豚肉とナスのトマト炒めを肴にした。
炒め物は、火を止めながら作るとラクである。
買い物へ行き、冷蔵庫にはあれこれと入っているから、どれを使って何を作るかを考えるわけである。
まずは豚コマ肉を使うことにした。魚も入っているのだが、肉が食べたい気分だからだ。
これをナスと万願寺と一緒に、みそで炒めようかとまず思った。
でもそれだと、いかにも普通だ。それに色も、茶色に青に緑だから、パッとしない。
そこでトマトを入れたらどうかと思った。オイスターソースでうすめの色にし、卵でとじれば、赤に貴色できれいだろう。
でもそうすると、今度は具材が多すぎると思った。
料理はやはり、「主役」をはっきり決めるのが大事だろう。具材が多すぎるのは、どうも印象が散漫になる。
そこで万願寺は抜き、単品で焼くことにした。そうすれば、きちんと「ナス」が主役になる。
あとは味を吸わせるものを入れるかが、問題になるだろう。厚揚げがあるから、それを一緒に炒めるのは悪くなさそうだ。
でも厚揚げは、レタスと一緒に吸物にしたかったのだ。前日に鯛の骨で油あげとレタスの吸物をし、それがとてもうまかった。
二つの料理におなじ具材を使うのは、できれば避けたいところだろう。
ずいぶんと迷った挙句、厚揚げは吸物にすることにした。ナスも味を吸うわけだし、卵でとじれば、それも味を吸う効果がある。
炒め物の方は、厚揚げがなくても味を吸うのは十分だろう。
吸物は、ツナを入れることにした。ツナの吸物だから、「ツナ吸」である。
まずはツナ吸。
鍋にツナ、これは前日に使った残りだったから、3分の2缶くらいだったが、もし新しいのを使うなら、たぶん全部入れたと思う。それに水1カップ、酒と淡口しょうゆを大さじ1、みりん小さじ1、おろしショウガ小さじ2分の1を入れ、火にかける。
5ミリくらいの厚さに切った厚揚げを2~3分煮て、最後にひと口大にちぎったレタスを入れる。火を強め、ひと煮立ちさせて火を止める。
青ねぎと、一味を振って食べる。
レタスは、「吸物のためにあるのではないか」と思うくらい、吸物に入れるとうまい。また厚揚げともよく合う。
あとはわさび醤油の冷奴、
万願寺のグリル一味ポン酢、
を作って炒め物にとりかかる。
炒め物は、事前に材料をすべて切り揃え、調味料も合わせておくのが鉄則だろう。あっという間に火が通るから、モタモタと材料を切ったり、調味料を合わせたりなどしていると、火が通り過ぎるからである。
でも家庭料理だと、それはどうも面倒くさい。家庭料理の場合には、鍋を火にかけながら、並行して材料や調味料を用意し、それらを直接鍋に入れていくのがラクだろう。
煮物などなら、ほとんどの場合それで問題ないわけだが、たしかに炒め物は、火を付けたままにしておくと、火が通り過ぎることになる。
ならば、そのたびに火を止めればいいわけだ。炒めたら火を止め、材料や調味料を用意して、炒めたらまた火を止め、としていけば、あらかじめ用意しておく必要もないのである。
まずはフライパンにちょっと多めの油を入れ、乱切りにしたナス2個を中火で炒める。
ナスがしんなりしたら、皿に取り出しておく。
フライパンに、改めてゴマ油少々と赤唐辛子を入れ、豚コマ肉200グラムを炒める。
豚肉の色が変わったら火を止めて、酒とオイスターソース、淡口しょうゆを大さじ1ずつ、砂糖とおろしショウガを小さじ1ずつ入れ、また火を付けてサッと混ぜる。
あとも適宜、火をつけたり止めたりしながら炒めていく。ナスを戻し、くし切りにしたトマトを入れてさらに炒めて、ナスに味をしみさせる。
トマトがしんなりとしてきたら、溶き卵2個をまわし入れ、あまり細かくかき混ぜないで、上下を返しながら火を通す。
青ねぎをかけて食べる。
豚肉とナス、トマトと卵は、まちがいなく、黄金の相性だ。
酒は冷や酒。
飲み過ぎたのは、いつものことである。
「グリルがあるから万願寺もおいしく焼けたね。」
そうなんだよ。
◎関連記事
ピーマン肉詰めのタレはオイスターソースを入れるとコクが出るのである。