一昨日しめたサバを使い、昨日はサバ寿司を作った。
京都人の「ソウルフード」ともいわれるサバ寿司は、「日本古来の味」なのである。
秘密保護法が衆院で可決され、日本はいよいよ暗い時代に突入することになったわけだが、ぼくはサバ寿司なのである。
サバ寿司は、日本の「古来の味」とも言えるものなのだとおもう。
実際の話、京都の人の「サバ好き」は一方ならぬものがあり、ぼくがお世話になっている魚屋の若大将も、「一番好きな魚はサバ」なのだそうだ。
バーなどでの知り合いもサバ好きの人は多く、一度ぼくがよく行くバー「スピナーズ」へサバ寿司を差し入れしたたとき、マスターのキム君はそれをうまそうにパクパクと食べ、
「味が足りなかったらしょうゆを付けてください」
というぼくの言葉に、
「いやー、ぼくはサバ寿司には何もつけませんよー」
と、サバ寿司への「愛」を感じる答えをしていた。
ぼくのサバ好きも、そんな京都の人に影響されてのものである。
元から寿司ネタのなかではしめサバが一番好きではあったが、それを「自分で作ろう」などと考えるようになったのは、京都へ来てからだ。
京都の人がサバ好きなのは、サバが古来から、京都に入ってくる数少ない魚の一つだったことは大きく関係しているだろう。
若狭湾から京都・奈良をむすぶ「鯖街道」は、奈良時代にはすでに機能し、若狭の魚が奈良の都で食べられていたという記録も残っているそうだ。
さらにそれを「酢と塩」で食べる歴史も古い。
酢は古墳時代にはすでに日本に伝来し、平安時代の貴族の基本調味料は酢と塩で、それを魚などにつけて食べていたのだそうだ。
今の形のサバ寿司が作られるようになったのは、江戸時代に入ってからのことだそうだが、サバ寿司の味覚自体は、日本人が太古から味わってきたものだと言えるのだろう。
サバ寿司は、「日本人の遺伝子に刻み込まれた味」なのである。
このサバ寿司も、お店で買えば安くても半身で1500円くらいはするが、自分で作れば、昨日のサバ寿司も、原価400円ほどである。
作るのに多少の手間はかかるけれども、べつにそれほど大変なわけでもない。
味もしめサバの部分については、誰がやっても間違いなくおいしくなる。
すし飯のあつかいにはそれなりの精進が必要になると思うが、といっても初心者がやっても、「不味くなる」ことまではない。
コメントでも言っている人がいたけれど、サバはたしかに体質によっては当たることがあり、ぼくもサバは時々当たり、じんましんが出ることがある。
ただぼくは、以前サバでひどいじんましんが出て以来、薬を常用するようになっているから、それを飲めば問題ない。
じんましんの薬は、医者によれば、常用しても副作用もとくべつなく、中毒になることもないそうだ。
もしサバが当たる体質の人は、それを飲めばいいだけの話だから、「当たるから」といってあんなにうまいサバ寿司を食べないのは、何とももったいないのである。
サバ寿司は、しめサバの上にすし飯をのせ、それを巻きすで押し固めるだけの話だ。
それを「やろう」と決めるだけで、晩酌は「天国」になるのである。
さてサバ寿司を作るには、まずはしめサバを作る必要があるわけだが、その作り方は昨日の記事に書いてある。
ぼくはこれを一昨日作り、一日冷蔵庫で寝かせておいた。
すし飯は、まず普通に水加減した米にだし昆布をいれ、普通に炊く。
ぼくは1カップの米を炊くが、半身のしめサバに対してすし飯として使うのは0.5カップ分で、残りは冷凍しておいて、お粥などを作るのに使う。
0.5カップ分のご飯を皿に広げ、ここにすし酢をふりかける。
すし酢は0.5カップ分の米に対し、酢小さじ2、砂糖小さじ1、塩小さじ4分の1で、これをしゃもじを横にして、切るようにしながら混ぜる。
この時扇風機で風を当てるようにすると、すし飯にテリが出る。
混ぜたら濡れ布巾をかぶせて冷ましておく。
いよいよ巻きすで巻くわけだが、まず巻きすの上にラップをかぶせ、その上にしめサバを皮を下にして置く。
このままご飯をのせてもいいが、細く切った大葉とひねり潰したゴマをはさむと、アクセントがついてまたうまい。
濡らした手で筒状にまとめたすし飯をのせ、巻きすでよく押し固めていく。
この時巻きすの外側から内側にむかって握るようにするのがコツで、逆にするとご飯が脇からはみ出してきてしまう。
押し固めたら、しばらく置いて味をなじませる。
そのあと水に濡らした包丁で、適当な大きさに切っていく。
サバ寿司は、何もつけないで食べる。
これで晩酌が、いかに至福の時になるかは、言うまでもないのである。
それからサバを買った時に、一緒に塩をしてもらったサバのあら。
これを吸物にするとうまいのだ。
サバのあらの吸物は「船場汁」と言われるもので、船場の番頭さんが食べた「質素な食事」の象徴だそうだが、どうしてどうして、意外にとてもおいしいのである。
大根と合わせるのが定番だが、昨日はさらに油揚げをいれた。
塩をしたサバのあらは、熱湯で湯通しし、水で洗って血の塊やヌメリなどをよく落とす。
だし昆布と一緒に鍋にいれ、水3カップをいれて中火にかける。
沸いてきたら弱火にし、沸騰するかしないかの火加減を保って、アクをとりながら15分くらい煮る。
5分ほどたったら、だし昆布は取り出してしまってもいい。
15分たったらあらは取り出して捨て、すると2カップくらいのサバのだしが取れたとおもうから、そこに酒大さじ1、うすくち醤油大さじ1強で味つけする。
サバに塩があるから、塩味を控えめにするのが大事である。
あとはこの汁で細く切った大根と油揚げを煮れば、船場汁は完成だ。
青ねぎに一味をふったが、これは青ねぎより、大根の茎をうすく小口に切ったものを最後にサッと煮るようにした方がうまかっただろうと後でおもった。
さらにしめサバを漬けた「酢」も、再利用が可能である。
生臭みなどは全くなく、サバの風味がついてうまい。
サバの酢に味を見ながら砂糖をくわえ、ここに厚く皮を剥いてうすく切り、塩もみして10分おき、水で洗って水気をふき取ったカブを浸す。
これもカブの葉はいれないで、カブの茎をうすく小口に切ったものを塩もみし、一緒に加えたらよかったと、後でおもった。
大根やカブの皮、と茎、だし殻の昆布などは、じゃこ炒めにする。
ゴマ油にちりめんじゃこ、輪切り唐辛子で細くきざんだ皮や茎、だし殻をじっくり炒め、酒とうすくち醤油を加えて、さらに汁気がなくなるまで炒める。
わさび醤油の冷奴。
「冷奴にわさびを乗せる」のは、豆腐屋のご主人に教えてもらった食べ方である。
晩酌は、昨日も非常に満足した。
このところ、晩酌であまりに満足するから、飲みながらのツイートは出来なくなっているのである。
「おっさんは脳天気だよね。」
ほんとだよな。
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