昼はツナ缶のうどん、夜はタケノコごはんに鯛塩焼きで酒を飲んだ。
女にナメられてはいけないのである。
郡山から帰って以来つづいていた「死のロード」。
花見につぐ花見、飲み会につぐ飲み会はとりあえず落ち着きを見せ、通常体制にもどった。
早めに起き、喫茶店「PiPi」でブログ更新。
そのままビールを飲みたくなる誘惑を振りきって家に帰り、酒を飲んで昼寝する。
きのうのアテは、ツナ缶のうどん。
釜揚げにしたうどんにツナ缶を汁ごとのせ、ネギにきざみ海苔、しょうゆをかける。
簡単にできるのだが、驚くほどうまい。
薬味はみょうがなどもうまいし、何でも好きなのでいい。
昼寝から覚めたら、「タリーズコーヒー」で仕事。
久しぶりの仕事だから、気合いをいれる必要がある。
すぐ気が散ってしまうタイプのぼくは、喫茶店など人がいる場所のほうが集中できる。
家でひとりで仕事をすると、逆にあれこれ考えてしまい、最後には眠くなる。
人の話し声はほとんど気にならないのだが、たまに耳をそばだてる場合もある。
深刻な話が、あたりかまわず大きな声でされることがあるからだ。
きのうも3メートルくらい離れたところに座っていた男女の席へ、もうひとり男性がやってきた。
「お前ら、オレをこうやって呼び出すとはどういうつもりだ?」
男性の後ろ姿は怒りに満ち、いまにも一触即発の気配である。
「これはただ事ではない」と、ぼくは耳をそばだてた。
大きな声で話をするから、会話の内容は筒ぬけだ。
どうやら別れ話のようである。
あとからきた男性は女性の現在の彼氏で、「新しい男ができたから別れてくれ」と、女性はその新しい男を同伴し、彼氏に告げているらしい。
このような誰にとっても興味をそそられるやり取りが公衆の面前でされることがあるのも、カフェのいいところだろう。
ぼくはそしらぬ顔で仕事するふりをしながら、話の展開を見守った。
「オレはお前が幸せになれるのなら、それでいいと思っているよ」
彼氏は大人の対応である。
「それでいい、それでいい」
ぼくは思った。
だいたい彼氏は、女性に二股をかけられているわけだ。
二股をかけるような女とは、キッパリと別れてしまうのが身のためだろう。
しかし世の中、思うようには行かないものだ。
そのうち風向きが変わりはじめた。
話しているうち、彼氏は女性が惜しくなってきたらしい。
「お前はこの男といっしょで本当に幸せになれると思っているのか?」
巻き返しを図りはじめた。
膠着状態がしばらく続く。
彼氏は仁王のような顔で、黙って前を見据えている。
新しい男は、だんだんイライラしはじめたようだ。
といって女性は、新しい男の肩をもつ様子もない。
彼氏にも粉をふり、明らかに、この男同士の対決を心のなかで楽しんでいる。
やがて勝負はついた。
新しい男は席をたち、店を出ていった。
出ていくときに、自分と女性のコーヒーカップを片付けていったのは、男の最後のプライドだろう。
彼氏は「してやったり」の顔をしている。
シナをつくる女性を引き連れ、意気揚々と店を出ていった。
ぼくはふたりの後ろ姿を見送りながら、「チッ」と舌を打った。
何のことはない、彼女の二股をゆるした彼氏は、彼女の術中に深くハマっただけである。
これからさらに、彼女に好き放題されるだろう。
また新しい男もいい面の皮だ。
彼氏のいる女性とつき合おうとしてしまった結果、ただ「だし」にされただけに終わってしまった。
女の二股など、絶対に許してはいけない。
彼氏がいるなら、別れさせてからつき合うべきだ。
女にナメられてはいけないのである。
さていらぬことに時間を取られてしまったわけだが、仕事は何とかやり切って、家で酒を飲む時間となった。
神様からのお下がりの鯛は塩焼きにすることに。
さらに酒房京子の女将から大きなタケノコをもらっていて、それは下ゆでしてあった。
そのタケノコは、タケノコご飯にすることにした。
炊き込みご飯は、土鍋でやっても非常に簡単。
カラッと仕上がり、おこげもできるし、炊飯器でやるよりおいしくできる。
一人用の土鍋に5センチ角ほどのだし昆布を敷く。
研いだ米1カップ、斜めにうすく切った竹輪1本、5ミリ厚さくらいに切ったタケノコ、短冊に切った油あげ2分の1枚、タテにうすく切ったみょうが1本、それに水1カップ、酒とみりん、うすくち醤油を大さじ1ずつ、塩小さじ2分の1をいれ、フタをして中火にかける。
土鍋のフタから湯気がもうもうと出てきたら、弱火にして10分くらい炊く。
湯気からおこげの香りがしてきたところで火を止めて、10分蒸らす。
フタを開けると、みょうがのいい香りがする。
タケノコごはんは、タケノコの一番うまい食べ方の一つだろう。
あとは鯛の塩焼き。
これはフライパンで焼く。
鯛は、あらを使う場合には水洗いして、ウロコをきれいに取っておく。
フライパンを中火にかけ、手をかざして「熱い」と感じるくらいまで温めたら、両面に塩をふった鯛をいれる。
フタをして、5分ほど焼く。
焼き色がきちんとついたら引っくり返し、フタを外してさらに焼き色がつくまで、5分ほど焼く。
あらは火が通りにくいから、火を強めに通すようにする。
前日につくった若竹煮。
生ワカメは鍋にいれっぱなしにするのでなく、新たにいれて煮たほうが歯応えがいい。
とろろ昆布の吸物。
一味ポン酢の冷奴。
きのうのメニューは、鯛と米、塩、それに酒はお下がりを使ったもの。
お下がりを食べると、何とも幸せな気持ちになる。
「ぼくも女にナメられないようにするよ。」
たのんだぞ。
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コメント
おっさん、お疲れ!
よう言ったな!
昭和の男やな
女なんぞになめられてたまるかいな!
たけのこご飯すぐやってみるわ〜
いやいや、高野さん。韓国美人ならともかく、日本の女の
くだらない恋愛話、つまらない海外旅行話によく付き合ってられますねー。聞き上手な感じがします。