一日寝かせておいたしめサバを食べた。
しめサバほどうまくて、簡単に出来るものはないのである。
しめサバを魚の中で「最もうまい」と思う人は、少なくないだろう。
しっかりと脂を感じながらも、塩と酢のおかげで爽やかでもある。
サバは、刺し身で食べると、そううまいものでもない。それがシメることで、「別物」と思えるほどにおいしくなる。
しめサバは歴史も古く、奈良時代にはすでに鯖街道で、塩サバが都に来ていたそうだ。
日本を代表する料理の一つといえるのだろう。
そのしめサバ、作るのは実に簡単。おろして塩を振るところまで魚屋にやってもらえば、あとは酢に漬け、皮を剥いで切るだけだ。
それで料理屋で高いお金を払って食べるのと、全く遜色ないものが出来上がる。
しめサバこそ、家で作るべきものだと、ぼくなどは思うのである。
ただし、もし難しいことがあるとするなら、魚屋へ行かないといけないことだろう。しめサバ用のサバは、スーパーでもごくまれに見かけることはあるのだが、めったにない。
それからしめサバは、シメてから一日置いた方がうまい。忙しい人にとっては、食事の支度を前日にすることが、なかなか難しいこともあるだろう。
しかししめサバは、それを押しても、作る価値があるものだ。何ならそのために代休を取り、朝から魚屋へ出かけたっていいくらいのものだと思う。
失敗はまずあり得なく、作ってみれば、
「こんなにうまいものが、こんな簡単に出来るのか」
と、まちがいなく感動する。
騙されたと思ってやってみるのが、絶対にいいのである。
サバは、新鮮なのがいつもあるとは限らない。もし貴重な代休をサバのために充てるのなら、魚屋にあらかじめ電話でもして、サバを仕入れてもらうよう、お願いしておくのがいいだろう。
朝からやれば、その日の夜にはもう食べられる。魚屋で三枚におろしてもらい、半身はその日用、もう半身は翌日用にするのがいい。
塩は、魚屋で振ってもらうのが手っ取り早い。
冷蔵庫に入れておき、5時間後に酢に漬ける。
5時間たったらさっと洗い、ペーパータオルなどで、よく水気を拭き取っておく。
酢には、カドを取るため、砂糖をほんの少し、小さじ2分の1ほど加え、よく溶き混ぜておく。
5センチ長さくらいのだし昆布と一緒にサバをジップロックなどに入れ、酢をひたひたになるまで注ぐ。
これを冷蔵庫に入れて、漬け込みはじめるわけである。
この「漬け時間」が、出来上がりを大きく左右する。流儀は人によって様々で、短いものは30分、長いのは丸2日というのもある。
塩サバはやや臭みがあり、長く漬ければその臭みは取れるのだが、「生感」は失われる。
その兼ね合いをどこに付けるかが、考えどころというわけだ。
しめサバの「本場」ともいえる京都では、多くの人が浅めに漬ける。
ぼくが行く魚屋の若大将が、指定する時間は「3時間」。
そして京都では、出来たしめサバは、おろしショウガとポン酢で食べる。
やや残る臭みを、それで消し去るわけである。
酢から上げたら、酢を拭きとり、皮を剥ぐ。
頭の側から皮をつまむと、簡単にピーッと剥ける。
中骨が残っているから、気になるなら取ってもいい。でも中骨を抜く作業は死ぬかと思うほど面倒だし、酢でやわらかくもなっているから、そのままにして問題ない。
その代わり、サバを切るとき、あいだに浅く切れ込みを入れるようにする。
これが「骨切り」になるのである。
皮を剥いだら、ラップに包み、しばらく置いて酢をなじませる。
数時間で食べられるけれど、翌日が一番うまい。
サバを切るときには、包丁は簡易研ぎ器でよく研いでおく。
おろしたショウガをたっぷり添える。
「3時間」のシメ具合は、ちょうどいい加減のミディアムレア。
「たまらない」のは、言うまでもないことである。
しめサバを作ると、サバを漬けた酢が残る。これはサバのいい味が出ているから、捨てずに酢の物に使うといい。
きのうはキュウリをたたいて塩でもみ、水洗いしたものを、やはり使っただし昆布も一緒にこれで和えた。
少し砂糖を溶かし込み、甘めにしてある。
それからおとといのサバ飯を湯漬けに。
炊き込みご飯が余ったら、土鍋ごと冷蔵庫に入れてしまうのがいい。温めるには、土鍋に水を少し入れ、弱火にかけて蒸すようにする。
炊き込みご飯にお湯をかけると、お湯にうまみが溶け出して、またこれがうまいのだ。
なすツナ炒めの冷奴。
やわらかに火が通り、濃い目に味を付けたナスと、やはりやわらかで、こちらは淡白な豆腐とは、相性がとてもいい。
ナス1本は5ミリ幅くらいに切り、油ごとのツナ2分の1缶、ゴマ油大さじ1を入れたフライパンを中火にかけて、やわらかくなるまでじっくり炒める。
淡口しょうゆ大さじ1で味を付け、青ねぎを加えて炒め上げる。
酒は、冷や酒。
2合を飲み、極楽気分で布団に入った。
「サバが旬になるのが待ち遠しいね。」
ほんとだな。
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