京都駅前の東の外れにある「旬彩barほらほら」は、実に辺鄙な、一見のお客はまず来ない場所にあり、「隠れ家」と呼ぶのにふさわしい。
しかも酒の種類は豊富、料理は超本格的なものが多数とり揃えられ、値段も手頃。店の雰囲気もアットホームでとてもよく、一人でもカップルでもグループでも、食事するには非常におすすめだ。
「京都駅前」飲食街エリアの東の端は、高倉通あたりになる。塩小路通から高倉通を南に入ると、東側には「山本まんぼ」を初めとするお好み屋などの古手の飲み屋、西側には老舗ラーメン店「第一旭」と「新福菜館」が軒を並べる。
新しい店などついぞ見かけることがなかった場末感あふれる一帯なのだが、旬彩bar「ほらほら」は、この西側・南の端、第一旭の隣にある。
気づいたのは、先日第一旭にきた時だ。ラーメンを食べようと行列に並んだら、見慣れない飲み屋がある。
店の前に掲げられたメニューを見ると、酒も料理も種類が豊富で、しかもいずれも本格的。
何しろシメにラーメンを食べにくる人は別として、一見のお客はまず期待できない、「隠れ家」と呼ぶのにふさわしい場所である。
「これは良店かもしれない」と直感し、その日はもう酒もお腹も十分だったし、改めて出直すことにしたわけだ。
店構えは、安っぽい。
センスがいいのか悪いのか分からない、提灯も掲げられている。
しかし一歩店の中に入ると、アットホームで、しかもモダンな空間が広がっている。
入口近くにカウンター席。その奥と、通路を入った隣のスペースには、テーブル席が計5~6卓。
テーブルには赤いテーブルクロスがかけられて、バーというより、ちょっとしたレストランの趣だ。
店内の内装は、マスターとスタッフが自ら手がけたのだそうだ。素人とはいえ洒落ていて、それでいて暖かい空気に満たされている。
マスターは、年齢不詳なところはあるが、たぶん40代。この店はオープンして1年だそうだが、飲食業の経験自体は長いのだろう、穏やかで人当たりのいい、といって腰が低いのとはまた違い、自信にあふれたオーラがある。
おれはこのマスターの顔を見た瞬間、この店が自分に合うことを確信した。お店との相性は、やはり理屈ではなく、感性で決まるものだ。
酒の種類は日本酒から焼酎・ワインまで、実に豊富。
数十種類はあるのではないかと思う。
それから特筆すべきなのは、料理である。
このおすすめの数品を見ただけでも、珍しい魚を目利きして、しかも自分でさばき、調理する能力があることが伺える。
聞くと、料理スタッフは女性なのだが、中央卸売市場にいたこともあるのだそうだ。かなりの腕の持ち主のようである。
まず頼んでみたのは、惣菜の3品盛り。10品ほどの中から3品選び、値段は380円。
左から、ひね鶏の甘辛煮、南蛮漬け、サバのへしこ。歯応えのあるひね鶏(親鳥)を出すところなど、また泣かせるわけである。
それからキュウリのスタミナ漬け。
キュウリをニンニクと醤油、唐辛子で漬け込んでいて、箸休めには打ってつけだ。
そしてこの店の一押しメニューであるという、「オ・ト・ナ♡のカツサンド」750円。
これが、実にうまかった。
まずジューシーに揚げられた分厚いとんかつが、ソースに浸され、マスタードが塗られて厚焼きのトーストに挟まっている。これだけでもうまいわけだが、さらに一ひねりが加えられている。
ブラックペッパー、京都黒七味、カレーの香辛料を選べるようになっていて、このピリ辛加減が「オ・ト・ナ♡」というわけなのである。
きのうは黒七味を選んでみたが、ピリ辛味が入ることで、なおさら酒に合うようになっている。
料理は他にも、和食と洋食の両方が、豊富に取り揃えられている。メニューを見て「食べてみたい」と思ったものがたくさんあり、一回では食べ切れないのを残念に思ったほどだった。
この店は、こんな辺鄙な場所にありながら、ブログとツイッターを除き、宣伝などは一切していないのだそうだ。それでもきのうも、お客さんはほぼ一杯だったから、大したものだ。
しかし、それもうなずける。これだけおいしい料理を、これだけの値段で出せば、お客さんも来るはずだ。
月に1回、日曜日に、マスターが知り合いのバンドが来て、ジャズライブも催されるのだそうだ。それも楽しそうだし、ぜひまた来てみたいと思った。
◎旬彩barほらほらの情報
◎関連記事