きのうの晩酌は大根煮。
一人おでんは、ネタを思い切って絞るのがいいのである。
そろそろおでんが懐かしくなる頃となり、コンビニでも、9月と10月が、おでんが一番売れるそうだ。「おでんに熱燗」は、寒い季節にホッコリと体を温める、最強アイテムの一つだといえるだろう。
このおでん、一人でしみじみと食べるのもまたオツなものだが、一人暮らしがおでんを作るとなると、ちょっとした問題が発生する。
たくさん出来過ぎてしまうのである。
食べたいおでんのネタを上げると、大根、卵、厚揚げ、牛すじ、竹輪、コンニャク、がんも、ジャガイモ等々、軽く7つや8つになるだろう。それらを全て、一つずつ入れても、一人の一食分には十分すぎる量なのに、買い物では、それらを一つずつ買うことはできないから、3つ4つずつ揃ってしまうことになる。
そうなると、大鍋に一杯出来てしまうことになり、女性などなら、「一週間食べ続け」などの事態にもなりかねない。
それはさすがに、ご勘弁願いたいわけである。
この一人おでんの悲惨な状況を回避するのに、ぼくが採用している対応策は、次の通りだ。
「おでんのネタを、思い切って絞る。」
おでんは、ネタがたくさんあるからこそ楽しいのは、もちろん重々承知なのだが、それは一人暮らしの場合、あきらめる。ネタがたくさん入ったおでんを食べたいなら、べつにおでん屋で食べてもいいのである。
ネタを2つくらいに絞ってしまえば、出来過ぎてしまうことはない。
ここでくれぐれも大事なのは、「思い切り」だ。ネタを中途半端に、4つとか5つとか入れてしまうと、「みすぼらしいおでん」になる。
それがネタが2つ、最大でも3つまでなら、おでんではなく「煮物」になる。
おでんとは独立した、風格ある別の料理になるのである。
きのうは、「大根」一点買いだ。大根は、やはりおでんネタでは王者だろう。
この大根に、合うネタをもう一品、考えるわけなのだが、竹輪やさつま揚げ、厚揚げなどでも良さそうだし、おでんからは外れてしまうが、煮物として考えるなら、肉を入れるのもいいだろう。
しかし最強なのは、「油あげ」だ。
大根は味が淡いから、下手なものを合わせると、そちらが主役になってしまう。肉などを合わせると、主役を奪われるのは確実だし、さつま揚げや厚揚げでも、微妙なところではないだろうか。
これが油あげだと、大根をうまいこと、引き立てる。
出過ぎず引っ込み過ぎずの程よい距離を保つのだ。
実際、大根と油あげを煮たものは、「大根焚き」と呼ばれる、おでんとは独立した料理である。11月ごろ、厄祓いを祈念してお寺で振る舞われ、京都の風物詩となっている。
おでんより歴史は古く、鎌倉時代ごろから始まっているらしい。
しかしこれを、現代目線で「おでんの一種」と捉えてもいいわけで、これが一人暮らしのおでんとしては、打ってつけなわけである。
だしは昆布と削りぶしだとまずはもちろんうまいけれど、昆布だけでも、かえって大根の滋味が引き立つ。
甘みを少し抑えれば、吸物的に汁まで飲める。
大根は、2センチ幅くらいに切り、面取りして下ゆでする。
弱めの中火くらいの、しっかり沸騰する火加減を保ち、時間は15~20分くらいだと思うけれど、竹串を刺してみて、スッと通るのを確認する。
改めて鍋にだし昆布、これは多めの10センチ長さくらいを入れ、大根がかぶるまで水を入れる。
中火にかけ、小さく煮立ってきたところで、入れた水が2カップなら、酒と淡口しょうゆ大さじ2ずつ、みりん小さじ2を入れ、食べやすい大きさに切った油あげを加えて、弱火で30分くらい煮る。
火を止めたら、かならず30分以上は置いて味をしみさせ、青ねぎと一味をかけて食べる。
ホックリと煮えた大根は、しみじみうまい。
大根の皮は、じゃこ炒めにする。
フライパンにゴマ油、ちりめんじゃこ、刻んだ大根の皮を入れて中火で炒め、しんなりしたら、しょうゆで味付。
あとは、梅キュウ。
すりこ木でたたき、塩もみして少し置いて、水洗いしたキュウリを、包丁でたたいた梅肉と削りぶし、それと同量くらいのみりん、ほんの少々の淡口しょうゆで和える。
おとといのにしんナス。
味がしみまくっている。
酒は焼酎水割り。
早めに支度を始めたはずが、気付いたら、きのうも2時を回っていた。
「ダラダラし過ぎなんだよね。」
そうだよな。
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