昨日は「スピナーズ」で少し飲み、家に帰って「鶏めし」を作った。
スピナーズで話していて、「自由業には逃げ隠れする場所がない」と、改めておもったのである。
ぼくも会社勤めを25年ほどしていたから、会社のことは、それなりに知っている。
ただぼくの場合は、会社を、その「体質がイヤだ」というのも辞めた一つの理由だから、あまり良く思っていないのも事実である。
実際の話ぼくは会社を辞め、自分で仕事をするようになり、ほんとうに気分がよく、自由を謳歌しているのはたしかだ。
でも自由業は自由業で、大変なところもある。
昨日もいつも行く四条大宮のバー「スピナーズ」で、寺島進に似た男性と、松下奈緒に似た女性とが話していた。
寺島進は会社勤めの経験もあるが、今は独立して自営業、松下奈緒は自営業だ。
寺島進が、「後輩と酒を飲み、いいところを見せようと十数年ぶりにナンパしたら、失敗だった」という話を面白おかしく話したあと、今度は松下奈緒が話し出した。
「私もこのあいだ、ナンパされたのよ・・・」
ナンパの相手は、50過ぎの「おっさん」だったのだそうだ。
暗い夜道でいったん追い越し、また戻って声をかけてきた。
松下奈緒は、そのおっさんを思いっきり睨みつけ、一言、
「何やねん!」
と言い放った。
するとおっさんは、そそくさと、逃げるように立ち去って行ったという。
それを聞いた寺島進は、ナンパした男性の肩を持ちつつ、
「それってどうして、たとえば『今時間がありませんので』とか、もっと角を立てないように言えないわけ?」
と聞く。
松下奈緒は、
「だいたい私はナンパスポットにいたわけでもなし、その気がないのをわからずに声をかけてくる無神経さがまずイヤだし、それにあとで付きまとわれても困るから、そういう時は、いつも『ビシッ』と言ってやるのよ」
と答える。
寺島進は、
「そうか、ナンパがいけないのではなく、『空気が読めない』のがダメなのね」
と安心した様子だったが、その話を聞いていて、ぼくは何となく、
「会社員と自営業のちがいを象徴しているようだ」
とおもった。
ぼくもライター仕事は、会社から依頼をもらう。
やり取りする相手が社長の場合は、問題は起こらないのだけれど、社員だと、何かと面倒臭くなることが多い。
うまくいかない理由を聞くと、社員はだいたい、「上司」や「他部署」のせいにする。
最後は社員と、連絡が、全く取れなくなってしまったこともある。
会社員の場合には、会社があるから、
「自分のせいではなく、会社のせい」
と説明ができるわけだが、自営業・自由業は、身一つでやっているから逃げ隠れする場所がない。
どうであれ、落とし前は自分でつけなければいけないのである。
松下奈緒は女だから、なめられないよう、なおさら気張らないといけないだろう。
でもぼくも、やる時は、けっこうビシっとやっているのである。
というわけで、昨日もスピナーズで2時間ほど飲み、家に帰ってめしを作った。
メインにしたのは「鶏めし」である。
ツイッターで、中華風の、鶏を炊き、その煮汁で米を炊いたのを見たのだが、
「これは和風にやれば、もっと簡単にできそうだ」
とおもったのだ。
要はただの、鶏の炊き込みご飯だが、鶏をドカンと上に乗せれば、豪華な感じに見えそうだ。
炊き込みご飯は、見た目が派手になるわりに、作るのは簡単だ。
鍋に材料をすべて入れ、火をつけて、そのあと止めるだけである。
鍋は土鍋だと、食卓に直接出せて見た目がよくはなるけれど、別にふつうの鍋でもおいしく炊ける。
まず5センチ角くらいのだし昆布を敷き、研いでザルに上げ、水を切った米1カップ、それにささがきにして5分ほど水に浸したごぼう2分の1本と、細く刻んだ油揚げ2分の1枚を入れる。
鶏肉は、昨日はモモを250グラム、ここに表裏にそれぞれ一つまみ(小さじ2分の1)ずつの塩をすり込み、食べやすい大きさにブツブツと切っておく。
鶏肉を上に乗せたら、1カップの水を入れ、味つけする。
調味料は、酒とみりんを大さじ1ずつ、オイスターソースと醤油を大さじ1/2ずつ。
酒はコク、みりんは甘みをつけることが目的だ。
オイスターソースはだしの代用で、本だしを使っている人はそれを入れ、醤油大さじ1にしても、ほとんど同じことになる。
調味料は、鶏肉の上からかけるようにする。
鶏肉に下味をつけることを兼ねるためである。
フタをしめ、中火にかける。
湯気が勢いよく吹き出てきたら、弱火にする。
10分炊いて、土鍋なら、そのまま火を止め10分蒸らす。
「10分」は、少しオコゲができる加減の時間である。
金属の鍋ならば、弱火よりさらに火を弱くして5分蒸らし、さらに火を止め5分蒸らす。
金属の鍋だと、すぐに火を止めてしまうと温度が急に下がりすぎ、蒸らしがうまくいかなくなるのだ。
フタを開けると、鶏肉とゴボウのいい香りがする。
小口切りにした青ねぎをたっぷりとかける。
さらに茶碗によそったら、好みによって七味をふる。
鶏肉のうま味がご飯にしみ、オイスターソースの風味もまたよく、これは本当に、死ぬほどうまいのである。
昨日はあとは、とろろ昆布の吸物。
お椀に削り節ととろろ昆布、水にひたして絞った麸、青ねぎ、うすくち醤油を入れ、お湯を注ぐ。
ネギの焼いたの。
ざく切りにしたネギをフライパンで焼き、削り節とショウガじょうゆで食べる。
ナスの塩もみ。
うすく切り、一つまみの塩で揉んで5分おき、水で洗って絞ったナスに、削り節とからし酢醤油をかける。
長芋の千切り。
ポン酢醤油と一味。
酒は日本酒。
スピナーズで飲み、晩酌の支度をしながらさらに飲んだわけなので、晩酌では2合にした。
「おっさんも、食べてかないといけないからね。」
けっこう苦労してるんだ。
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