魚屋でサバを一尾買い、その半身をサバ飯とショウガ煮にした。
サンマの次は、サバが控えているのである。
サンマが旬の盛りを迎え、自炊諸氏もこれをあの手この手で楽しむのに、日々勤しんでいることと思う。
旬のサンマが最もうまいものの一つなのは間違いなく、これを味わわずして、「人生何がおもしろいのか」という話だろう。
しかし言っておくが、ここで油断してはいけない。
秋冬・怒涛の魚攻撃は、まだ始まったばかりである。
サンマはあくまで「初陣」だ。次に「サバ」が控えていて、これが11月にピークを迎える。
サバと並んで、同じころにハマチもピークとなり、実に「両面攻撃」の体勢だ。
そして年明けからは、いよいよブリ。そしてタラ。
さらに2月にカキが来て、春を迎えることになる。
これだけの攻撃を、真っ向から受けて立ち、日々の食事に仕立て上げていかなくてはならない。
自炊もなかなか、大変なのである。
きのうは魚屋へ行ってみたら、まだ午後3時ごろだったのに、すでにサンマはきれいさっぱり売り切れていた。さすがに皆、サンマの旬は承知しているものと見える。
しかし店の奥に入ってみると、サバが控えめに並んでいる。
そう小さくないのが一尾900円だから、値段的にも悪くないし、色ツヤもよさそうだ。
大将に、
「これもう、しめサバ行けますか?」
聞いてみる。
「まだ『トロトロ』とまでは行きませんが、十分うまいですよ!」
とのことである。
これは行くしかないだろう。
サバも、サンマ同様、自分でおろすのもそう難しくはない。でもぼくは、サバはいつも大将におろしてもらうことにしている。
その方が手っ取り早いし、大将が魚をおろすのを眺めるのも好きだからだ。
サバは二枚におろし、骨の付いていない方には塩も振ってもらうようにして、そちらをしめサバにする。
しめサバは一日置いた方がいいから、きのうは残りの半身を、サバ飯、
それにショウガ煮にすることにした。
サバは、みそで煮付けるのが王道だ。
しかし京都では、ショウガを利かせてしょうゆで煮付けることが多く、こちらもまた大変うまい。
サバ飯は、ほかの炊込みご飯を作るのと、話はまったく同じである。
サバは食べやすい大きさに切り、味をしみさせるため、浅く切込みを入れておく。
その上で、両面に塩をふり、軽く焼き色がつくまで焼く。
一人用の土鍋にだし昆布を敷き、研いで水を切った米1合を入れ、その上に、
- 細切りにした2センチ大くらいのショウガ
- ささがきにし、水にさらしたゴボウ2分の1本
- 細く刻んだ油あげ2分の1枚
そして焼いたサバを乗せていく。
水1カップを入れ、酒とみりん、淡口しょうゆ大さじ1ずつを、下味を兼ねてサバの上からかけ、フタをする。
中火にかけ、湯気が勢いよく吹き出してきたら、弱火にする。
10分炊き、火を止めてから10分蒸らす。
薬味は、きのうは青ねぎと一味をかけ、スダチを絞ったが、青シソやミョウガ、ゴマなどでももちろんいい。
ホクホクで、たまらない味である。
それからショウガ煮。
フライパンに、5センチ角ほどのだし昆布を敷き、浅く切込みを入れたサバを入れたら、
- 2センチ大ほどのショウガの細切り
- 水・1と2分の1カップ
- 酒・大さじ3
- 砂糖・大さじ3
- みりん・大さじ3
を入れ、強めの中火にかける。
煮立ってきたら、サッとアクを取り、しょうゆ大さじ2を入れる。
落としブタをし、煮汁が落しブタまで上がってくる火加減を保ちながら、10分煮る。
煮上げる直前に、しょうゆ大さじ1を入れ、ひと煮立ちさせて火を止める。
皿に盛り、煮汁を上からかけまわす。
脂の乗りは、まだこれからとはいえ、ホクホクでしみじみうまい。
あとはとろろ昆布の温く奴。
お椀にとろろ昆布、削りぶし、淡口しょうゆ、青ねぎを入れ、お湯で温めた豆腐をお湯ごと入れる。
きのうは絹ごしを使ってみたが、これがまたうまかった。
伏見とうがらしの焼いたん。
軽く焼き色がつくまで焼き、味ポン酢と削りぶしをかける。
酒は冷や酒。
きのうも12時を過ぎて支度を始めたから、けっきょく寝たのは3時である。
「早起きは三文の得っていうよ。」
そうだよな。
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