昨日は冷凍してあった塩サバを、炊き込みご飯にした。
酒を飲みながら料理をするわけなのだが、そうすると、つい飲み過ぎてしまうのである。
ぼくはいつも料理をするとき、まず酒を作るところからはじめる。
晩酌は、すでにここから始まっているわけである。
「飲みながらの料理」というのが、じつは悪魔のような仕業なのだ。
絶好の酒の肴になるために、つい飲み過ぎてしまうのである。
飲みながら、まずは「何を作るか」を考える。
これが酔っ払いには、たのしいのである。
酔っ払いの特徴として、「他人への配慮ができなくなる」ことがあげられる。
でも同時に、自分が心地よいことを考えるのは、大得意なのである。
「何を食べるか」を考えることほど、心地よいことはない。
それで作る料理を考えるうちに、どんどん酒が進むことになる。
考えるうちに、「ああしよう、こうしよう」と盛り上がってくるから、なかなか作り始めない。
30分ほどたち、頭のなかで完成予想図を10ぺんも20ぺんも眺めまわした時分には、焼酎のグラスは、すでに2~3杯は空いているのである。
さらにいざ作り始めても、ちんたらやる。
作業を並行させたりなどは、一切しない。
これは酔っ払うと、複雑なことが考えられなくなるからである。
一つ終わると次はこれ、とチマチマ作っていくことになる。
さらに酔っ払うと、変なこだわりも生まれる。
だいたい炊き込みご飯を作ることは、はじめから決まっていたわけなのだから、考えているあいだに、米を研いでおけばいいところである。
でも酔っ払いは、
「全部考え切るまでは、作業には手をつけない」
などと、意味のない禁欲をつらぬくことになる。
それで料理を作る時間も、いつも1時間半ほどはかかる。
だからいつも、完成した料理を食べはじめる時点で、飲みはじめてからすでに2時間たっているのである。
それからさらに、食べながら飲むわけだから、飲み過ぎるに決まっているというわけなのだ。
考えるときは、メインはおおまかに決めておいて、サイドメニューから考えはじめる。
まずは汁物だが、とろろ昆布の吸物にする。
これはとろろ昆布をお椀に入れ、お湯をそそいで醤油で味つけするだけだから、異常なまでに手軽なのに、十分すぎるほどうまいのだ。
昨日はさらに、水にひたしてしぼった焼き麩を入れることにする。
焼き麩は、常備するのがおすすめなのだ。
水でしぼるとモチモチになり、じんわり汁を吸い込んでくれるという企画である。
豆腐があるから、冷奴にすることにしたが、ここにナスのじゃこ炒めをのせることにする。
これは驚愕のうまさである。
まずはゴマ油に唐辛子、そして醤油という濃いめの味が、乙女のような豆腐の味に、「美女と野獣」さながら合う。
さらにナスも豆腐もやわらかいため、食べごたえが、空前絶後のハーモニーをかもし出すのだ。
作るのは簡単だ。
ゴマ油と輪切り唐辛子、ちりめんじゃこ、それにうすい輪切りにしたナスをフライパンに入れて中火で炒め、酒と醤油でからめに味つけするだけである。
もう一品欲しかったので、あとはきゅうり。
たたいてちりめんじゃこと梅だれをかけることにする。
きゅうりはスリコギでたたいて手でちぎり、塩ひとつまみで揉んで10分くらいおき、水で洗って水気をふき取る。
梅だれは、梅肉を包丁でたたいて、同量くらいのみりんと、その半量のうすくち醤油で溶きのばす。
吸物ときゅうりは、サバのご飯が炊きあがるまでのところで、出来あがる寸前まで準備しておき、炊きあがった瞬間に、お湯をそそぎ、梅だれをかけるようにする。
手順にも、酔っ払いなりのこだわりがあるわけである。
さてサバのご飯である。
何のことはない、サバをご飯に炊き込むだけの話だから、簡単に出来るのだが、これが実にうまい。
魚はすべからく、ご飯に炊き込むことができる。
青魚でも、塩をふって焼いてから入れれば、臭みなどはまったく出ない。
昨日のサバは、しめサバ用に買ったものの残りで、すでに塩をふって冷凍してあった。
でも別にこれは、生サバでも、塩サバでも、普通に売っているのを使えばいいし、生サバは、塩をふって30分くらいおくと、より味がしみるとおもう。
鍋は金属でも問題ないが、ぼくは一人用の土鍋をつかう。
ここにだし昆布を一枚入れる。
研いでザルに上げておいた1カップの米、ささがきにして5分くらい水にさらした2分の1本のゴボウ、お湯をかけて油抜きし、細く刻んだ油揚げ2分の1枚、細切りのショウガ大さじ2ほどを入れる。
ゴボウは、土のついたのなら冷蔵庫に放り込んでおけば、1~2ヶ月はもつし、油揚げも冷凍保存できるから、常備するのがおすすめだ。
油揚げは、お湯をかければ一瞬で解凍できる。
ちなみにサバは、ジップロックに入れたまま、流水にひたして解凍するのである。
さらにここに、小さじ1ほどの塩をふって両面をサッと焼いたサバを入れ、水1カップ、酒とみりん、うすくち醤油を大さじ1ずつ入れる。
炊き込みご飯の味つけは、米1カップにたいし、水1カップ、酒とみりん、うすくち醤油をそれぞれ大さじ1ずつ、塩小さじ2分の1というのが基本だが、昨日はサバに味つけするため、塩が多めになっている。
フタをして中火にかけ、湯気が勢いよく出てきたら、弱火にする。
10分炊き、土鍋なら、そのまま火を止め10分蒸らす。
金属の鍋のばあいは、弱火よりさらに火を弱くして5分蒸らし、さらに火を止め5分蒸らす。
というわけで、いよいよ食べはじめるのである。
酔っ払っていたために、昨日は料理の集合写真を撮影するのを忘れたのだ。
サバのご飯のフタをあけると、サバとゴボウ、それにショウガの香りがぷんとする。
炊き込みご飯は、フタをあける瞬間が、やはり一つのイベントになる。
薬味は細く刻んだみょうがと大葉、それにゴマを用意しておく。
サバは少しくどいから、これでサッパリさせるのである。
茶碗によそってサバをほぐし、薬味と一緒にまぜ込んで食べる。
天地雷鳴の味なのだ。
さらにお湯かお茶をかけ、お茶漬けのようにして食べる。
炊き込みご飯は、これがまた、たまらないという話である。
食べるのも、ツイッターでつぶやきながら、ちんたら2時間ちかくかける。
これはもちろん、少しでも、酒をたくさん飲むためである。
「おっさんは、幸せだよね。」
というか、アホだよな。
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コメント
美味しそう(゚¬゚*)呑みながら読んでます