鯛のあらが買ってあり、これをどのように食べるか考えた。まずはあら炊きが定番で、ごぼうを入れ、さらにそうめんも添えるとうまい。
酒蒸しやあら汁もやはり定番になるだろうが、きのうはもう一択で、「鯛めし」だった。
腹が減っていたことも理由だったろう。最近は、夜も炭水化物を一日置きくらいで食べたくなる。
しかし鯛めしのうまさは、とにもかくにも格別だ。
味はうすめでいい。他には何も、入れなくていい。鯛の味がしみただけのご飯なのだが、これがご飯の中では、もっともうまいのではないかとすら思えるのである。
鯛のだしは、余分なものも、足りないものも、全くない。日本人の王道と思える味だ。
鯛に匹敵するのは、ハマグリだけだろう。ハマグリも、吸物にしたりすると、「つくづくうまい」とため息を付くことになる。
鯛もハマグリも日本では大昔から食べられていたそうだが、日本人の味覚の原点は、まさにこの鯛とハマグリにあったのではないかと思う。
魚屋で買った鯛あらは、鯛めしだけにはちょっと多めで、背骨も入っていた。そこでこの背骨で、吸物も作ることにした。
コンロが2口になったから、こういう真似もできるのである。
鯛の吸物には、具は豆腐と三つ葉が定番だけれど、きのうは三つ葉の代わりにレタスを入れることにした。
レタスは味が淡白で、きつい香りなどがないから、鯛の吸物に入れるには打ってつけなのである。
鯛あらはよく水で洗い、そのあと水気を拭き取り、まな板にならべる。
ここにまあ、小さじ1ずつほどの塩を、表と裏にそれぞれ振る。塩は、手のひらを上に向け、指の間から落とすようにすると、万遍なく振れやすい。
その上で、鯛を焼く。あまり焼き過ぎず、焼き色が軽くつくくらいでいい。
土鍋に5センチ角くらいの出し昆布、研いで水を切った米1カップを入れ、上にあらを並べる。背骨は、吸物用に取っておく。
水1カップ、酒大さじ2、みりん小さじ1、淡口しょうゆ小さじ2を入れ、フタをして中火にかける。
湯気が勢いよく噴き出てきたら、弱火にして、10分炊く。
10分したら、湯気のにおいを嗅ぎ、おこげの気配がすることを確認した上で火を止めて、10分蒸らす。
フタを開けると、鯛のいい香りがする。
わさびをちょんと乗せて食べる。
日本酒にも、この上なく合うのである。
吸物は、鍋に5センチ角くらいのだし昆布と、塩焼きした鯛の背骨(10センチ長さほど)、水2カップを入れて中火にかける。
煮立ってきたら弱火にし、初めに出てきたアクだけをさっと取り、15分くらい、コトコト煮る。
昆布と背骨は取り出して、これはポン酢でもかけて料理を作る際のつまみにする。だしは酒と淡口しょうゆ大さじ1、塩少々で味付けする。
弱火で豆腐を5分ほど煮て、火を強め、ひと口大にちぎったレタスを入れてひと煮立ちさせ、火を止める。
これも、つくづくうまいのである。
しんなりと味がしみた、レタスもいい。
あとはナスの塩もみ。
ナスは3ミリ幅くらいに切り、一つまみの塩で揉んで5分ほど置き、よく絞る。
うす切りにしたミョウガと合わせ、ちりめんじゃこ、味ぽん酢で和える。
冷やしトマト。
塩。
酒は冷や酒。
鯛めしの場合には、酒は「肴」と別のものではなく、献立の欠かせない一品といえるものになるのである。
「鯛がほんとに好きだよね。」
そうなんだよな。
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