「晩めしは外で食おうか」と一瞬思ったのだが、結局豚の粕汁をつくって家飲みした。
家のひとり飲みはハマるのである。
引っ越しの片づけは概ねおわり、そこそこ居心地のいい家となった。
はじめは「ガラン」としていても、家具をいれ、あれこれ手をかけていくと、愛着が湧いてくる。
前の家にくらべると部屋は少し狭いのだが、古い造りの家だから逆に収納はまえより大きく、大量に物を捨てたこともあり、すべてきちんと収まった。
要らぬものが色々あるより、必要最小限でくらすことがぼくには性に合っている。
昼酒も、昨日は家でした。
外で飲むのも、それはそれで悪くはないが、家で飲むほうが考えることが少なく、面倒がないのである。
冷蔵庫の中を思いだすと、油あげとうどんがある。
これを煮てアテにすることにした。
昆布と削りぶしでだしを取り、だし1カップに対してうすくち醤油大さじ1、みりん小さじ1で味つけする。
細くきざんだ油あげと冷凍うどんを煮、青ねぎと一味をかける。
だし殻の昆布と削りぶしも、一味と味ポン酢をかけて食べてしまう。
昼酒のあとは、いつも通り1時間ほど昼寝した。
晩めしは、「外で食べようか」と一瞬おもった。
「食べてみたい」と思っているものがあるのである。
でもそれも、焼酎を2杯のみ、銭湯へ行って風呂にはいるとどうでもよくなった。
冷蔵庫の材料で豚肉の粕汁をつくり、家で飲むことにした。
粕汁は冬のもので、寒い時に体をあたためるのが本領である。
だからもう春の気配が日一日と増していく今は、ちょっと季節はずれとなる。
でも粕汁は、まだ「食べ納め」をしていなかったのだ。
やはりお世話になった食べ物には、一応はきちんと挨拶し、別れを告げないといけないだろう。
粕汁を作るには、まずだしを取る。
3カップ半、2杯分の水に5センチ角ほどのだし昆布と、ミニパック6袋分くらいの削りぶしをいれ、中火にかける。
煮立ってきたら弱火にし、アクをとりながら5分煮る。
ザルで濾し、うすくち醤油大さじ3で味つけする。
この煮汁で、まず短冊に切った油あげ、大根とニンジンを少し煮る。
煮ているあいだに握りこぶし大くらいの酒粕を、煮汁を別の器にとってふやかしておく。
5分ほどして野菜がやわらかくなりかけた頃、ふやかした酒粕をいれる。
2~3分して酒粕が溶けたら豚コマ肉をいれ、肉の色がかわったら、味をみて塩加減し、火を止める。
青ねぎをたっぷりとかける。
豚肉と酒粕の「トロリ」とした食べごたえがいいのである。
昨日はあとは、万願寺とうがらしの焼いたの。
まだハウス物だが、万願寺も出まわるようになってきた。
万願寺はまずは焼いて食べるのが手軽でうまい。
焼き網で焦げめが軽くつくまで焼き、かつお節と一味、味ポン酢をかける。
長芋千切り。
かつお節にわさび醤油。
カレイの煮汁で炊いた高野豆腐。
すぐき。
酒はぬる燗。
昨日はこれを飲みながら、
「家のひとり飲みはハマる」
とあらためて思ったのである。
さて「家飲み」なのだが、まず間違いないのは好きな女と差しつ差されつ家でのむのは、「これほどいいものはない」ということだ。
人に気をつかうことなく寛げて、「幸せ」とは正にこのことだと言えるだろう。
でも家で飲むのは、「ひとりは寂しい」と思う人もいるのではないだろうか。
「酒は話し相手がいるからこそいい」と考える人もいるかもしれない。
でもそれは、自分で料理をしないからなのである。
自分が「食べたい」と思うものを「食べたい」と思うとおりに食べるのは、これもまた「幸せ」なのだ。
この幸せは、不特定多数にむけて料理が出される外食では、めったに味わうことができない。
自分の好みを知り尽くし、さらにきちんと教え込んだ料理のうまい女でもいれば別だが、そうでなければこの幸せを味わうには、自分で作るのがてっとり早い。
「料理ができない」という人もいると思うが、この場合たいした腕前は必要ない。
「客観的にうまいもの」でなくてよく、「自分が思った通りのもの」が出来ればよいわけだから、2~3ヶ月も悪戦苦闘してみれば作れるようになるのではないか。
しかも下手にレシピなど見てしまうより、自己流でやったほうが、思った通りのものは出来やすい。
ただし「ていねいに作ること」は大事である。
この「ひとり飲みの幸せ感」を知ってしまうと、「人付き合いを広げるため」とか、「料理を勉強するため」などの目的以外では、外食はあまり必要なくなる。
家のひとり飲みはハマるのである。
「おっさんはひとりじゃないでしょう。」
お前がいたな、ごめんごめん。
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コメント
ー>ただし「ていねいに作ること」は大事である。
経験から出た名言ですね。
確かに多少いい材料を使っても、肝心の出汁がインスタントではいまいちです。
丁寧に作ったものは多少失敗しても喰えます。
出来合いのものは失敗すればひどいことになります。
もっとも、私はめったに自炊しませんが・・・。