考えるわけなのだが、おととい超パワフルな、激辛鍋にしたからにちがいない、何かしみじみとしたものを皿にならべて、それをちょっとずつ摘みながら、杯をかたむけたい気分になった。
「しみじみとしたもの」となれば、やはり「焼き魚」だろう。
鮭でもいいとおもったが、スーパーで、ブリカマが半額になっていたから、それを買った。
ガス台にグリルがあれば、魚を焼くのはたいして苦でもないのだが、グリルがない場合には、
「焼き網より、フライパンのほうがうまく焼ける」
というのがぼくの意見だ。
コンロに網を直接おいたのでは、火が近すぎて、均一に火を通すのがむずかしいし、魚から脂がおちて、部屋中もうもうと煙だらけになるうえに、ガス台も汚れる。
フライパンは、テフロンなら問題なくうまく焼ける。
中火にかけ、魚をおいたとき、「ジュッ」というくらい熱するのがポイントで、そうすれば、魚がくっつくことはない。
まずフタをして、10分くらいか、焼いたあと、ひっくり返し、今度はフタをはずして、7~8分くらいか、焼く。
たっぷり塩をふって焼いたブリカマは、さっぱりと、大根おろしとぽん酢で食べる。
しみじみとすることは、請け合いだ。
それからやはり、温まるためには、「汁物」は必要だ。
きのうはカブが買ってあったから、それと豚肉の吸物にした。
カブを扱うにはいくつかのコツがあり、まずは、
「皮を厚くむく」
こと。
小さなやつなら「3ミリ」くらい、大きいのなら「5ミリ」くらいとおもっていい。
それからカブの茎と葉は、いっしょに煮るとアクが出るし、色もあせるから、別に塩ゆでしておくこと。
サッとゆでたら水にとってよく絞り、汁ができたら最後にいれて、温めるくらいにしてお椀によそう。
そして最大のポイントは、「煮すぎない」ことである。
大きなカブはいいのだが、小カブの場合、煮すぎると溶けてしまい、影もかたちもなくなる。
煮時間は5分くらいだとおもうけれど、竹串でさしながら、火の通りぐあいを念入りに確認する。
「わかっていても溶ける」から、汁物はあたため直しもするわけだし、「まだ硬すぎるかも」とおもうくらいで火から上げて、ちょうどいい。
カブと豚肉の吸物をつくるには、だしは昆布と削りぶしでとる。
3カップ半の水で、まず10センチくらいのだし昆布を煮立てないようにしながら煮出し、一つかみの削りぶしをくわえてさらに5分ほど煮出し、だし殻を、削りぶしは絞ってとりだせば、3カップほどのだしができる。
酒大さじ3、みりん大さじ1、淡口しょうゆ大さじ3で味をつけ、まずカブと油あげを煮る。
5分ほど煮て、カブがまだすこし硬い段階で、豚肉をいれ、豚肉の色が変わってきたら、下ゆでした茎と葉をいれて、ひと煮立ちさせて火を止める。
このカブと豚肉の吸物が、またしみじみとするのである。
削りぶしの風味がプンと立ったところに、豚肉のコクがつき、それがカブにしみているのは、たまらない。
あとは、小松菜のみぞれ和え。
これは喫茶店「PiPi」でおぼえたもの。
小松菜は、塩をふった水でサッとゆで、水にとってよくしぼる。
うす切りの竹輪、ちりめんじゃこと合わせ、よくしぼった大根おろしとぽん酢であえる。
ちりめんじゃこと青ねぎの卵炒め。
卵2個に、ちりめんじゃこと青ねぎ少々、砂糖と塩それぞれ一つまみ(小さじ2分の1くらい)をくわえて溶きほぐし、サラダ油でさっと炒める。
それにすぐき。
酒は、熱燗。
テーブルに、皿がたくさん並ぶのは、やはり気分がいいものだ。
つい、のみ過ぎてしまうも、仕方がないのである。
「人間はいろいろ大変だね。」
ほんとにな。
◎関連記事
最強のスタミナフード「豚とニラ・カキのマーボー鍋」は疲れが一瞬でとれるのである
京都大宮「PiPi」のランチが今日はまたうまかったのである。