もちろん、鯛の食べ方には色々あり、お造り、昆布じめがうまいのはもちろんとして、煮付は定番中の定番だし、酒蒸し、湯豆腐、鯛めし、などなど、どれもいい。料理をあれこれ知っていれば、しょっちゅう食べても飽きてしまうこともない。
しかし、一つ選ぶとしたら何かとなれば、やはり鯛は、塩焼きなのだ。
鯛の塩焼きは、他の魚の塩焼きとはちがう。調味料は、本当に塩だけでよく、大根おろしやらしょうゆやらを掛けてしまうと、かえって鯛の味を壊すことになる。
塩だけで、これだけ完璧な味になる食材は、鯛の他にはないだろう。
しかも鯛は、冷めてもうまい。
鯛の塩焼きがお祝い事などに欠かせないのは、この冷めてもなお保たれる王者の味と、それに見た目の立派さによるものだろう。
でも・・・、と思う人もいるかもしれない。鯛の塩焼きは、それほどうまいにも関わらず、料理屋などではあまりメニューで見かけない気がする・・・。
それはおそらく、鯛の塩焼きが、料理が簡単すぎるからだ。
誰でもできる塩焼きでは、料理人の腕の見せどころがないということなのだろう。
鯛の塩焼きの作り方
鯛の塩焼きは、何も難しいことはなく、ただ塩を振って焼けばいい。
多少失敗したとしても、鯛はおいしく食べられる。
ただしいくつか気をつける点をあげるとすれば、まずあらを買った場合、水で洗いながら、ウロコはていねいに取ったほうがいい。焼いてしまえば、ウロコはそれほど気にならなくはなるけれど、それでもないに越したことはない。
それから塩は、手のひらを上に向けた指に乗せ、指の間から落とすようにすると、満遍なく振れる。
塩加減、焼き加減とも、どうであってもそう悪いことにはならないから、適当にやってみて、あとはやりながら自分の好みを探すのがいいのである。
グリルがあれば、それで焼くのが一番うまく焼けるけれど、もしないのなら、焼き網を使うより、フライパンの方がうまく焼ける。
弱めの中火にかけたフライパンに、まずは皮目を下にして入れ、フタをして5分焼き、ひっくり返して、今度はフタを外して5分焼く。
それから魚を焼く場合の最大のポイントは、グリルにせよ、焼き網、フライパンにせよ、よく熱してから魚を乗せることであり、そうしないとくっ付いてしまう。
あとは魚を焼き上げ、皿に移すとき、もし身が壊れそうなら、すこし冷ましてからやると、身が固くなってうまくいく。
日本人でよかったとつくづく思う
焼き上がった、鯛の塩焼き。
これを食べると、「日本人でよかった」と、つくづく思うわけである。
あと作ったのは、十六ささげと油あげの卵とじ。
十六ささげは、今の季節に八百屋の店先に並ぶもので、インゲンの一種だと思うけれど、味はほぼインゲンなのだが、少し細くて、さらに長い。
そして何より値段が安く、これひと束で、100円か150円だったと思う。
食べ方は、インゲンと全く同じと思えばいいが、きのうは油あげと煮て卵でとじた。
十六ささげは食べやすい大きさに切り、サッと塩ゆでしておく。
鍋に5センチ角くらいのだし昆布を敷き、水1カップを入れて中火にかける。
煮立ったら、酒とみりん、淡口しょうゆを大さじ1ずつ入れ、細く刻んだ油あげを5分くらい、弱火で煮る。
ささげを加え、サッと煮たら、溶き卵をまわし入れ、ひと煮立ちさせてフタをして、火を止めてそのまま蒸らす。
削りぶし少々をかけ、一味を振って食べる。
ホッと癒やされる一品だ。
それに自家製梅干しとトロロ昆布の吸物。
お椀にとろろ昆布と削りぶし、青ねぎ、淡口しょうゆ、それに梅干しを入れて、お湯をそそぐ。
自家製梅干し
は、既製の梅干しと比べ、何が違うのかは分からないが、身が分厚い感じがし、しっかりと食べ応えがあってうまい。
ゴーヤのツナマヨ和え。
ゴーヤは縦半分に割り、スプーンでワタをかき出して、薄く切る。
塩もみして5分くらい置き、よく水で洗って水気を拭き取り、ツナとマヨネーズ、コショウで和える。
酒は、冷や酒。
鯛には、絶対に日本酒が合うのである。
「鯛のことになると熱弁するね。」
そうなんだよな。