京都はじつは、あまり知られていないけれど、日本有数の「ラーメンタウン」なのだ。京都へ来たら、京料理ももちろんいいが、ラーメンを食べ倒してみるのも絶対に悪くない。
数ある京都ラーメンの中で、一つを選べと言われれば、「第一旭たかばし本店」。これは京都駅近くにあるから、まず食べてみるのがおすすめだ。
京都が「日本有数」といって憚りないラーメンタウンであることは、全国的にはほとんど知られていないと思う。何しろ京都には、うまいものが山ほどある。べつにラーメンの宣伝などしなくても、観光資源には事欠かないからなのだろう。
京都のラーメンというと、「京風ラーメン」と呼ばれるうす味の、かつお出汁をブレンドしたやつを思い浮かべる人も多いと思う。
でもあれは、府外の会社が勝手に京都をイメージして作ったもので、実際には京都には、そのようなうす味のラーメンは存在せず、むしろ京都のラーメンは、すべて通常より濃いのである。
ラーメン店の数自体は、べつに京都が、ほかの地域より特別多いわけではない。それでは何をもって「日本有数」なのかといえば、ラーメンの種類が豊富なのである。
何しろ京都発祥の、伝統的なラーメンだけで、
- 黒ラーメン
- 豚骨醤油
- 背脂醤油系
- コッテリ
の、それぞれ完全に異なった系統が4つある。
普通「ご当地ラーメン」と言ったって、「系統」をいえば1種類のことが多い。人口の多い東京は、さすが伝統的なラーメンの種類も多いが、といったって、「鶏がら」「つけ麺」「中華系」・・・と数えていくと、京都とドッコイドッコイではないだろうか。
もちろん上の4つは伝統的なラーメンの話で、そのほかにも独自の新機軸をもった新しいラーメン店は、たくさんある。
そういうラーメン店の様子を見ると、「京都はさすが味の都だ」とつくづく思うわけである。
さてその数ある京都ラーメンの中で、「まず一つを選べ」と言われたら、やはり「第一旭たかばし本店」だ。
これは京都ラーメンの標準ともいえる「豚骨醤油」の元祖店で、ここの模倣またはバリエーションとなるラーメンが、京都では一番多いのではないかと思う。
豚骨醤油は関西・西日本に多くあるラーメンで、「豚骨スープに醤油味」は言うまでもなく共通だが、地域によってそれぞれ違う。
分布の西端はたぶん山口県で、ここはやはり九州の影響を直接的に受けているから、スープを強火でぐつぐつ煮出してキツい豚の臭いがし、慣れない人には食べるのが難しいと思えるほどの、ワイルドなラーメンだ。
それから広島市にも、おいしい豚骨醤油のラーメンがあり、ここはだしの具材に豚骨だけでなく鶏がら、昆布や削りぶし、野菜などを加えていて、ほっこりとするやさしい味が特徴となっている。
それでは京都の豚骨醤油がどんな味なのかといえば、スープの具材は豚骨のみ。それをほとんど煮立たせることなく、時間をかけて煮出していて、透き通った、雑味や臭みが全くないものに仕上げている。
そこに、醤油の味が「きりり」と利いて、いわば「豚の吸物」とでも言いたくなるような風情である。
豚だから基本的にはワイルドなのだが、高倉健のような気品がある。「さすが京都」と思わせるラーメンなのだ。
麺は、中細。
京都のラーメンは、麺はどれも比較的やわらかく、麺のコシを楽しむというより、スープとの絡みを味わうようになっているのが特徴だ。
第一旭たかばし本店は、京都駅から5分くらいのところにあるから、京都に来たら、まず行ってみるのはおすすめだ。
ただし必ず行列ができている。30分くらい並ぶと思うが、うまいラーメン店に行列ができるのは、当たり前の話である。
またこの店は、朝5時の開店直後のラーメンが「一番おいしい」といわれている。2時の閉店からひたすら煮出すからだろう、スープが濃い。
高速バスなどで早朝に京都についた場合は、絶対にここに来るのがいいのである。
ちなみに京都市内には、ほかにも「第一旭」を名乗る店はたくさんある。しかしこれらは、現在では本店と関係がないらしく、味はまったく違うから注意が必要だ。