縄文時代から受け継がれる味。小鯛の湯豆腐

小鯛の湯豆腐

小鯛の湯豆腐

きのうは小鯛の湯豆腐。これは、縄文時代から受け継がれる味なのだ。

 

 

おれは、鯛が好きだ。魚にはそれぞれに良さがあり、「どれが一番」とは決めがたいけれど、
「鯛が魚の王様」
であることには、完全に同意したい。

何しろ、味つけが不要なのだ。

ただ塩を振って焼くだけで、一切の過不足がない、完璧な味になる。大根おろしやらポン酢やらをかけてしまえば、ただ単に鯛の味を壊すことにしかならない。

こんな魚は、魚界広しといえども、鯛だけだろう。

 

きのうはスーパーで、小鯛の、しかもかなり大きめのが、330円で売っていた。

小鯛

小鯛は元々それほど高いものではなく、400円ほどで売っている。しかし20センチを優に超える大きさのが、この値段で出るのは破格であり、迷わずバスケットに入れた。

何しろ小鯛は、小さいとはいえ「天然」なのだ。養殖のに比べると、やはり味が澄んでいて格段にうまい。

 

それでこれを、どうやって食べるか考えるわけである。

まず鯛は、ただ塩を振って焼けば、間違いなくうまい。塩焼きは、鯛の一番うまい食べ方だ。

ただし貧乏性のおれなどは、塩焼きだと「もったいない」と思ってしまう。

鯛は、実にいい「だし」が出る。ただ塩焼きにしてしまえば、このだしを味わえない。

せっかくなら、この鯛のだしを活かしたいと思うからだ。

 

鯛のだしを活かすなら、方法は大きく分けて4つある。

  • 吸物
  • 酒蒸し
  • 炊き込みご飯
  • 煮付け

このうち煮付けは、たぶん江戸時代の中期以降にできた、新しい食べ方だ。煮付けには欠かせない濃口醤油が、そのくらいに生まれている。

それにたいして吸物・酒蒸し・炊き込みご飯は、塩焼きと並んで歴史が古いはずだと思う。縄文時代まで遡ることができるのではないか。

 

縄文時代の遺跡からは、ハマグリの殻と一緒に、鯛の骨も出てくるそうだ。縄文時代の人たちも、鯛を食べていたわけだ。

食べ方は、まず塩焼きは絶対にしたはずだ。火と塩は、人類発生と同時に生まれたと言われている。

それから吸物も、食べていたに違いないと思う。

 

縄文時代には、土器があった。だから煮ることはできたはず。

鯛の吸物の味つけは、酒と塩、それにほんの少しの淡口醤油。醤油はまだなかったにせよ、酒も、起源は古いらしいから、縄文時代にはあったのではないか。

 

鯛の吸物は、醤油を加えなくても、ほぼ完璧な味になる。その味を、数千年前の人たちも、同じように味わっていたと考えられることになる。

これは「奇跡」とも言えることではないだろうか。

数千年前の料理を、いまだに「最もおいしいものの一つ」として食べる民族は、世界にどのくらいあるのだろう。

 

まあそういうわけで、鯛について語りだすと長くなってしまうのだが、きのうは小鯛を吸物にして食べることにした。

小鯛の湯豆腐

小鯛の吸物は、豆腐を加えて湯豆腐にするのがおすすめだ。

 

小鯛は、ウロコをとってわたを抜き、エラを取り外す必要がある。きのう買ったのは処理済みだったが、もし処理がされていない場合は、お店に頼めばやってくれる。

 

小鯛の吸物を作るには、「とにかく余分なものを入れない」のがポイントだ。具は、豆腐と三つ葉のみ。ねぎやシメジなどは鯛の味を損なうから、絶対に入れない方がいい。

味つけも、醤油は極力少なくする。薬味も、もしあれば柚子の皮を浮かべてもいいが、一味などは使わない。

 

 

小鯛の湯豆腐 作り方

鍋に4カップ半の水を入れ、15センチくらいの昆布をしばらく浸しておく。

食べやすい大きさに切った豆腐を入れて中火にかけ、沸いてきたらごくごく弱火、鍋底に泡がつくだけで全く煮立たないくらいの火加減で、10分ほど昆布を煮出す。

 

小鯛の湯豆腐 作り方

並行して、鯛の外側と腹の中とをよく洗い、水気をふき取る。皮が縮むのを防ぐため、表と裏の両側とも、軸と直角方向に2~3本の切込みを入れ、塩をまんべんなく振って焼く。

あとから煮るわけだから、中まで火を通そうとしなくていい。強めの火で、皮の表面にかるく焦げ目がつく程度、サッと焼く。

 

小鯛の湯豆腐 作り方

焼いた鯛を鍋に入れ、やはり煮立たせないようにしながら10分煮る。

味を見ながら、

  • 酒 大さじ2
  • 塩 小さじ1
  • 淡口醤油 小さじ1

くらいを、この順番に入れ、さらに5分くらい煮る。

 

ざく切りにした三つ葉をくわえて火を止め、鍋ごと食卓へ出す。

小鯛の湯豆腐

 

鯛をほぐし、お椀によそって食べる。

小鯛の湯豆腐

これはほんとに、たまらない味。

 

鯛の吸物には、シメはそうめん。

小鯛の湯豆腐

そうめんは30秒ほど、まだ芯が残るくらいに硬くゆで、水でさっと粗熱を取って汁に入れる。

 

 

あとは、ナスの塩もみ。

ナスの塩もみ

ナスは3ミリ幅くらいに切って小さじ1くらいの塩で揉み、5分ほど置いて水洗いしてよく絞る。

うす切りのみょうが、せん切りの青じそ、おろしたショウガ、ひねり潰したゴマと合わせ、味ポン酢で和える。

 

酒は、常温。

酒は常温

 

 

鯛の湯豆腐は、きょうの昼と合わせた2食分だから、原価は1食分で300円ほど。

それで最高のごちそうが食べられるのだから、やはり自炊はやめられない。

 

「貧乏人には打ってつけだね。」

チェブ夫

そうだよな。

 

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