鯛あらを使った「ガッツリ系料理」として鯛そうめんを作った。
鯛の煮汁は、やはりチクワブではなく、そうめんに吸わせるのである。
このところあれこれとやることが増え、ダラダラするのが好きなぼくも、そうダラダラばかりはしていられなくなりつつある。もう50だし、今さらガツガツやる気はないが、乗りかかった船には乗らないわけにも行かないだろう。
そこでぼくも最近では、相も変わらず目覚ましこそかけないが、日中は時間を多少は気にして、「これは何時までに終わらせよう」などと考えるようになっている。
事業仕分けよろしく、生活の中で重なるものはまとめたり、要らないものはやめたりなどもしているわけだ。
事業仕分けの検討項目の一つとして、「食事」がある。
これまでぼくは、夜、酒を飲み、昼に炭水化物系のものを食べていたが、1日に2回も消化をするのは、けっこうな負担になっていることに気が付いた。
夜はまあ、仕方ないとして、昼にまで、体力を消化にまわすとなると、その分、頭の働きが悪くなる。
そこで食事は、1日1回、晩飯だけにまとめるよう、試みることにした。
前はそうしていたのだけれど、それがイマイチ徹底せず、晩には酒しか飲まなかった。それで昼間は腹が減り、煎餅などを食うこととなり、それがそのうち昼飯になってしまった。
だから今回は、夜にガッツリ、1日に必要なだけの炭水化物を取ることにした。
ガッツリと食べてしまうと、その分、酒が飲めなくなるのだが、それはこの際、仕方のないことだろう。
きのうは冷凍保存してあった鯛あらを食べるつもりにしていた。鶏めしが残っていたから、炭水化物はそれで取れるが、1日分には少し足りなそうだったから、鯛あらでも炭水化物が取れるようにしたい。
となれば、「鯛そうめん」だろう。
鯛の煮汁を吸ったそうめんは、つくづくホッコリするのである。
ところでこの鯛そうめん、関東の人が「おいしくない」と言うのを聞くのは少なくない。
「そうめんが伸びているのは信じられない」のだそうだ。
ぼくは40まで東京にいたから、その気持もよく分かる。
関東と関西とでは、「麺」の捉え方がまったくちがうと、関西に5年住んで感じている。
関東では、麺は、麺そのもののシコシコ感を喉越しで味わうものだろう。だから蕎麦も汁そばよりも、タレにちょいと付けて食べるざるそば、もりそばが主流である。
ラーメンも、関東では普通のものより、「つけ麺」が人気なのではないだろうか。
それに対して関西では、麺には汁を吸わせるのが基本だろう。うどんにしても、京都のものは、「フニャフニャ」と思うくらいにやわらかい。
じんわりと汁を吸った麺の、ほっこり感を味わうのが、関西から西の文化なのだろうとぼくは思う。
きのうツイッターを見ていたら、興味深い論争があった。「チクワブ」についてである。
ツイートしていた関西の人は、チクワブを初めて知り、その存在意義が理解できなかったらしい。
「何、そのちくわの形をしているのに小麦粉で出来ていて、しかも汁を吸ってグニャグニャになったものって、不味そう」
と言うわけだ。
それに対して関東の人は、
「てめえ、人の食文化をバカにするのか」
と、冗談半分ではありながら、半分は本気で怒っている。
「プチ戦争」が勃発した体である。
しかしこの「チクワブ」こそは、関東の麺文化を如実に反映したものだろうと思うのだ。
問題は、
「チクワブが、なぜわざわざ、ちくわの形をしていなければならなかったか」
になるだろう。
チクワブは、おでんの汁をたっぷり吸わせ、それを味わうためにある。関西のおでんには、それに相当する具材はないように思うけれども、別にしようと思うのなら、うどんを入れても、関西人は何も問題を感じないのではないだろうか。
実際、鍋物にうどんを入れる「うどんすき」は大阪の名物だ。また島根県松江では「おどん」という、正におでんにうどんを入れたものが名物で、それがいま、全国的に流行しつつあるらしい。
しかし関東の人にとって、おでんにうどんを入れるのは、「許せない」のだと思うのだ。
麺はあくまで、喉越しを味わうもので、「汁を吸い、グニャグニャに伸びた麺など最低だ」という頭がある。
そこでわざわざ、小麦粉を、麺ではなく、ちくわの形に成形したのではないだろうか。
そうすれば、関東人も、麺に対する拒否反応なしに、汁をじんわりと吸った小麦粉のうまさを味わえるわけである。
ぼくは「チクワブ戦争」については、関東人の側に立ちたいと思う。
チクワブは、関東おでんの「核」であり、チクワブの入っていない関東おでんは、「麺の入っていない汁うどん」とも言えるほどではないだろうか。
それに対し、鯛の煮汁には、やはりチクワブではないだろう。
もっちりとしたそうめんが、この上なく合うのである。
鯛そうめんを作るには、まずは鯛を、煮汁を少し多めにして普通に炊く。
初めに80度くらいのお湯をサッとかけ、水洗いしながらウロコと血の塊をていねいに落とすのは、言うまでもない話である。
フライパンにだし昆布を敷き、洗った鯛を並べて水2カップを入れる。
酒と砂糖、みりんを大さじ3ずつ入れて強いめの中火にかけ、出てきたアクを、サッと取る。
しょうゆ大さじ3を入れ、落としブタをして、落としブタのところまで煮汁が上がってくる火加減を保ちながら、10分煮る。
火を止めて、スプーンで煮汁を鯛の上から少しかけ、そのままフタをして冷まして味をしみさせる。
食べる直前に、鯛の煮汁を、上からかける分を少し残してあとは全て別鍋に取り、水で3倍ほどにうすめた上で、そうめんを乾麺のまま、直接煮る。
ゆでたそうめんに煮汁をかけるのもいいが、こうして煮汁で直接煮ると、そうめんは一層モッチリとする。
好きな固さになるまで煮たそうめんを皿に敷き、上に温めた鯛を並べて煮汁をかける。
鯛の煮汁をたっぷりと吸ったそうめんは、「たまらない」という話である。
きのうはあとは、鶏めしの湯漬け。
鶏めしに湯をかけて、青ねぎをタップリと振るだけのことだが、鶏の濃厚なうまみが溶け出して、これがまたうまい。
豚コマ肉の麻婆豆腐。
それに塩もみナスのすだち掛け。
酒は焼酎水割り。
それほど飲めないとはいいつつも、もちろん飲み過ぎはするのである。
「仕事もちゃんと頑張らないとね。」
そうだよな。
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