サンマは塩焼きでもうまいが、コトコト煮るとまたうまい。
魚を煮れるようになると、料理の世界は大きく広がるのである。
魚といえば、まずは「塩焼き」ということになる。
たしかに魚は、どんなものでも塩を振って焼けば、まず間違いなくおいしく食べられる。
今はサンマがシーズンだから、これも「塩焼きしよう」となるだろう。
脂の乗ったサンマの塩焼きは、最もおいしいものの一つである。
ただサンマも、毎日塩焼きばかりしているわけにはいかない。
どんなにおいしいものであっても、人間は毎日食べ続けていると、飽きるように出来ているのだ。
そこで「他に料理の仕方がないか」と考えることになるわけだが、ここで煮付けが登場することになる。
魚の煮付けは、塩焼きに次ぎ、簡単でおいしい魚の食べ方なのである。
煮付けというと、何となく難しく、敷居が高いような気がする人も少なくないと思う。
実際には煮付けは、水に酒と砂糖、みりんと醤油を入れて火にかけるというだけの話だが、たしかに奥は、とてつもなく深い。
日本料理の粋がここにあるといっても過言ではないわけで、知るほどに汲み尽くせぬ、広大な天地が広がっている。
でもそのことと、「そこに踏み込むのが難しい」のは別の話で、魚の煮付けはポイントさえ抑えれば、誰がやっても、そこそこおいしいものが出来ると思う。
煮付けが難しいように感じるもう一つの理由は、「西洋の料理と大きく違う」ことではないかとぼくは思う。
煮付けは煮汁を飛ばしながら火を通すわけだが、他の国の料理には、あまり似たものはないのではないか。
だから「煮る」といって「カレー」をイメージすると、煮付けはそれと大きく異る。
見慣れないものは、誰でも難しく感じてしまうものである。
さてそれで、サンマの煮付けになるわけだが、白身魚を煮付ける場合は、脂が抜けてしまいやすいから、煮時間は10分かそこらになるのだけれど、サンマやイワシ、ブリなどの青魚はコトコト長く煮るほうがうまい。
青魚は脂が多いから、ちょっと煮ただけでは味が入らず、逆に長く煮ても、脂が抜けないのである。
ただし、圧力鍋は、ダメなのだ。
魚を圧力鍋で煮てしまうと、高温になり過ぎるからだと思うけれども、脂が抜け、パサパサになってまずいのである。
なので、サンマを煮付けるには普通の鍋でやるのがいい。
時間は1~2時間かかるのだが、その間はテレビを見ていてもいいのだから、手間自体はたいしてかからない。
サンマは包丁で頭を落とし、腹を尾びれに近い所にある肛門まで切り裂いて、ワタを取り出し、よく洗う。
これを骨ごと、3センチ幅くらいにぶつ切りにする。
サンマはスーパーに売っている、普通のやつで問題ない。
サンマの煮付けは冷蔵庫に入れておけば日持ちするから、どうせ手間は変わらないのだし、2~3尾まとめてやってしまうのがいい。
鍋にだし昆布を敷き、ぶつ切りにしたサンマを一列に並べる。
鍋はフライパンで問題ない。
ここに酒をたっぷり、1/2カップ、それから砂糖とみりん、醤油をそれぞれ大さじ3ずつ入れ、水をサンマの高さより1センチくらい高くなるように入れる。
どうせ煮詰めてしまうのだから、ここでは水の分量はどうでもよく、サンマがきちんと煮汁に浸るようにさえすればいいのだが、これが西洋料理のカレーなどと、煮付けが大きく違うところだ。
さらに煮付けの場合、臭み消しを何か入れる必要がある。
ぼくは実山椒を冷凍したのを備蓄しているからそれを入れたが、ショウガを一かけ、薄切りにして入れてもいいし、ショウガに梅干しを加えてもおいしい。
またサンマやイワシを煮る時には、梅干しを使わない場合は、酢を大さじ1ほど入れる。
これは酢が骨をやわらかくする効果があるからである。
調味料を全部入れたら中火にかけ、出てきたアクをていねいに取る。
青魚を煮る場合には、アクをていねいに取るのが、おいしく作るための大きなポイントだといえると思う。
アクを取ったら、落としブタをし、火加減を消えそうなくらい小さくする。
本当に小さく、フツフツと沸いてくるくらいがいい。
落としブタは、アルミホイルやキッチンペーパーなどでもいい。
煮汁が魚の上にまわるようにするのが、落としブタの目的だ。
これで最低1時間、できれば2時間くらい煮る。
もし煮汁が早くなくなり過ぎた場合は、水を足しても問題ない。
もし時間があるのなら、1時間煮て、火を止めてしばらく置き、再び1時間煮るようにすると、さらにおいしく出来上がる。
煮汁を冷ますと、その時味がしみ込むのである。
2時間煮たら、落としブタを外して火を少し強め、スプーンで時々煮汁を上からかけながら、煮汁を煮詰める。
煮汁が少し、ドロリとしてきたあたりで火を止める。
煮汁をどの程度まで煮詰めるかは、まさに好み次第となる。
しゃばっとしたのが上品だと思う人もいるし、テカテカに照りが出たのがいいと思う人もいる。
皿に盛り、煮汁を上からかける。
青ねぎを散らすのもいい。
2時間煮れば、骨もそのまま食べられる。
しっかりと味がしみ、さらに脂がきちんと乗っているのが、何ともたまらないのである。
あと昨日は、これが簡単で、しかもとてもうまかった。
ツナオニオン。
薄切りにした玉ねぎの上にツナをのせ、ポン酢醤油をかける。
ツナは油も全部かけてしまうのがポイントである。
「ぼくも煮付けをやりたいな。」
よし、そしたら次は、頼んだぞ。
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コメント
「魚を煮れる」
というのは、日本語として
間違ってます。
本当にライターの仕事をしている
のですか?
失礼ながら、小学生でも分かる間違い
だと思います。
「煮られる」と迷った結果、「煮れる」を選びました。
別に国語の先生だからといって、ぼくの先生ではありませんので、いちいち添削してくれなくていいですよ^^
栗田さん、お言葉ありがとうございます。
ちょっと差し障りがありますので、コメントは承認しませんが、お気持ちは嬉しく思います^^
煮魚の敷居の高さ、しみじみ解ります。でもお陰で、この頁を見て「やってみようかな」の感を抱きました。
子供のころ刺身と焼き魚は食べられたのですが、煮魚はダメでした。
大人になっていつもの定食屋で、金眼の煮つけがでて、初めて旨さが解りました。
秋刀魚も刺身と焼き魚オンリーでしたが、いつか煮魚もやってみたい気になりました。
今度は食べれる(ラヌキ)と思います。
ラヌキは、若い人が頻繁に使いますが、これは日本語の整理のような気がします。
「られる」=受身・可能・自発・尊敬と小学校で習いましたが、その中で可能の時にラヌキが多発します。
「してやられた」と受身の時は若い人でもラヌキはしません。ラをぬくと「してやれた」となり達成つまり可能になります。
それは若い人もわかっているような気がしますので、そのへんの使い分けで言葉は整理されていくのではないでしょうか。
ウヰスキーがいつのまにかウィスキーになったように。そこにゐてと言わなくなったように。
子供の頃苦手だった煮魚もいまではおいしく食べれます。