八丁みそは本当に使い出があるから、常備しておいた方がいいのではないかと思う。トップブランドは「カクキュー」で、混じりけなしの八丁みそである「銀袋」というのもあるが、それだと硬すぎてちょっと使いにくい。
それよりも、麦みそと混ぜてやわらかくした赤だしみそ、「金カップ」がいいと思う。
まずは普通のみそと同じようにみそ汁に使えるのはもちろん。普通のみそよりコクがあるから、特にあさりやしじみなど貝類には赤だしが定番だ。
それから八丁みそは煮込み料理に向いている。普通のみそは加熱すると風味が飛ぶから、みそ汁などでも最後に入れて煮立たせないようにする。
ところが八丁みそは、「煮込めば煮込むほどうまい」といわれる。みそ煮込みうどんを代表とするみそを使った煮込み料理は、八丁みそでないとできないと思っていい。
さらに八丁みそは、中華の炒めものにも普通に使える。マーボー豆腐やホイコーローを作るのに使われる「甜麺醤」は豆みそに砂糖やゴマを加えたもので、この「豆みそ」とは、要は八丁みそのこと。八丁みそがあれば、甜麺醤をわざわざ買う必要はない。
そのほかにも豚のしょうが焼きやブリ大根などの炒めもの、煮物に隠し味的に使うと一気に味が整うし、僕は八丁みそなしに料理をするのは難しいと思うほどだ。
さてきのうは、その八丁みそを使った炒めもの。スパムとキャベツ・卵のみそ炒め。
キャベツと豚肉の炒めものに八丁みそがよく合うのは、これはまさにホイコーローだから知れた話。ところがきのうは肉はスパムで、さらに卵を加えたから、やや洋風っぽい組み合わせになるわけなのだが、これが八丁みそに大変よく合うのである。
八丁みそを煮込み料理や炒めものに使うと、ゴマを加えない場合には、ひとことで言うと「ドミグラスソース」の味になる。牛肉を八丁みそで煮込んだものなど、知らない人だとドミグラスソースを使ったシチューだとしか思えないはずだ。(京都にはそういう煮込み料理の店がいくつかある)
ちなみに西京みそ(白みそ)は、煮込むとホワイトソースの味になる。理由はよく分からないけれど、世界の味にはやはり共通性があるということではないかと思う。
そういうわけで、卵を入れた料理に八丁みそで味付けすると、ちょっとドミグラスソースをかけたオムレツっぽい味になる。そこにキャベツとスパムが合うのは言うまでもない話なのだ。
スパムは缶詰だからいくらでも持つわけだし、缶を開けても冷凍保存できるから、常備すると残りもの整理などに何かと便利。(何を隠そう、きのうは僕も残りもの整理だった)。買うのなら、レギュラーよりも「減塩タイプ」を選んだほうが、味をつけた料理に入れるにはいいと思う。
入れる具材は、あとは玉ねぎ(または長ねぎ)を加えると、もちろんのことコクが出る。きのうはさらに、彩りと残りもの整理を兼ねてニラも入れた。
味つけは、ベースはニンニク、豆板醤も少し加えてピリ辛味とした。
ゴマ油を入れてしまうと一気に中華風になるから、洋風にやりたいなら入れないのが肝心だ。
まずは先に卵を炒めておく。
フライパンにサラダ油・大さじ1を入れて中火にかけ、よく温まったら溶き卵・3個分を入れる。あまりガチャガチャかき混ぜず、8割方固まるのを待ってから大きめにまとめて、最後まで火を通して皿に取り出す。
あらためてフライパンに、
- サラダ油 大さじ1
- ニンニク 1かけ (みじん切り)
- 豆板醤 小さじ1 (好みで。入れなくてもいい)
- スパム 100グラムくらい (=4分の1缶。5ミリ厚さくらいの短冊に切る)
を入れて弱めの中火にかけ、2~3分じっくり炒めて味をひき出す。
つづいて、
- キャベツ 4分の1玉 (4~5センチ大のざく切り)
- 玉ねぎ 2分の1個 (2センチ幅くらいのくし切り)
を入れて全体をサッと混ぜ、油が馴染んだら酒・大さじ1を入れてフタをして、1~2分蒸し焼きにする。火加減は一貫して弱めの中火。
キャベツに火が通ったら、
- 八丁赤だしみそ 大さじ2
- 酒 大さじ1
- みりん 小さじ2
- コショウ 1~2振り
の合わせ調味料を加えてひと混ぜする。
- ニラ 2分の1把 (ざく切り)
- 取り出しておいた卵
を入れて、全体を混ぜて味が絡まったら味をみて塩加減して火を止める。
好みで粗挽きコショウを振ってもいい。
これ、マジでたまらないですよ。
あとは、わかめスープ。
あらい商店で、韓国ではわかめスープにニンニクは入れず、かわりにゴマ油で炒めると聞いて、試してみたらうまかった。煮干しを切らしていたのでだしにウインナーを使ったが、悪くなかった。
鍋に、
- ゴマ油 大さじ1
- わかめ 適当な量 (塩わかめならサッと洗って1分ほど水に浸して塩抜きし、食べやすい大きさに切る。乾燥わかめなら水に5分ほど浸して戻し、食べやすい大きさに切って水気をよく拭き取る)
- ウインナー 2本 (5ミリ幅の小口切り。または頭とワタを取った煮干し・1つまみ)
を入れて弱火にかけ、2~3分じっくり炒める。
水・2+2分の1カップ(2分の1カップは煮詰まる分)を入れ、フタをして10分くらい煮て、
- 酒 大さじ2
- みりん 小さじ2
- 薄口醤油 大さじ1
- 塩 少々
- コショウ 1振り
で味をつけ、さらに10分くらい煮る。
お椀によそい、ゴマをひねり潰しながらかける。
このスパムとキャベツ・卵のみそ炒めがまた、甘辛い味で言うまでもなく酒によく合う。
どんなに飲み過ぎたくないと思っても、つい手が勝手に酒を作ってしまうから、飲み過ぎないことは不可能ではないかと思う。
「なわけないよ。」
そうだよな。