歴史の長い料理のうまさは圧倒的なのである。(大根煮)

大根煮 野菜料理

昨日は聖護院大根を油揚げとうす味で煮た。

大根煮

これを肴に酒を飲み、「歴史の長い料理のうまさは圧倒的だ」とつくづくおもったのである。

 
大根の歴史は古いそうで、すでに古代エジプトで食べられていたという記録があるそうだ。

日本でも『古事記』に大根が登場するというから、大昔から食べられていたのだろう。

この大根を「煮る」というのも、やはり大昔から行われていたはずである。

実際京都のお寺が煮た大根を参拝者にふるまう「大根焚き(だいこだき)」の年中行事は、鎌倉時代に始まったのだそうだ。

 

「大根を煮る」など簡単な話なのだが、昨日ぼくはこれを食べ、ひと口ごとにのけぞるような、圧倒的なうまさに打ちのめされた。

これほどのうまさは「サバ寿司」以来のことである。

サバ寿司同様、この大根煮も「料理の古典」なのだろう。

長い長い年月にわたって人々に愛され、受け継がれてきたものには、そうなるだけの確かな理由があるということなのだとおもう。

 

京都では、大根を煮るには油揚げと合わせるのが定番だ。

お寺の大根焚きでも、大根だけを塩味で煮るものもあるが、油揚げをいれ、しょうゆで味をつけたものも多いそうだ。

この大根と油揚げの相性が、また何とも言えずにいいのである。

大根は、ぶり大根など「味を含ませる」材料として使われることが多いわけだが、大根よりさらに汁気を含んだ油揚げとあわせることで、大根そのものの味が際立つのだ。

 

「大根をしょうゆ味で煮る」というと、もっとあれこれ具を足して「おでん」にしたくなる気もするところだ。

おでんももちろんうまいのだが、大根煮はおでんとは別の料理だ。

「大根をしみじみ味わう」ものだから、具は油揚げだけにするのがいい。

それにおでんは一人暮らしが作るとなると、どうしても量が多くなってしまいがちだが、大根と油揚げだけならその心配がないのもいいところなのである。

 

大根を煮るには、卓上でやるのが絶対的におすすめである。

大根煮

下ゆでし、煮汁を作るところまでキッチンでやっておく。

煮ている最中は何もする必要がないから、鍋のようにあれこれせわしくなることもない。

煮える大根を眺めながら飲む酒がまたうまい。

 

さらにその時、テレビはもちろん、ファンの音がうるさいパソコンも、消してしまうのがおすすめだ。

大根煮

すると部屋では、鍋が「ふつふつ」と沸き立つ音だけ聞こえてくることになる。

そこに訪れるのは、「孤独」ではない。「静寂」である。

卓上で大根を煮ることで、この上なく心地よい時間を過ごすことができるのだ。

 

煮汁はやはり、だしを自分で取るようにすればうまいのは間違いない。

昨日はこれに、やや甘めに味をつけた。

また大根を煮ているあいだにつまめる肴を用意する。

大根の皮や茎、だし殻などが余るから、これをじゃこ炒めにしたものは打ってつけなのである。

 

さて大根は、昨日は聖護院大根を使ったが、べつに普通の大根でかまわないのだ。

皮を厚く向き、2センチ幅くらいに切って、ていねいにやるなら面取りする。

大根煮の作り方

たっぷりの水にいれ、強火にかけて、煮立ってきたら弱めの中火くらいにする。

これを15~30分、竹串がすっと刺さるようになるまでじっくりゆでる。

 

だしは昆布とかつお節で取る。

大根煮の作り方

鍋に4カップ半の水と、だし昆布の切れっ端、かつお節のミニパック4袋をいれて中火にかける。

煮立ったら弱火にし、アクを取りながら4~5分煮て、ざるにキッチンペーパーを敷いて濾しとる。

ここに酒とみりんを大さじ4、うすくち醤油大さじ2、塩小さじ4分の1くらいで味をつける。

 

あとは鍋に下ゆでした大根、お湯をかけて油抜きし、ひと口大に切った油揚げをいれ、卓上へ持っていく。

大根煮

ほんの小さく沸き立つくらいの火加減を保ちながら、30分煮れば食べられるし、そのまま火にかけ続ければ味はさらにしみていく。

 

青ねぎと七味をふって食べる。

大根煮

嘘でなく、「のけぞるうまさ」なのである。

 

それから大根が煮えるまでの酒の肴は、まず大根の皮と茎、だし殻昆布とかつお節のじゃこ炒め。

大根の皮と茎、だし殻昆布とかつお節のじゃこ炒め

皮と昆布は細く切り、茎はざく切りにして、ゴマ油にちりめんじゃこ、輪切り唐辛子を入れたフライパンを中火にかけてじっくり炒め、酒とうすくち醤油で味をつけたらさらに汁気がなくなるまで炒める。

 

ニシンの蒲焼き。

ニシンの蒲焼き

油は引かないフライパンを中火でよく熱してから、ひと口大に切ったソフトニシンを皮目からいれ、こんがり焼けたらひっくり返し、やはり焼き色がつくまで焼く。

酒とみりん、砂糖を大さじ2、しょうゆ大さじ1をいれ、ニシンを絡めつけながら汁がドロリとするまで煮詰める。

粉山椒をふって食べる。

 

水菜とちくわのおひたし。

水菜とちくわのおひたし

一つまみの塩をふった水でサッとゆでたざく切りの水菜をうす切りにしたちくわと混ぜ、おろしショウガと味つけポン酢をかける。

 

酒は燗酒。

酒は燗酒

大根煮は最高の肴になるのである。

 

「おっさんは昨日もブツブツうるさかったよ。」

チェブラーシカのチェブ夫

年を取るとひとり言が出るんだよな。

 

 

◎関連記事

いまだかつてない「食のよろこび」を体験したのである。

紅鮭の粕汁は「塩気をうすくする」のがポイントなのである。

サバ寿司は「古来の味」なのである。

晩酌はテレビもパソコンもなしにすると気分がいいのである。

煮物は食卓でやるのがいいのである。

大根煮は「煮立てない」のがコツなのである。

コメント

  1. どっこ より:

    おっさん、独り言も会話だよ。

  2. あん より:

    最近、魚料理のレシピを探していて、このブロクにたどり着きました。
    お料理も大事なポイントがおさえてあるし、文章も面白くて、それから毎日きてます(^o^)

    大根の煮る音、考えたことなかったですー。
    ゆとりある暮らし、いいですね。

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