昨日は旬まっ盛りのブリあらが手に入り、ブリ大根にした。
むずかしそうな感じもする煮魚だけれども、実際のところ何もむずかしいことはないのである。
「料理をしよう」と思う場合、男性なら「中華」あたりから入ることが多いのではないだろうか。
ぼくもそうだったのだが、まず「中華料理が好き」というのがあるし、中華鍋を強火にかけ、あっという間につくり上げるところが豪快な感じがして、「自分でもやってみたい」と思うところがある。
さらにカウンター式のラーメン屋などで調理風景を見る機会も多く、「なじみがある」こともあるわけだ。
同じような理由で、女性なら「イタリアン」になるのではないだろうか。
そのうち「レパートリーを広げよう」と考えることになるわけで、そうすると「魚」が射程に入ってくることになるだろう。
魚を料理するとなると、まずは「塩焼き」が万能だが、これは簡単すぎるから、もうちょっと手の込んだものをと考えると、ホイル焼きとかクリーム煮、トマト煮、フライ、酢じめあたりへ行くのではないか。
「煮魚」へは、なかなか行かない気がするのである。
自分のことを振り返っても、煮魚に手を出したのは、料理を始めてずいぶん時間がたってからだった。
これは煮魚が「何となくむずかしそう」な感じがしたということもあるが、それ以前に「どういう料理法だか見当がつかなかった」ことが大きい気がする。
「煮る」といっても「カレーを煮る」のとは違う感じがするわけで、「それではどう煮るのか」がイメージできない。
イメージができないものは、近寄りがたくなるわけだ。
おなじように感じる人は、少なくないのではないかと思うのである。
ぼくは煮魚に開眼し、それまで「イメージできない」と感じていた理由がよくわかった。
煮魚は、「ほかのどの料理法にも似ていない」のだ。
焼いたり炒めたりするのと違うのはもちろんだが、カレーや豚汁を煮るのともまた違う。
煮付けの起源についてくわしいことは知らないが、おそらく日本で発明された、独自の料理法なのではないかと思う。
そういうわけで、長いあいだ近付かなかった煮魚だが、やってみれば難しいことはなにもない。
失敗したのは、砂糖と塩をまちがえた一回のみである。
うまいことは言うまでもなく、また魚の料理法として、実に合理的だと思う。
煮魚を作るたびに、ぼくは「日本人」にたいする尊敬の念が湧いてくるのだ。
「ブリ大根」は、やはり煮魚の中では「王道」といえるものだろう。
ブリと大根の相性は最高で、しかも今どちらも旬まっ盛りだから、うまいことこの上ない。
それでいながら、多少の煮時間はかかるけれど、むずかしいことは何もなく、「失敗」もほとんどあり得ない。
煮魚をまだやったことがない人は、この機会にぜひ挑戦するのをぼくは熱烈にすすめるのである。
というわけでブリ大根なのだが、まずは「ブリのあら」を買ってくる。
たんまり入ったのが、300~400円で買えるはずだ。
大根も買う。
これは聖護院大根だが、ふつうの長い大根でもちろんのこと問題ない。
ブリ大根が失敗する可能性があるとすると、「臭みが出てしまう」ことだ。
それを防ぐため、ブリあらは熱湯にひたしてシャブシャブとし、そのあと水でよく洗う。
臭みの元になるのは、血液や血のかたまり、皮のヌメリなどである。
これらをていねいに取り除くのが、ブリ大根をつくる際の最大のポイントだ。
大根は皮をつけたまま、3センチ角くらいの乱切りにし、まずは5センチ角くらいのだし昆布を敷いた鍋の底にならべる。
鍋は深めのフライパンがあれば、それを使うので問題ない。
大根は、鍋に入りきるだけ、たっぷり入れるのがいいわけで、ブリあら1パックに2分の1本は入れたらいい。
大根を下にするのは、大根のほうが長く火を通す必要があるからで、その上に、ショウガのうす切りを5~6枚と、湯通しをしたブリあらをならべる。
ここに、まずは酒を1カップ。
酒はもっと少なくても悪くはないが、たくさん入れれば入れるほどうまいのである。
それから水を、計量カップで計りながら、ブリがひたり、少し顔を出すくらいまでいれる。
調味料は、まずはみりんと砂糖を、酒と水があわせて4カップなら、大さじ4ずついれる。
1カップにつき大さじ1である。
これは多少うすめの味つけで、好みでもっと入れてもいい。
強火にかけ、煮立ってきたら中火にして、アクを取りながら10分煮る。
ここでアクをていねいに取るのも、臭みを防ぐためのポイントだ。
10分たったら、しょうゆ大さじ3をいれる。
みりんや砂糖より大さじ1だけ少なくしておくのだ。
しょうゆ大さじ1は、さらに最後に入れるのだが、これはまずは、甘めの汁で煮たほうが、味が入りやすいことがある。
それからしょうゆは煮ると風味が飛ぶから、最後にしょうゆを入れることで風味をつけるわけである。
あとは落としブタをして煮るのだが、ここでポイントになるのは「煮時間」と「残り汁の量」である。
まず煮時間は、ブリ大根なら全体で40~50分、しょうゆを入れてから30~40分が適当だ。
それ以上煮てしまうと、ブリからは脂が抜け、大根もやわらかくなり過ぎることになる。
その時間のあいだに、この調味料の分量では、煮汁を3分の1くらいまで煮詰めたい。
煮汁は煮詰まると濃くなるから、その分、調味料を節約できるわけなのだ。
だから火加減を調整し、「煮詰まりきらない」と思ったら強火にするなどして、しょうゆを入れてから30~40分でうまく煮詰まるようにするのが、唯一むずかしといえば、むずかしいところとなる。
煮汁が首尾よく煮詰まったら、しょうゆ大さじ1をいれ、ひと煮立ちさせ火を止める。
そのまま最低でも30分は煮汁にひたして、特に大根に、味をしみさせるようにする。
ブリと大根を器に盛り、煮汁を少し、上からかけ、青ねぎやカイワレなどの青みを散らす。
好みで七味を振ってもいい。
まっ盛りのブリあらは、「これでもか」というくらい、トロトロの、トロットロだ。
ブリのうまみを吸った大根が、またうまいわけである。
あとはとろろ昆布の温く奴。
お椀にとろろ昆布とうすくち醤油をいれ、お湯で温めた豆腐をお湯ごといれて、かつお節と青ねぎを振る。
カブの皮とだし殻のじゃこ炒め。
一昨日作ったやつである。
すぐき。
毎日食べる。
酒はぬる燗。
ブリ大根には、やはり燗酒なのである。
「ぼくもブリ大根に挑戦したいな。」
おう、ぜひやってくれ。
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コメント
我が家も昨日はブリでした。
塩焼きでした。
本当にトロトロですよね~。大好きです。
聖護院大根…かぶのような形なんですね。
どんなお味なのか…ぜひ食べてみたいです。
聖護院大根は煮くずれしにくいにもかかわらず、
口に入れるとふわっととろけるようになる、
煮物に打ってつけの大根なんですよ。