鯛とタケノコ、それにわかめを吸物にした。
鯛とタケノコは黄金の取合せなのである。
鯛の澄んだ味を活かすには、へたなものを合わせないほうがいい。
塩焼きにしろ鯛めしにしろ、まずは鯛だけで十分うまいし、合わせるなら味を吸わせる里芋や豆腐、そうめん、またはさわやかなゴボウや三つ葉ということになる。
しかし今回、もらいものの鯛とタケノコを食べつづけ、一つ大きな発見をした。
鯛とタケノコは、黄金の取合せなのである。
クセのないタケノコは、鯛の味を邪魔することなく、実にいい。
でも考えてみたら、これは当たり前の話だった。
「旬が重なる海のものと山のものとは合う」のである。
鯛もタケノコもそれなりに値が張るし、それぞれが主役で一品になるものだから、これまで「合わせよう」とは考えてみなかったのだが、先日の鯛とタケノコのご飯にしても、きのうの鯛の若竹汁にしても、大変うまいからぜひやってみてもらいたい。
といっても鯛の若竹汁は、はじめから「やろう」と思っていたわけではなかった。
鯛が最後の一切れになったから、これは王道の塩焼きに、それとは別にタケノコを若竹煮にするつもりにしていた。
ところが夜、買い忘れたものがあるのに気付いたのである。
コンビニへ行き、帰り道につい、大宮の表通りを歩いてしまったわけなのだが、すると酒場のガラスドア越しに知り合いの顔が見え、目が合った。
となればやはり、一杯飲んでしまうだろう。
店を出て、家にむかって歩き出すと、隣の店の店主とふたたび目が合った。
ニコッと笑って会釈されると、また飲んでしまうわけである。
それから風呂へ行ったりしたものだから、食事の支度をはじめるのが11時を過ぎてしまった。
もうこれから、鯛とタケノコを別々に料理する気がしない。
となってはじめて、若竹煮に鯛をいれ、だしを取る手間を省くことを思いつき、さらにせっかくの鯛のだしだから、吸物にして飲み干すことにしたわけだ。
この鯛の若竹汁、何の手間もかからず簡単にできる。
今回は切り身を使ったが、あらを使っても問題ない。
鯛は臭みを抜き、香ばしさを出すためサッと焼く。
中火で十分あたためたフライパンに、食べやすい大きさに切った鯛を皮目を下にしていれて、フタをして2~3分。
ひっくり返し、やはりフタをして2~3分。
あらを使うのなら、焼く前に水洗いしてウロコをていねいに取る必要がある。
切り身の場合、もし選べるなら骨付きのもののほうがいい。
鍋に5センチ角くらいのだし昆布を敷き、切り身1きれなら水は2カップ半、鯛と食べやすい大きさに切ったタケノコをいれ、中火にかける。
煮立ったら弱火にし、アクを取りながら2~3分煮てだしを取る。
酒大さじ2、うすくち醤油大さじ1、塩少々で味をつけ、4~5分煮たら、生わかめをいれてひと煮立ちさせ、火を止める。
お椀によそい、木の芽をのせる。
まさしく「春の味」なのである。
あとはナスの焼いたの。
1センチ厚さくらいに切ったナスを、フライパンで焼き色がつくくらいに焼き、削り節とショウガ、味ポン酢をかける。
生ピーマン。
マヨネーズに一味、しょうゆひと垂し。
卵おろし。
大根おろしに卵の黄身を落とし、削り節としょうゆをかける。
自家製梅干し。
梅干しはこれで食べきった。
酒はぬる燗。
これを2杯飲み、食べ終わったのは深夜2時に近かった。
「目が合ったからって飲まなくてもいいのに。」
そうなんだよな。
◎関連記事