きのうはカブと鶏肉の赤出しにゅうめん。
料理しない男は、食い方が意地汚いのである。
「暖かくなってきた」と思うのも束の間、ここ数日は30度を超える真夏日が続いていて、「地球は大丈夫か」と心配になるきょうこの頃。とはいえオレは暑いのは好きで、「真夏日ならそろそろ短パンにアロハでもいいのか」などと考え始めているのである。
家は1階の北向きで、冬は死ぬかと思うほど寒いのだが、夏は実にすごしやすい。前の庭には陽がさすから、直射日光は入らずほどよく明るい。窓とドアを開けると風が通り、真夏の一番暑いときでもエアコンは必要ない。
さわやかな風に吹かれて昼寝などを決め込むのは何とも気持ちがいいのだが、暖かくなると共に蚊も出てくるようになる。
これがちょっとした問題だ。
蚊に刺されること自体は、やぶさかではないのである。蚊の刺すのはメスで、産卵のための栄養補給に血が必要なのだそうだ。
そう聞くと、フェミニストのオレとしては協力したい気にもなる。おまけにメスに血を吸われるなど、何やらエロティックな感じもする。
しかし蚊に血を吸わせると、痒くなるわけである。この件に関しては、「なぜもっと上手くやれないのか」と、いつも思うのだ。
多くの人は、もし蚊に血を吸われても痒くならないなら、わざわざ蚊を殺したりせず、そのまま放置するだろう。そうすれば、蚊にしてみれば、もっと血を吸いやすくなるはずだ。
実際肌の常在菌は、何かのきっかけで暴れ出すとニキビを作ったり、傷を化膿させたりの悪さをするが、普段は大人しくしているわけで、そうやって大人しくしている時には、免疫もスルーして攻撃をかけないそうだ。
蚊はなぜ、そうやって人間と共存する道を選ばず、わざわざちょっかいを出すようなことをするのかと、不思議なのである。
これは、細菌などと比べると、昆虫である蚊が、まだ人間とのつき合いが短いから、人間の側の事情がよく分からないということなのだろうか。あと何億年かすると、蚊もさらに進化して、刺しても痒くならないようにバージョンアップするのかと思ったりする。
とはいえ、やはり痒くなるのは嫌だから、ベープマットは焚くのである。
蚊には悪いが、それは仕方のないことだ。
食い方が意地汚い奴がいる。クチャクチャと音を立てたり、迷い箸をしたりなどなど、気が付かないのは本人だけで、周りは呆れて見ているはずだ。
一つには、それは「育ち」の問題でもあるかもしれない。子供の頃にきちんとした食べ方を教わらなかったから、大人になっても食べ方が汚いままだというのは常識的な考えだろう。
しかし食い方が汚いことには、もっと大きな理由があるのではないかと思えるのだ。
それは、「料理をしないから」なのである。
それが証拠に、食い方が汚い奴は、ほとんど男だ。女性で食い方が汚い奴は、これまで見た覚えがない。
人間は、ただ腹を満たすためだけに食事をするわけではない。食事は同時に、精神的な喜びをもたらすもので、うまいものを食べた時には実に幸せな気持ちになる。
すなわち料理は、自分の肉体的な欲望を、理性の力で、喜びに値するものに仕立てあげ、高めたものなのである。料理とは、欲望をコントロールするための最も洗練された技術なのだ。
料理をしない男は、この技術を身に付けていない。そのため欲望の赴くままにガツガツと食べてしまい、意地汚く見えるのだ。
食べ方が意地汚いのは、社会的に大きなマイナスだ。
今からでも、料理を始めるのはおすすめだ。
さてきのうは、カブがもう一つ残っていた。カブは大根と似たところもあり、味を吸うのが持ち味だが、大根との違いは、味が素直であまり個性がないことだ。
大根はああ見えて、かなりの強烈な個性があり、何と合わせてどんな味を吸わせても、しっかり自分を保っている。それに対してカブにはそれがないから、合わせるのは強いものがいいというのがオレの意見だ。
おとといの豚肉は、その一つの代表といえるもので、コッテリとした豚の脂を吸ったカブは、実にうまい。
あとはカブは、味噌汁に入れるとうまいのだ。
カブのあっさりとした味は、味噌によく合う。中でも特に、赤出し味噌(八丁味噌)は、最高のコンビだと思う。
きのうはこの味噌汁に、鶏肉を入れた。
さらに味噌汁にはそうめんが合うわけで、にゅうめんは、腹がそれほど減っていない時には打ってつけの食事になる。
作り方は、おとといの吸物とほぼ共通。カブの皮を厚く剥いたり、茎と葉は下ゆでしたりするのも以下同文だ。
だしは味噌があるから、削りぶしだけで十分だ。
3カップ半の水に一つかみ(ミニパック6袋分)の削りぶしを入れ、中火で煮立てて弱めの中火にし、アクを取りながら5分くらい煮出して、削りぶしを絞ってとり出す。
酒・大さじ3を入れ、少しうす目くらいの味になるまで赤出し味噌を溶き入れて、
- 厚く皮をむき、6~8等分に切ったカブ
- 食べやすい大きさに切った鶏肉200グラム
- 細く切った油あげ2分の1枚
を、カブに火が通るまで、5分くらい煮る。
味をみて塩加減し、塩水でサッと下ゆでして水に取り、よく絞ったカブの茎と葉を加えてひと煮立ちさせる。
1分ほど硬めに湯がき、サッと水で洗って粗熱を取ったそうめんを入れたどんぶりによそい、生卵を割り落として青ねぎと一味をかける。
味を吸ったそうめんが、また最高なのだ。
あとは、たたきキュウリの梅じゃこ和え。
キュウリはすりこ木でたたいて割り、食べやすい大きさにちぎって一つまみの塩で揉み、10~20分くらい置いてから水にさらす。
包丁でよくたたいてペースト状にした梅肉と、同量くらいのみりん、ほんのわずかな醤油、それにちりめんじゃこで和える。
オニオンスライス。
新玉ねぎではなかったのでよく水にさらし、ゴマ油と味ポン酢、一味をかける。
それにわさび醤油の冷奴。
酒は、冷や酒。
きのうは飯の支度をしている時、何をどういう順番でやったらいいのか、分からなくなってしまった。支度しながら酒を飲んでいるからで、よくあることだ。
そうなると、食事の支度に時間がかかり、さらに余分に飲むことになるのだが、酒を飲むために料理しているのだから、それも仕方がないのである。
「ダラダラするにも程があるよ。」
そうだよな。
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