鯛あらと豆腐の炊き合わせで酒を飲んだ。
鯛と豆腐は、別々に煮るようにするのである。
魚屋へ行く。鯛のあらがあったら買おうと思っていたのだが、店頭には見当たらない。
板場にいる若大将に聞いてみた。
「鯛のあら、ありますか?」
「ありますよ」と言い、若大将が奥から出してきてくれたのは・・・。
どでかい、天然鯛のあらだった。350円。
どう考えても、一度では食べきれない。頭とカマだけをきょう食べることにし、腹身と背骨は、冷凍しておくことにした。
冷凍は、湯通ししたものをする方が、後で使いやすいだろう。
80度くらいの湯にサッと浸し、水洗いしてウロコや血の塊をていねいに取る。
さてこの頭とカマを、どうやって食べようか考えた。鯛あらは、色々な料理の仕方がある。
しかしきのうは、冷蔵庫に木綿豆腐が入っていた。ゴーヤチャンプルーに入れるつもりで買ったのを、結局入れなかったからである。
「これはきょう、使ってしまわないといけないな・・・」
鯛あらと豆腐を合わせるとするならば、煮付けが一つのやり方だろう。
やはり冷蔵庫に入っているゴボウも入れるか迷ったが、今回はシンプルに、鯛と豆腐だけで行くことにした。
あと考えないといけないのは、「どうやって作るか」だ。鯛あらは、強めの火でコッテリ炊くのがおいしいが、豆腐は弱火、薄い味でコトコト炊いた方がうまい。
「別に煮ることにしよう・・・」
まず鯛あらを、多めの汁で普通に炊く。炊いている途中で汁を取り分け、それを薄めて、豆腐を煮るようにするのである。
フライパンにだし昆布を敷き、鯛あらを並べる。
水は多いめ、3カップ、まず酒とみりん大さじ5ずつ、砂糖大さじ4だけ入れて、強火にかける。
サッとアクを取り、落としブタをして2~3分煮る。
しょうゆ大さじ4を加え、火加減は弱めの強火、落としブタのところまで、煮汁がきちんと沸き上がるようにしながら、5分煮る。
一旦火を止め、煮汁1カップを別の鍋に取る。
倍に薄め、しょうゆ少々をさらに足し、豆腐をコトコト、落としブタをして弱火で10分くらい煮て、火を止めたらそのまま冷まし、味をしみさせる。
鯛あらも、再び火を付け、さらに5分煮る。
しょうゆ大さじ2分の1くらいを味を見ながら入れ、スプーンでさっと、煮汁を上からかけて火を止める。
鯛あらも、そのまま煮汁に浸して冷まし、味をしみさせる。
味がしみたら、温めなおして皿に盛る。
ホックリと煮えた鯛に、味のしみた柔らかな豆腐は、何ともうまい。
あとは、万願寺とうがらしを食べることにした。万願寺は、ちりめんじゃこや削りぶしで柔らかく煮るのが定番だろう。
しかしここで、閃くのである。
「トマトを入れよう・・・」
とうがらしとトマトが抜群の相性であるのは、洋風料理で証明済みだ。
ただしトマトを入れるとなると、だしがちりめんじゃこや削りぶしでは、物足りない感じもする。
「ツナを使おう。」
ツナのコッテリとしただしを使えば、トマトのさわやかな味も生きるだろう。
鍋に丸のままの万願寺と、食べやすい大きさに切った油あげを並べ、ツナ2分の1缶、1カップ半くらいの水、酒とみりん、しょうゆをそれぞれ大さじ1ずつ入れ、火にかける。
煮立ったら弱火にし、落としブタをして、コトコト20分くらい、万願寺が十分柔らかくなるまで煮る。
煮汁がほぼなくなってきたところで、くし切りにし、種を除いたトマトを入れる。落としブタをし、火を強め、トマトが柔らかくなるまで30秒くらい煮る。
これは、抜群の味である。
ここまでうまいとは思わなかったから、驚いた。
それから八百屋のご主人に、「昔ながらのキュウリ」を一本、もらっていたのだ。
今どきのツルツルのキュウリと違い、イボイボが付いている。
これもきょう、使ってしまわないといけないだろう。
シンプルに叩いて、梅ダレで和えることにした。
梅ダレは、梅干し1個と削りぶし少々を包丁でよく叩いてペースト状にし、みりん大さじ1、淡口しょうゆ小さじ1くらいで溶きのばす。
キュウリはすりこ木で叩き、指で食べやすい大きさにちぎって、塩一つまみを振って揉み、10分くらい置いて水洗いし、水気をよく拭き取った上で、梅ダレで和える。
さらに厚揚げとネギの吸物。
だし昆布を敷いた鍋に、2カップの水を入れて火にかけ、煮立ったら酒と淡口しょうゆそれぞれ大さじ2ずつ、みりん小さじ2を入れて、厚揚げとネギ、しめじを2~3分煮る。
お椀によそい、削りぶしと青ねぎ、一味をかける。
夜の10時半から、手間と時間がかかるものを4つも作ってしまったから、のんびりやっていたら2時間かかり、飲み始めたのは1時近くになってしまった。
それからまたダラダラ飲み、寝たのは3時。起きたら9時という話である。
本当は、朝型の生活にしたい気はある。
しかしダラダラするのが好きなのだから、それは見果てぬ夢だろう。
「もうちょっとキビキビしてもいいと思うよ。」
そうだよな。
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