鯛のあらを買ってあったから、ゴボウと合わせて煮付けにした。
食事の支度は、最高の酒の肴になるのである。
仕事を終えて風呂にはいり、いよいよ酒を口にする・・・。
酒好きにはたまらないひと時だろう。
この至福の時間をどのように過ごすかは、人によってそれぞれにやり方があると思う。
テレビを見たり、新聞を読んだりする人もいるだろうし、ぼくの場合はを相手にすることが多い。
でも自炊する人の場合、いずれにしても考えないといけないのは、「食事の支度をいつするか」だ。
大きく分ければ、酒を飲む前にやり、飲みはじめる時点で肴が揃っているようにするか、飲みながらやるかということになるだろう。
これについて、もしはっきりとした考えがないのなら、ぼくは食事の支度を酒を飲みながらすることを勧めたい。
食事の支度は、最高の酒の肴になるのである。
「キッチンドランカー」という言葉があり、これは主婦がアル中になる原因の筆頭にあげられるわけだが、実際の話、料理しながら飲む酒はうまい。
おそらく酒が本能を解放するからなのだろう、料理するのが楽しくなり、それでますます酒がすすむ。
鍋や焼肉、バーベキューなどもおなじ話だろう。
酒を飲むのと食事の支度は、できる限り重ねてしまう手なのである。
さらにぼくが勧めたいのは、「どう料理するか」も酒を飲みながら考えることである。
これがまたいい。
もちろん買い物は事前にしておかないといけないから、ある程度は考えておく必要がある。
でもあとの細かいことは飲みながら考えるようにするのである。
酔いがまわってくるにつれ、名案があれこれ浮かぶようになる。
そのうち腹も減ってくるから、そうしたらようやく作りはじめるわけである。
さてきのうは鯛のあらを買ってあった。
鯛のあらは、やはり煮付けにするのがうまい。
ゴボウをいっしょに炊き込むことにした。
鯛あらの煮付けは、下処理さえきちんとすれば、あとは何てことなく簡単なのである。
鯛あらを使うときには、必ずまず湯通しする。
鯛は皮が弱く、湯があまり熱すぎると剥がれやすくなるから、湯沸し器の熱湯くらい、沸かす場合は少し冷ましたのをサッとかけ、すぐに捨てるようにする。
湯通ししたら、次に水でよく洗う。
特に落とさないといけないのはウロコで、これは「一枚も残さない」という意気込みでやる。
鍋に5センチ角くらいのだし昆布を敷き、ナイロンたわしでよく洗い、3ミリ厚さくらいの斜め切りにして5分ほど水にひたしたゴボウ、そして鯛あらをならべ、水を2カップ、酒とみりん、砂糖をそれぞれ大さじ5ずついれて強火にかける。
煮立ったらそのまま強火で、出てきたアクを取りながら2~3分煮る。
しょうゆ大さじ4をいれ、落としブタをして10分煮る。
火加減は弱めの強火、落としブタのところまで、煮汁の泡がきちんと上がるくらいにする。
最後にしょうゆ大さじ1をいれ、ひと煮立ちさせて火を止める。
フタをして、そのまま30分くらい置き、味をしみさせる。
しつこいようだが、魚の頭は、目のまわりのドロドロとしたところが一番うまい。
味のしみたゴボウがまたたまらないわけである。
あとはもやしの酢の物。
さっとゆで、水で冷やしてよくしぼったもやしと、わかめ、ちくわを砂糖小さじ1、酢大さじ1、塩少々の割合で和える。
とろろ昆布の吸物。
お椀にとろろ昆布と削りぶし、青ねぎ、それにうすくち醤油をいれ、お湯をそそぐ。
生節の煮汁で炊いたフキと油あげ。
一味ポン酢の冷奴。
酒はぬる燗。
食事をする前に飲むのは焼酎だが、食事にはやはり日本酒が合うのである。
「仕事も酒とおなじくらい熱心にやればいいのに。」
ほんとにな。
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