きのうは、さんまのトマト煮。ちょっと意外な気もするさんまとトマトソースは、じつは王道。
50を過ぎると、体にあれこれガタがくるのはもちろんのこと、頭の方もいかれてくる。
ボケてくるわけである。
とにかく、忘れる。よくあるのは、何かをしようと思って、たとえば居間から台所へ行ったとして、台所へ行ってみたら、しようとしていたその「何か」を忘れてしまうというやつ。これは40歳くらいからはじまった。
家を出るときも、忘れ物をとりに帰らないといけなくなることが多く、まず1回では出られない。湯沸し器のタネ火をつけっぱなしで出る確率は、ほぼ100%。
ただし湯沸し器については、換気扇も止め忘れるから、あまり危険はないのである。
元々、物忘れが多いタチではあった。お使いなどでも、1つ頼まれ、それからさらにもう1つ頼まれた場合、先に頼まれたことを忘れるタイプ。
でもそれが、最近ではまさに日進月歩で加速している感じがする。
そこで、さんまなのである。
魚、特にさんまを初めとした青魚には、「DHA」が含まれているそうだ。このDHA、神経の情報伝達をスムーズにし、脳の老化を抑える働きがあるとのこと。
アルツハイマー型認知症の改善にも効果があると判明したとか。
おれのようなボケはじめている老人には、まさに打ってつけの食べ物だ。
肉は、疲れやすく、疲れが抜けにくい老人の体にエネルギーを与えてくれる。魚は、老人のボケた頭をシャッキリとさせてくれる。
肉と魚は、やはり両方食べる必要があるわけだ。
さてさんまを食べるには、まずはお造りやたたき、なめろうなどの生食がうまいし、塩焼きや甘露煮、蒲焼きなどなど、日本式の料理法もたくさんある。
それから韓国風に、キムチ味で煮るのもうまい。
さらにさんまは、トマトソースで煮るのがうまいのだ。
さんまとトマトソースというと、和と洋の対極みたいなもので、ちょっとミスマッチなイメージもある。でもトマトソースは、アンチョビとの相性が最高なのだ。
アンチョビは、要は「イワシ」。さんまと似たような、青魚。トマトソースがイワシと合うなら、さんまとも合うのは必然だ。
そこできのうは、さんまのトマトソース煮。
ジャガイモも、いっしょに煮込んだ。
これはまさしく「王道」といえる味だ。
つくるには、普通にトマトソースで煮込んでも、もちろんうまい。ただ完全に洋風のやり方でトマトソースを仕立ててしまうと、ご飯に合わない。
なのでご飯に合わせるためには、まずはローリエをはじめとするハーブを一切使わないことが必要だ。
さらに、ふつうはオリーブオイルを使うところ、ゴマ油を使えば、完璧にご飯に合う。
さんまは頭と尾びれを落とし、腹を割いてワタをかき出し、さらに包丁の先で、背骨についている血合いをこそげ落として、よく洗う。
うすく塩コショウをし、片栗粉をまぶしておく。
フライパンに、
- ゴマ油 大さじ2
- みじん切りのニンニク 1かけ
- みじん切りの玉ねぎ 4分の1個
- 豆板醤 小さじ1(好みで)
を入れ、強めの弱火くらいで2~3分、じっくり炒める。
つづいてさんまと、2~3センチ大に切ったジャガイモを入れ、両面を1~2分ずつ、サッと焼く。
カットトマト・1缶と、水・1カップを入れ、塩・小さじ2分の1程度で味つけする。
これから水分が煮詰まるから、塩気はあくまでうすめにするのが肝心だ。
強めの弱火で30分くらい、ジャガイモがやわらかくなるまで煮る。
写真にローリエが見える人がいるかもしれないが、それは目の錯覚だ。
煮詰まってくると、鍋底がくっつくようになるから、ときどき鍋を揺すって全体をまぜながら煮る。
最後に味見をして塩加減をし、コショウをふる。
皿によそい、青ねぎをかける。
日本酒にもご飯にも、バッチリ合う。
あとは、残り野菜の赤出しみそ汁。
煮干しだしに酒・少々と赤出しみそを入れ、残り野菜を煮る。
それに、にらキムチ。
ざく切りのにらとキムチをゴマ油とゴマで和え、20~30分置く。
もちろん、白めし。
酒は、花春。
さんまを食べて、少しはボケも治った気もする。
でも酒を飲み、すべてを忘れてしまうから、あまり意味がないのである。
「ボケてきたのは酒のせいだよ。」
そうだよな。
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