煮物は食卓でやるのがいいのである。(肉豆腐)

肉豆腐 豚肉

昨日は肉豆腐を酒の肴にした。

肉豆腐

煮物は、食卓でやるのがいいのである。

 
肉豆腐は、豚肉をつかった酒の肴として最もうまいものの一つではないだろうか。

・・・というと、関西の人はまずこの言葉づかいに異を唱えることになるとおもう。

関西では「肉」といえば「牛」であり、豚肉を豆腐と煮るなら「豚豆腐」にならないといけないからだ。

でもぼくは関東の出身だから、肉豆腐といえば「豚」なのである。

 

といっても肉豆腐の主役は、肉ではなく、あくまで「豆腐」ということになる。

肉のうまみが出ただしが、豆腐にしっかりとしみ込んだのは、「たまらない」わけである。

だから肉豆腐をおいしく作ろうとおもうなら、時間をかける必要がある。

最低でも30分は煮て、さらにそれから30分は、豆腐を煮汁にひたしておかないといけないわけだ。

 

しかしもちろん、それだけの時間を食事の支度についやすのは、なかなかできることではない。

そこでおすすめなのが、「煮物を食卓でやる」ことである。

別に肴を用意しておき、酒を一杯、二杯とやりながら、煮物の味がしみるのを気長に待つ。

これは池波正太郎流のやり方だが、こうすれば、食事の支度にかかる時間は大幅に節約できることになる。

 

しかもこの、煮物を食卓でやるやり方は、単に時間を節約するためだけのものではない。

「火にかけた煮物をながめながら酒を飲むと、酒がうまい」のである。

これは人間の太古の記憶が、おそらく関係しているだろう。

火のまえで酒を飲むのがまず気分がいいし、その火のうえで煮物の味がしみていく様子は、絶好の肴になる。

 

食卓で肉豆腐をやるばあい、具は豆腐と豚肉だけにするのがおすすめだ。

肉豆腐

大根煮と同様で、具を一品、二品と追加すると、「みすぼらしい鍋」になってしまうからである。

 

さて肉豆腐を作るなら、だしは自分でとるのがおすすめである。

肉豆腐などただ煮れば出来てしまうのだから、だしでも自分でとらなければすることがない。

だしはたっぷり用意するのが肝心だ。

肉豆腐作り方1

4カップ半の水にだし昆布とかつお節のミニパック4パックをいれ、中火にかける。

煮立ってきたら弱火にし、ふつふつと煮立つくらいの火加減で、アクをとりながら4~5分煮、ザルにペーパータオルを敷いて濾しとれば、4カップほどのだしが出来る。

肉豆腐作り方2

これに酒とみりん大さじ4、うすくち醤油を大さじ3弱、さらに味を見ながら塩少々をくわえれば、煮汁は出来あがりである。

 

豚肉は、そのまま入れてしまっても悪くはないが、湯通しすれば臭みもぬけ、アクをとる手間もはぶける。

肉豆腐作り方3

水を煮立てたら火を止めて、豚肉をいれ、しゃぶしゃぶと混ぜたら湯を捨てる。

豚肉はロースなどより、バラやコマなど脂が多めのもののほうが煮物につかうにはおすすめだ。

豚肉はお店によって味がかなり違うから、もしいくつかお店があるのなら、それをまわって、おいしいお店を探してみるのがいい。

 

あとは煮汁に豆腐と豚肉をいれ、コンロと一緒に食卓へ持っていけばいいという話である。

肉豆腐作り方4

中火にかけ、煮立ったら火を弱める。

火加減は、大根煮と同様「絶対に煮立たせない」ことがコツとなる。

煮立てると、豆腐にはスがはいり、豚肉は硬くなるからだ。

 

豆腐が煮えるまでの酒の肴は、昨日は3品用意した。

ちくわとキュウリの酢の物

ちくわとキュウリの酢の物。

きゅうりはうすい小口に切り、塩一つまみで揉んで少しおき、水で洗って水気をふき取る。

やはりうすい小口に切ったちくわと合わせ、酢1:みりん1.5:うすくち醤油0.5くらいの三杯酢であえる。

 

白菜のおひたし。

白菜のおひたし

ちりめんじゃことポン酢醤油。

 

だし殻の佃煮。

だし殻の佃煮

だし殻の昆布とかつお節を酒と砂糖、みりんをそれぞれ大さじ1、醤油は大さじ1弱、それに水少々で、完全に汁気がなくなるまで煮、粉山椒をかける。

 

これらの肴で酒をちびちび飲むうちに、豆腐が煮えてくるのである。

肉豆腐

15分ほど煮ればもう食べ始めてもかまわないし、そのまま鍋にいれておけば、豆腐にますます味がしみていくことになる。

 

器によそい、青ねぎと七味をふる。

肉豆腐

熱々の、やわらかな、味がしっかりしみた豆腐は、まさに「幸せ」なのである。

 

酒は日本酒。

酒は日本酒

肉豆腐が肴だと、飲み過ぎてしまうのも仕方がないということだ。

 

シメは煮汁が煮詰まった分を水で少しうすめてにゅうめん。

肉豆腐の煮汁でにゅうめん

これがまた、たまらないのである。

 

「おっさんの幸せは、お手軽だよね。」

チェブラーシカのチェブ夫

そうなんだよな。

 

 

◎関連書籍

池波正太郎『そうざい料理帖』
そうざい料理帖
819円(アマゾン)

 

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コメント

  1. masa より:

    初めまして。
    僕は書籍から興味を持ち、引っ越しする少し前の旧サイトからここを始めました。
    最初は書籍に載っている「おっさん」のイラストや写真と、自分撮りをしている高野さんの写真とのギャップに驚きましたが、旧サイトを遡って見ているうちにあのイラストが理解できました。
    ずいぶんイメージが変わったんですね。
    料理の写真もいいけれど、僕は高野さんがいろいろと書き連ねる文章が好きです。
    文章の量が多いと何か「得をした」ような気分になるんですよね。
    これからもどしどし書いて下さい。
    では・・・

  2. 育児ママ より:

    はじめまして☆
    ずっとブログを読んでるお酒大好き人間です。

     好きなものを作って自宅で飲むって幸せですよね…
    うちは子供がいるんですがおかず=つまみでつまみでご飯が食べれる子供になりました(笑)

     でも旦那も飲むのですが好き嫌いが多く(きのこ類 ネバネバ食材 海藻類 全滅)、私とつまみの好みが合わない為、つまみを2種類作るのは面倒なので私の食べたいものは我慢してます。

    だから自分の好きなものばかりをつまみにできる生活に憧れちゃいます

  3. ゆうり より:

    煮汁が黄金色ですね★
    ほーっとするお味なのでしょうね…
    温かなお出しの味や香りって、本当にいいですよねえ~

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