新サンマを買ってきて、なめろうにした。
サンマの季節が、とうとうやって来たのである。
とうとう秋が、やってきたのである。
ぼくは、気候としては夏が好きで、暑くて汗がダラダラと出るのは何の苦でもないのだけれど、寒いのは苦手としている。
しかし、こと食べ物となると、話は別だ。
秋から春にかけての、怒涛の如くの、連打に次ぐ連打の魚攻撃は、「めくるめく」の言葉がふさわしい、七転八倒、精強無比、喧々諤々のありさまで、まさに死ぬしかない、100回は死にたい、死んでなんぼだの話であり、この攻撃に耐え切って春を迎えるころには、ハアハアと肩で息をすることになる。
初陣を飾るのは、サンマだ。これを楽しんで楽しんで、まだ楽しみたいと思う頃、今度はサバがやってくる。
しめサバだのサバ寿司などを、2度、3度と試みるうち、今度はタラ。正月には棒ダラだの、マダラの子などが出てきたりして、年が明けるとブリが来る。
ブリの脂が、そろそろ抜けてきたかと思う頃にはカキが来て、そうするうちに、アサリだの、ハマグリだのが旬を迎え、最後は桜鯛で、攻撃は終了となる。
「息をつく暇もない」とはこのことで、その戦いの号砲が、いよいよ新サンマの登場をもって、打ち鳴らされたわけである。
サンマは今年、不漁だと、ちょっと前のニュースで聞いていたから、どうなのかと心配していた。
しかしきのうは、お造り用Lサイズの新サンマ、一尾450円だったから、この時期の京都としては、例年通りの値段だろう。
新サンマをどうやって食べるかは、やはり考えどころである。お造りが、やはりまずは妥当なのだが、酢じめ、なめろうという手もある。
きのうは、考えに考え抜いたあげく、なめろうにすることにした。
前日、ツイッターでサンマのなめろうを作っている人を見て、食べたくなっていたからだ。
またなめろうは、身を叩いて粉々にしてしまうわけだから、魚を捌くのに多少失敗しても、まったく問題ない。
三枚おろしの練習台としても、適当だといえるのだ。
魚を三枚におろすのは、YouTubeなどにも山ほど動画があるから、それを見るのも悪くない。
でもおすすめは、初めは魚屋でおろしてもらい、それを脇で見学させてもらうことで、そうすると、魚屋の人とも仲良くなれて一石二鳥なのである。
包丁は、べつに普通の、家庭用のやつでかまわない。ただそれを、これも普通の簡易研ぎ器でいいから、それでよく研いでおくのが大切だ。
まず頭を落とし、腹を上から肛門のところまで割く。ワタを取り出し、水で洗う。
それから魚の両側に、背骨の上にそって、背骨の太いところまで、切込みを入れていく。
こうしておくと、骨に残る肉を少なくできるというわけだ。
その上で、尾から頭に向かって、尾のところを左手で抑えながら、一気に削ぐ。
ここでグズグズと包丁を引いたりすると、切り口が汚くなるから、ここは「一気」が大事である。
三枚におろしたら、皮を剥ぐ。
頭の方から指でつまんで少し剥がし、あとは包丁の峰で削ぎ取っていくようにするときれいに剥げる。
お造りなどにしようと思うと、後は腹骨をすき取ったり、中骨を抜いたりする必要があるのだが、なめろうにするのなら、しなくていい。
サンマの骨はたいして硬いことはなく、しかも叩けば、それも粉々になるのだから、よっぽど骨が嫌いな人は別として、問題はまったくない。
ここまでやったら、サンマ、およびまな板と包丁を、一旦水できれいに洗う。
血が付いたままでは生臭くなるからで、これは魚をおろす上での大きなポイントといえるだろう。
サンマを軽くぶつ切りにし、そこにおろしたショウガ、みそ、小口切りにした青ねぎを、それぞれ大さじ1見当くらいずつ乗せる。
あとはこれを、包丁で、ザクザク、トントン、叩いて細かくするわけだ。
ただしここで、あまり細かくし過ぎないのが、なめろう作りの最大のポイントだ。
ペースト状にしてしまうのではなく、ゴロゴロと歯応えが残るくらいが、やはりうまい。
大葉やみょうがなどの薬味を添える。
これは一緒に叩き込んでしまってもいいが、好き好きという話である。
なめろうは、死ぬかと思うくらい、酒に合う。
チビチビと舐めながら、何杯でもいけてしまうから、注意が必要なのである。
あとは極太キュウリとナスの吸物。
お世話になっている八百屋には、夏の終わりごろになると、極太のキュウリが並ぶようになる。
これを汁の実にするといいというのは、八百屋のご主人に教えてもらったことである。
キュウリは皮を厚く剥き、タテ半分に割ってスプーンで種をかき出して、1センチ幅くらいに切り、水で5分ほど、柔らかくなるまで下ゆでする。
鍋に5センチ角くらいのだし昆布と水2カップを入れて中火にかけ、煮立ってきたら、酒大さじ2、淡口しょうゆ大さじ1、塩少々で味付する。
下ゆでしたキュウリと、1センチ幅くらいに切ったナスと厚揚げを、2~3分煮る。
お椀によそい、削りぶしとおろしたショウガ少々をかける。
塩もみ玉ねぎのからしツナマヨ和え。
うす切りにして塩もみし、5分くらいおいて水で洗い、よく絞った玉ねぎを、ツナとマヨネーズ、からし少々、塩ほんの少々で和える。
オクラの冷奴。
板ずりし、サッとゆでて1センチ幅くらいに切ったオクラを、削りぶしと醤油で和え、奴に乗せる。
酒は、冷や酒。
注意が不十分だったため、予想通り飲み過ぎて、今朝はちょっと残ってしまった。
「冬は野菜もおいしいよ。」
そうだったな。
◎関連記事
サンマの値段が大幅に下がっていたから、今回は酢じめにして食べたのである。
魚を煮れるようになると、料理の世界が大きく広がるのである。(サンマ煮付け)