きのうの肴は、インゲンと厚揚げのそぼろあんかけ。
煮物・汁物は昆布だしで煮て、削りぶしをかけるようにすると手軽にできるのである。
化学調味料は極力使わないようにしていて、別に化学調味料が嫌いなのではなく、昔ながらの、化学調味料が山盛りのラーメンも、それはそれで大好きなのだが、化学調味料を使うと料理がつまらなくなると思っている。
それは自分の経験によっていて、ぼくは自分で出しを取ったことがきっかけで、料理にハマった。自分で取っただしはうまいから、嬉しくなり、「それで何を作ろうか」と自然に考えるようになる。
だしがきちんとしていれば、どうやって作っても「失敗」と言えるほど不味くなることはないし、ただレシピ通りに作るのでなく、「料理を自分で考える」ことが、だしを取ることによって初めてできるようになった。
考えてみれば、だしは料理の中心なのである。魚や肉、野菜などを煮ることにより、うまみが煮汁に溶け出すことは、鍋の発明とともに、それまで焼いたり、和えたり、発酵させたりするしかなかっただろう料理を革新的に変えただろう。
そのことを、粉末を振り入れることで解決してしまおうとすると、料理の大元が理解できないことになる。
理解できないものに面白さを感じることは、なかなか難しだろう。
また化学調味料を使わないと、和え物などにしても、うまみを具体的な具材として考えないといけなくなる。
削りぶしやらツナやら竹輪やらちりめんじゃこやらをどう合わせるか、考えることは、料理の大きな楽しみだと言えると思う。
それはそうなのだけれど、一方で、「だしを自分で取るのは面倒くさい」という、気持ちもわかる。削りぶしや昆布を煮出し、ザルで漉すのは、手間としてはそうそう大変なことでもないのだが、心理的に、負担を感じる。
これはやはり、料理は具材を順番に入れていけば出来てしまうことが、人間心理として素直なのであり、一度入れたものを取り出すということは、いわば後戻りするような、精神の緊張を必要とすることなのだろう。
料理屋などならともかくとして、家庭料理は、作るのがラクなことも大事である。
そこでここしばらく、だしを必要とする局面で、削りぶしを取り出すことなくうまみを付けるやり方をあれこれ試みてきた。
オイスターソースを使う
のは、わりといいやり方で、独特の風味はあるが、味の濃い煮物などなら問題なくおいしくなる。
それから削りぶしを初めから入れ、そのまま煮てしまう
のも悪くない。ただしこれは、削りぶしを煮てしまうから、ややエグミが出る難点はある。
しかし最近、ぼくはこの問題については、ほぼ決定版の解決法を見出したと思っている。
「昆布だしに味を付けて煮、器に盛ってから、削りぶしを振りかける」のである。
汁物などに削りぶしをかけるのは、関東ではあまりしないかも知れないけれど、関西では、例えばうどんなどにせよ、珍しいことではないだろう。
削りぶしを煮てしまわなければ、エグみも出ず、削りぶしが口に触ることに問題さえ感じなければ、味的には完璧なものになる。
きのうのインゲンと厚揚げのそぼろあんかけも、やはりだしが欲しいところである。
このやり方で作れば、面倒なことなく、おいしく出来るわけである。
インゲンはヘタを落とし、筋があれば取って、食べやすい大きさに切る。
塩を振った水で、やや固めにゆでておく。
フライパンにサラダ油少々を引いて中火にかけ、鶏ひき肉150グラムをほぐしながら炒める。
肉から水気が出てくるから、それが飛ぶまで、じっくり炒める。
ここで、だし昆布と、水1カップを加える。
煮立ってきたら、酒とみりん、淡口しょうゆ大さじ3ずつを入れ、1センチ厚さくらいに切った厚揚げを5分くらい、弱火で煮る。
下ゆでした厚揚げを加え、ひと煮立ちさせる。
ここで火を止めて、しばらく置いておくようにすると、味がしみる。
最後に火を強火にし、だし昆布を取り出して(食べ)、片栗粉と水大さじ1と2分の1ずつの水溶き片栗粉を、混ぜながら少しずつ加える。
少し煮立てて、十分とろみが付いたら火を止める。
器に盛り、削りぶしと、おろしたショウガを盛る。
足りないところは一つもない、申し分なくやさしい味だ。
あと作ったのは、オクラととろろ昆布の吸物。
器にとろろ昆布と削りぶし、淡口しょうゆ、うすい小口に切ったオクラを入れ、お湯をそそぐ。
トマ玉炒め。
卵2個とくし切りにしたトマト、淡口しょうゆ小さじ1、砂糖小さじ2分の1を溶き混ぜ、オリーブオイル少々を引いて中火にかけたフライパンで炒め、器に盛って粗挽きコショウをかける。
それに玉ねぎ塩もみ。
うす切りにした玉ねぎを塩で揉み、5分ほど置いて水洗いしてからよく絞り、竹輪と合わせて味ポン酢で和えて、一味を振る。
酒は焼酎水割り。
「食べたい」と思った通りの肴で酒を飲むのは、本当に気分がいい。
「凝り性だよね。」
そうなんだよな。
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