万願寺とうがらしと手羽先の煮込みで酒を飲んだ。
鶏のだしがしみた肉厚の万願寺は、大変うまいのである。
万願寺(まんがんじ)とうがらしは京都の名産品の一つだけれど、京都以外でも手に入るようだ。
京都以外で買った場合、値段がどのくらいするのか知らないが、こちらの地元の八百屋で、農家直送のものを買うと、一袋200円くらい。ただしスーパーだとこの倍くらいすることもあるし、錦市場などなら3倍くらいになるだろう。
もし手頃な値段で手に入るようなら、ぜひ買ってみることを勧めるのである。
万願寺とうがらしは「甘長とうがらし」の一種で、「伏見とうがらし」と言われる昔ながらの細長いタイプの品種と、ピーマンをかけ合わせて作られた新種だそうだ。
甘長とうがらしはピーマンと比べて皮が硬く、食べ応えがあるのが特徴なのだが、これと肉厚なピーマンを合わせることで、万願寺とうがらしは肉厚だが皮が硬い、独特なものとなっている。
食べるには、まずはサッと焼くのが簡単だが、やはり万願寺は煮るのがうまい。それも20分くらい、じっくり煮ると、くったりとしながらしっかりした食べ応えがあるのが「たまらない」という話になる。
先日八百屋へ行ったら、長さ20センチはあろうかという特大の万願寺が手に入ったので、きのうはこれをメイン食材として使うことにした。万願寺はでかければでかいほど、食べ応えがしっかりしてうまいのである。
当然煮ることにしたのだが、煮方として定番なのは、ちりめんじゃこや削りぶしと煮ることとなる。また先日、ツナとトマトで煮てみたが、これも大変うまかった。
でもそれだと、メインとしてはちょっと物足りない。
そこできのうは、手羽先と一緒に煮ることにした。
味付は、トマトを使ってみようかと迷ったのだが、きのうは定番の甘辛いしょうゆ味。
肉をしょうゆ味で煮るには魚介のだしが必要で、削りぶしを入れてもいいが、オイスターソースを使うことにした。
手羽先は、薄く塩をすり込んでおく。太い部分の2本の骨の間に切込みを入れておくと、味がしみやすいだろう。
だし昆布を敷いた鍋に手羽先、万願寺、それに食べやすい大きさに切った油あげを並べ、2センチ大ほどのたたき潰したショウガを入れたら、肉と万願寺がヒタヒタになるくらいの水を注ぐ。
煮汁はほぼ煮詰めることにし、それがコッテリめ、やや甘み少なめになるよう、酒とみりんを大さじ3ずつ、砂糖を大さじ2、それにオイスターソース小さじ1を入れ、強火にかける。
煮物を煮詰めて作る場合、調味料の量は入れる水の量とは関係なく、最終的に残す煮汁がどの程度の濃さになるかで考える。
残す煮汁が2分の1カップくらい、「ほぼ煮詰める」なら、酒とみりん、砂糖、しょうゆをそれぞれ大さじ3ずつ入れると、「コッテリさせる」加減となり、そこから砂糖大さじ1を引くと、「甘みやや少なめ」となる。
それからしょうゆは、甘みより遅らせて入れないと、しょうゆばかりがしみ込んで、甘みが中に入らない。
さらにしょうゆは、煮るときに全部入れてしまわず、大さじ1くらいを火を止める直前に入れると、しょうゆの風味が出てうまい。
煮立ってきたらアクをサッと取り、落としブタをして、落としブタまで煮汁が上がる火加減を保ちながら、5分ほど煮る。
それからしょうゆ大さじ2を入れ、15分煮る。
15分のあいだで煮汁が2分の1カップくらいまで煮詰まるよう、火加減を調整し、もし煮汁が早くなくなり過ぎるようなら、水を足したりしながら煮る。
最後に大さじ1のしょうゆを入れ、ひと煮立ちさせて火を止めて、煮汁をスプーンで上からかけたあと、そのまま冷まして味がしみるのを待つ。
好みで一味や粉山椒をかける。
鶏の味がしみた万願寺は、大変うまい。
あとは檀一雄流オクラおろし。
『檀流クッキング』にあるレシピなのだが、これも檀一雄の繊細な感覚がよく分かるものとなっている。
オクラはまな板の上で塩を振ってズリズリし、サッとゆでて5ミリ幅くらいの小口切りにする。大根おろしは少し水気をしぼる。
これを合わせ、「よく混ぜる」のが檀流だ。混ぜることで、オクラの粘りを大根に移すわけで、これがうまい。
さらにそれを、冷蔵庫に30分くらい置いて冷やし、その後ちりめんじゃこを加えてさらに混ぜる。
味ポン酢をかけて食べると、夏には打ってつけの、さわやかで味わい深い一品となる。
それに完成した梅干しととろろ昆布の吸物。
梅干しは肉厚で、まだ新しいから梅のさわやかな風味も残り、買ったものより断然うまい。
おとといの残りの麻婆チャンプルー。
酒は、焼酎水割り。
日本酒を切らして何日か焼酎を飲んでいたら、同じだけ飲んでも、焼酎の方が翌朝が全然ラクなことに気付いたのである。
「万願寺は生で食べてもおいしいよね。」
そうなんだよな。
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