「冬らしい炒め物をつくろう」と考え、豚肉と小松菜・厚揚げのあんかけ炒めをつくった。
和風に炒め物をつくろうと思うなら、「甘み」がポイントになるのである。
「豚肉が食べたい」と思った。
しかも、このところ鍋物が続いていたから、「炒め物限定」である。
少しずつ寒くなっているから、「秋冬らしい炒め物がつくりたい」と思うと、頭に浮かぶのは小松菜と厚揚げだ。
「これを豚肉と合わせてあんかけにし、ご飯にかけたらウマそうだ・・・」
あれこれ考えるうちにメニューが決まった。
炒め物は、それこそ今まで山のように作っている。自炊を始めたてのころ、一番ハマったのは中華料理で、当時は中華鍋も3種類、それに玉じゃくしやらジャーレンやら、道具も色々揃えていた。
しかしそのうち、ウー・ウェン『大好きな炒めもの』に、強く影響を受けた。
これは非常にいい本なので、特に料理の初心者には、読むことをぜひ勧めたい。
そのころぼくが見ていた本は、ほとんどが中華の料理人か、料理学校の先生が書いたものだった。しかしウー・ウェンは、基本は「主婦」で、中国の家庭料理を紹介している。
家庭料理と料理屋の料理とが大きく違うところがあるのは、言うまでもない話だろう。
強い火力も、中華鍋もなくてもいいことを知り、ぼくはそれ以前よりはるかに自由に、炒め物を作るようになったのだ。
『大好きな炒めもの』の中の料理は、半分近くは作っている。中でも特に、「豚肉の焼きそば」は、100回は作っているのではないだろうか。
トマトやキュウリを炒めることも、『大好きな炒めもの』のおかげで知った。
この本からは、本当にたくさんのことを学んでいる。
ただしウー・ウェン氏と一点だけ、意見が合わないところがある。
「甘み」についてだ。
ウー・ウェン氏は本の中で、日本人が料理に砂糖を使うことに疑問を呈する。
「砂糖は使わず、もっと素材の味を活かすようにしたらどうか」
と言うのである。
しかしそれは、中華料理の枠内では、たしかにそうかも知れないが、日本の料理は、また別のやり方を持っている。
ポイントは、
「ニンニクを使うか使わないか」
だと思う。
ニンニクは、強いコクを持っている。だからニンニクを入れてしまえば、料理のベースができてしまう。
ところが日本は、戦後になってからは別として、伝統的にニンニクを使わない。
世界のほとんどの料理がニンニクを使うことを考えれば、日本料理は、一言で「ニンニクを使わない料理」と言えるのではないかとすら思うほどだ。
たとえば中華料理から、単にニンニクを抜いてしまうと、何とも間の抜けた味になる。そこでそれを補うために、日本では「味の素」が多用されるようになったとぼくは見ている。
ぼくはニンニクは決して嫌いでないが、他のメニューの味がしなくなるから、家では基本的に使わない。
そのため「ニンニクの味をいかに補うか」については、これまでずいぶん、あれこれと試している。
やり方にはいくつかのことがあるのだが、その中でポイントとなるのは、
「甘みをきちんと入れる」
ことである。
日本の料理は、ニンニクではなく、甘みがコクを付けるのだ。
ニンニクを使う中華料理だからこそ、「甘みは不要」と言えるのだろう。
ぼくなどに、ウー・ウェン氏に反論させれば、
「中国だってニンニクばかり使うじゃないか」
と言いたいところだ。
きのうの豚肉と小松菜・厚揚げの炒め物も、ニンニクを使わずにコクを出すための工夫がいくつかしてある。
まずゴマ油を使うこと。それからショウガは多めに入れる。
調味料には、甘みはみりん、さらにきのうは味噌を、コク出しに使っている。
それから唐辛子と酢を使う。
コクを補うには「アクセントを付ける」ことも、大きなポイントになるのである。
小松菜は、あらかじめサッと塩ゆでしておく。
小松菜もアクが出るし、下ゆでした方が色もきれいだ。
フライパンにゴマ油少々を引き、2センチ大くらいのショウガみじん切り、10センチ長さくらいの長ネギみじん切り、それに輪切りの赤唐辛子少々を入れ、中火にかける。
じっくりと炒め、香りが立ってきたところで豚コマ肉200グラムを入れ、これまた中火でじっくり炒める。
豚肉に火が通ったら、合わせ調味料を入れる。
調味料は、酒とみりん、淡口しょうゆを大さじ1ずつ、みそ小さじ1。
サッと混ぜ、豚肉に味を付けたら、水1カップを注ぎ、1cm幅くらいに切った、5センチ角ほどの厚揚げを入れる。
弱火にし、5~10分コトコト煮て、最後に味を見て塩加減する。
しめじ少々を加えてサッと煮る。さらにざく切りにし、少し硬めに塩ゆでし、水に取って絞った小松菜2分の1把を入れる。
強火にし、片栗粉と水大さじ1強ずつの水溶き片栗粉を、混ぜながら少しずつ加えてトロミを付ける。
最後に酢大さじ1をまわしかけ、ひと混ぜする。
器に盛り、ご飯を添える。
ご飯が進みまくるのである。
あとは白菜のおひたし。
塩を振った水でまず白菜の芯、それから白菜の葉を加えてサッと煮て、水で冷やしてよく絞り、削りぶしと味ポン酢で和える。
白菜のおひたしは、やさしい味がして大変うまい。
竹輪とキュウリの酢の物。
キュウリは太いやつだったので、半分に割ってスプーンで種をかき出し(てその場で食べ)、うすく斜め切りにして塩もみし、少し置いたら水洗いして水気を拭き取る。
うす切りの竹輪と合わせ、砂糖とその3倍量の酢、それに塩少々で和え、一味を振る。
それにとろろ昆布の吸物。
お椀にとろろ昆布と削りぶし、青ねぎに淡口しょうゆを入れ、お湯をそそぐ。
酒は、炒め物だったから焼酎水割り。
11時過ぎから作り出し、食べ始めるのが12時半を過ぎるから、寝るのはどうしても3時になってしまうのである。
「これから菜っぱの季節だね。」
そうだよな。
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