昨日は檀一雄『檀流クッキング』掲載レシピの「イワシの煮付け」を作った。
『檀流クッキング』は、女性にはどうかわからないが、自炊をする男性には、絶対的におすすめなのである。
檀一雄はご存知のとおり小説家で、檀ふみのお父さんである。
日本中、世界中を放浪し、家を留守にしつづけたことで知られていて、自伝的小説『火宅の人』が代表作となっている。
放浪癖をもつ小説家と「料理」は、なんともミスマッチなのだけれど、檀一雄は「料理上手」としても知られ、『檀流クッキング』という料理本も出している。
この『檀流クッキング』が、自炊する男性には絶対的におすすめだと、今日は言いたいわけなのだ。
自炊が意外につづかないのは、経験がある人も多いと思う。
「自分だけのために作る」のは、張り合いが湧かないからだ。
だから自炊をつづけるには、「何かのため」という必要性ではなく、「料理そのものが好き」とおもえることが大事になる。
料理を好きになるきっかけとして、この『檀流クッキング』は打ってつけだとおもうのだ。
まずは檀一雄が、「料理が好きで好きで仕方がない」のである。
子供のころ、失った母親のかわりに料理をするようになった檀は、料理のおもしろさに目覚め、その後の放浪も「各地の料理を実際に食べ、それを自分で作ってみたい」のが理由であったのだそうだ。
「異常なまでの料理好き」ともいえるわけで、『檀流クッキング』にはその檀の気持があふれている。
「料理が好き」という人の気持ちが、この本を読むとわかるのだ。
またこの本は、「読み物」としてもおもしろい。
小説家が書いたのだから、当然のことである。
料理にまつわるエピソードだけでなく、作り方が書かれたところも、箇条書きなどでなく、端正な文章で書かれているから、そのまま読み通すことができる。
作り方を読みながら、檀が料理をつくる様子が目に浮かぶようなのだ。
さらに実用書としての価値も高い。
日本のめぼしい料理はもちろん、韓国、中国、インド、ロシア、ヨーロッパ、さらにアメリカなどの料理が載せられている。
この本の料理をひと通り作れば、「料理の基礎が学べる」と言ってもよい。
手に入りやすいものを使い、作り方もシンプルで、難しいことは何もない。
ただし唯一、「難点か」とおもうのは、檀がやや「凝り過ぎ」ともおもえることだ。
そのことが、「女性」がこれを好きになれるかどうか、自信がないところなのだ。
でもぼくは、この凝り過ぎなくらいの料理への執着ぶりが、この本の好きなところである。
また多くの男性も、好きになるのではないだろうか。
しかし『檀流クッキング』の真髄は、ただ読むだけでは見えてこない。
実際に作ってみて、初めてわかってくるのである。
昨日作った「イワシの煮付け」も、『檀流クッキング』のなかでは実に目立たないレシピである。
ものの10行ほどで書かれ、読み飛ばしてしまってもおかしくない。
ところがこれを作ってみて、実際に食べてみると、「なるほど」と膝を打つことになる。
檀は出来あがる料理の味については何も書いていないから、食べて初めて、檀の美学やこだわり、繊細な配慮がわかるのだ。
檀のイワシの煮付けは、梅干しに加えてうすくち醤油と緑茶を使う。
梅干しを使うのは、イワシを煮付けるのに定番だが、ふつうは砂糖としょうゆでコッテリさせることを考えると、この味つけは異色である。
これがどういう味になるのか、ぼくは「ひとこと」で言えるけれど、あえて言わないことにする。
檀の世界を、自分で作り、感じてほしいからである。
さて「檀流イワシの煮付け」だが、イワシはまず、頭のついたのを買ってくる。
これをサッと洗うだけにして、頭もワタもそのまま残す。
鍋にだし昆布と細切りショウガ少々をいれ、イワシは昨日、5尾をならべて、味が出るよう、箸で穴をあけた梅干しを2~3個いれる。
ここに緑茶を、イワシがかぶるくらいに注ぎ、酒大さじ3、うすくち醤油大さじ1で味つけする。
梅干しは、檀は「ていねいにそぎ切りする」と書いている。
その通りにやれば、檀の世界を一層感じられることになる。
強火にかけて、煮立ったら中火にし、出てきたアクをていねいに取る。
そのあと落としブタをし、20分くらい煮る。
もし途中で煮汁が少なくなりすぎたら、お茶を足すようにする。
20分たったら火を止めて、しばらく煮汁にひたして味をしみさせる。
そのあとイワシと梅干し、ついでにだし昆布とショウガも器に盛り、残った煮汁で1分ゆでたそうめんを少し煮て、味をしみさせる。
そうめんを添えるのは、檀ではなく、ぼくの流儀だ。
これは体験したことがない、驚愕のうまさなのである。
しかし同時にまちがいなく、「なるほど」と思うとおもう。
味がしみたそうめんも、もちろんうまい。
あとはポパイ炒め。
卵とほうれん草を炒めたものは、京都ではこう呼ばれることがある。
ざく切りにしたほうれん草をバターを使って中火で炒め、砂糖とうすくち醤油で味つけしたら溶き卵をいれる。
大きめにまとめて皿に盛り、七味をふる。
とろろ昆布の吸物。
かつお節ととろろ昆布、青ねぎをお椀にいれて湯をそそぎ、しょうゆで味つけ。
みょうがの冷奴。
一味とポン酢。
みょうがはタテに切ると、汁をかけてもシャッキリとしているのである。
檀流イワシの煮付けは久しぶりに作ったけれど、やはりすごい。
『檀流クッキング』はぼくのバイブルなのである。
「おっさん檀先生にかぶれてるよね。」
「放浪したい」とか言ってるしな。
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サウナのあとはラーメンを食べ、夜は軽い肴で晩酌したのである。
コメント
わたしは今日高野さんブログを参考に鯛のあらの煮付け作りましたよぉー(^-^)v
味見したらほくほく幸せですぅー
もう少ししたら晩酌タイムなので楽しみまーす♪
いわしの味も気になったので絶対作ろうと思いました!
それに檀流クッキング注文しちゃった~!
イワシの梅煮
うまそうだと思って作ってみたのですが、味見してみると考えていたよりすっぱい味になりました。梅が入っているので当たり前といえば当たり前なんですが。。。
味としてはこれであっているのでしょうか。
合ってますよ。
ただ梅干しの酸味や塩気は強いのから弱いのまで色々なので、たとえば酸味がきついと思えば、砂糖を足すなど、味を調整してみてください(^_^)