スズキをタケノコと炊き込みご飯にした。
炊飯器を使わないことで、世界が広がるのである。
「義務」として料理をするのと「趣味」で料理をするのとは、自ずと異なることである。
義務は「効率」を考えることが大事になるが、趣味で大事なのは「楽しさ」だ。
特に自炊は、楽しくない限りつづかない。
自分のために料理をするのは、義務にはなりようがないからだ。
趣味で料理をするときに、考えないといけないことがある。
それは楽しみを減らす要因を、できるだけ排除することだ。
「当り前」とおもうことが、実は物事をつまらなくしていることはある。
義務ではなく、趣味の観点で、すべてを点検してみる必要があるだろう。
そうして点検したときに、浮かび上がってくるものがある。
「炊飯器」と「化学調味料」なのである。
炊飯器は「めし」を炊くもの、化学調味料は「だし」なわけだが、めしとだしは、日本の料理の中心である。
その中心を、炊飯器と化学調味料を使うことで科学技術に売りわたし、自分では手を下さないことになっている。
どんな趣味でも、その一番の中心を「自分ではやらない」などということがあり得るだろうか?
中心は、自分でやるからこそ面白いはずである。
炊飯器と化学調味料を使わないことにしてみると、料理の世界は大きくひろがる。
日本で長年にわたって積み上げられてきた料理の「知恵」は、めしとだしに結集しているからである。
誰でもが使っている当り前のものを使わないことにするのは、はじめは心細いだろう。
でもその心細さこそ、世界の入口に立ったことの証なのである。
きのうはスズキとタケノコの炊き込みご飯を肴にした。
炊き込みご飯は土鍋でやるのがいいのである。
さてめしを鍋で炊くことは、実際のところ簡単だ。
難しいことは何もない。
しかも鍋で炊くほうが、下手な炊飯器のめしよりうまい。
火が強いからだろう。
片手鍋でも問題なく、ぼくも白めしを炊くときは片手鍋を使っている。
でも炊き込みご飯を炊くときは、そのまま食卓に出して見栄えがいいから土鍋を使うことにしている。
土鍋は一人用のが、1カップの米を炊くのにちょうどいい。
炊飯用の土鍋もあるが、べつに普通の安い土鍋で問題ない。
炊き込みご飯は、魚を入れるようにするのがオススメだ。
魚の自然なだしが出て、別にだしを取ることも化学調味料も必要なくなる。
きのうはスズキをいれたが、これはスズキでなくても何でもいい。
サンマをいれてみたこともあるが、臭みなどは全くなかった。
魚と一緒にいれる具は、一般的には油あげとゴボウ。
油あげはコクを、ゴボウは香りをつけてくれる。
きのうはタケノコがまだ残っていたからそれをいれた。
さらにみょうがで、香りをつけることにした。
魚をご飯に炊き込む場合、かならず焼いてからいれるようにする。
炊き込みご飯はアク取りができないから、臭みを抜く必要があるのである。
また焼くと香ばしい風味がつくのもいい。
塩をふり、まず皮目、つづいて返し、軽く焼き色がつくまで中火で焼く。
土鍋に5センチ角くらいのだし昆布を敷き、研いで水をきった米1カップをいれる。
米の上に3ミリ厚さくらいに切ったタケノコ、またはゴボウ、その上に細く刻んだ油あげ2分の1枚、さらに焼いたスズキを平らになるように埋め込み、一番上にタテにうす切りしたみょうがをのせる。
水を1カップに酒とみりん、うすくち醤油を大さじ1、塩小さじ2分の1をいれていく。
水分は、米の1.2倍が標準だ。
フタを閉め、中火にかけて、湯気が勢いよく出てくるようになったら弱火に落とす。
10分炊き、火を止めてさらに10分蒸らす。
白めしの場合、8分で止めるとおこげができない。
片手鍋の場合なら、蒸らすとき、はじめの5分は火をさらに弱くしてつけておき、水気を飛ばすようにする。
炊き込みご飯は、フタを開けるときが楽しみだ。
スズキとみょうがのいい香りがぷんとする。
茶碗によそい、好みでわさびをのせて食べる。
炊き込みご飯は、酒の肴にもいいのである。
さらに炊き込みご飯は、お湯をかけ、湯漬けにして食べるのもいい。
ぼくはいつも、半分ほど残しておき、翌日湯漬けにして昼酒のアテにしている。
きのうはあとは、若竹煮の残り。
湯通しピーマンのじゃこポン、一味。
とろろ昆布の吸物。
わさび醤油の冷奴。
酒は冷や酒。
ご飯があるから、一杯半で満腹になった。
「おっさんはご飯はあまり食べないしね。」
そうそう、だからなおさら炊飯器は必要ないんだ。
◎一人用土鍋
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コメント
若い頃はめんどくさいと思ったことが今はめんどくさくなくなったり(*^^*)
他のことはめんどくさかったり…
お料理は奥が深いので、ちょっとのことで味が変わったり、手間隙かければ成果が出るので楽しいですね♪
そうですねー。
楽しいですよね。