小鯛を食べるのなら、土鍋で鯛めしにするべきだ。見栄えがいい上に、いいだしが出て実にうまい。
きのうはあれやこれやとやることがあり、夜の9時を過ぎてスーパーへ行った。食べるものは、一応考えてあったのだが、鮮魚売り場の前を通ると小鯛が並べられていたのである。
京都では、スーパーなどで小鯛をよく見る。広島にいたころは見た覚えがないのだが、他の地域ではどうなのだろう?
小鯛は値段が手頃である上、基本的に天然モノだから、味がいい。しかも尾頭つきだから、見栄えがいいことこの上ない。
普通は400円くらいで売っていることが多いのだが、きのうは何と200円。
「これは買うしかない」
急遽メニューを変更し、カゴに入れたわけである。
この小鯛、どうやって食べればいいかといえば、圧倒的に「土鍋で鯛めし」なのである。
スーパーのパックに「塩焼きに最適」と書いてある通り、たしかに塩焼きにする手はある。鯛の塩焼きは「王道」であるわけで、しかも尾頭つきだから、皿に盛っても見栄えもいい。
しかし小鯛の場合、身の量が少ないから、一人分でも、ボリューム的に不満があるのだ。しかも骨が多いから、食べるのにも手間がかかり、「労多くして益が少なし」となりがちなのである。
その点、鯛めしならご飯があるわけだから、ボリュームに不足はない。
おまけに小鯛の骨が多いことも、鯛めしなら有利に働く。骨からおいしいだしが出るからだ。
さらに小鯛を鯛めしにする場合、絶対に土鍋を使うべきだ。土鍋のまま食卓へ出せるからだ。
鯛の尾頭つきは、やはり見栄えも味の一つだ。それを炊飯器で炊き、ほぐして茶碗に盛ってから食卓に出してしまうと、鯛の大きな楽しみが損なわれることになるのである。
土鍋で炊いたご飯は、下手な炊飯器で炊いたものより、よっぽどうまい。
初めの2~3回は、水加減や火加減で失敗するかもしれないが、すぐに問題なく炊けるようになるはずだ。
小鯛は、ウロコとわた、エラを取る必要がある。スーパーに売っているのは、その下処理はだいたいされていると思うけれど、もしされていない場合は鮮魚コーナーで頼めば、嫌がらずにやってくれる。
サッと洗って水気をふき取り、表と裏に、パラパラと塩を振る。
手のひらに塩を置き、指の間から落としながら、「まんべんなく振る」くらいの加減である。
これを臭みを抜くために、グリルを強火にしてサッと焼く。
鯛めしにする場合、焼いた後に炊くわけだから、焼くことで中まで火を通す必要はない。むしろ火を通し過ぎると、脂が落ちてうま味が減ることになる。
強火で、表面に軽く焦げ目がつくくらいに焼けば十分だ。
一人用の土鍋に5センチくらいの昆布を敷き、
- 研いで15~30分くらいザルに上げておいた米 1カップ
- 泥を落としてささがきにし、5分ほど水にさらしたゴボウ 2分の1本
- お湯をかけて油を落とし、細く刻んだ油あげ 2分の1枚
- 焼いた鯛
を、この順番で積み上げていき、さらに、
- 水 1カップ
- 酒 大さじ1
- みりん 小さじ1
- 淡口醤油 小さじ2
を入れる。
中火にかけ、湯気が勢いよく吹き出してきたら弱火にし、10分炊く。
火を止めて、10分蒸らす。
土鍋で炊いたご飯は、フタを開けるときが楽しみだ。
適当にほぐして茶碗によそい、わさびを盛る。
これは、本当にたまらない。
鯛のうま味がしみたご飯は、最もうまいものの一つといえる。
それからこの鯛めしは、お湯か冷水をかけて食べると、またウマイのだ。
鯛のうま味が溶け出して、必殺の味になるのである。
あとは、とろろ昆布と梅干しの吸物。
お椀にとろろ昆布と削りぶし、梅干しと青ねぎを入れてお湯を注ぎ、淡口醤油で味つけする。
ナスの塩もみ・からし酢醤油。
3ミリ幅くらいに切り、1つまみの塩で揉んで10分くらい置き、水洗いしてよく絞ったナスを、からし酢醤油で和え、削りぶしをかける。
オクラとじゃこの冷奴。
板ずりし、サッとゆでて小口切りにしたオクラを、ちりめんじゃことぽん酢で和え、豆腐に乗せて、一味をかける。
酒は、冷や酒。
鯛めしが、また酒に合うのだ。だからご飯物でありながら、酒も進むことになる。
おかげでまた飲み過ぎてしまうわけだが、鯛を食べないわけにもいかないのだから、それも仕方がないのである。
「言い訳は聞き飽きた。」
そうだよな。
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