京都の人が「粕汁が好き」なのは間違いなく、「お母さんやおばあちゃんの味が粕汁」という話はけっこう聞く。
ぼくの友達の京都人は、
「地球最後の日には粕汁が食べたい」
と言うくらいだから、粕汁はもう「京都人のソウルフード」と言ってもいいのではないかと思う。
札幌人の母を持ち、東京で育ったぼくは、京都へ来るまで粕汁を食べたことはなかったのだが、全国的には、粕汁は普通に食べられているようだ。
それにしても、京都の人の粕汁好きは、全国平均よりはかなり上なのではないかと思う。
それでさらに、京都の人は、「粕汁は豚肉」と言う人が多いのだ。
「地球最後の日」の友達も、「豚肉が一番」だと言うし、豆腐屋の奥さんも、「やはり豚肉」なのだという。
魚屋の若奥さんは、魚屋に嫁いで「今は紅鮭」と言うけれど、実家の粕汁は豚肉だったのだそうだ。
「粕汁といえば鮭」というイメージがあったので、これはちょっと意外だったのである。
それで実際に京都の人が、粕汁の具として何を入れているのかを、ネットで調べてみることにした。
まず「全国平均」を知るために、クックパッドで「粕汁」と検索し、具として何を使っているか見てみたところ、初めの3ページだけなのだが、
・鮭 10
・豚肉 5
・油揚げと野菜だけなど精進系 11
と、やはり豚肉より鮭が多い。
次にクックパッドで、「粕汁 京都」と検索すると、7件のレシピがヒットして、
・鮭 1
・豚肉 4
・精進 2
という結果になる。
豚肉の圧勝である。
しかしこれだけでは数が少ないと思ったので、グーグルで「粕汁 京都」と検索し、京都在住らしき人が作っている粕汁レシピをピックアップし、具の内容を調べてみた。
その結果は、
・鮭 9
・豚肉 12
・精進 9
で、やはり鮭より豚肉のほうが多くなっているし、全国平均と比べると、京都の「粕汁の豚肉率」は2倍以上となっている。
なぜ京都の人が「豚肉の粕汁」が好きなのか、定かな理由はわからないが、豆腐屋の奥さんは、「粕汁が魚臭いのはあまり好きではない」という。
そういう、京都の人の味的な好みや、魚をあつかう度合いなどとも関係はしてくるだろう。
でもそれが、「ソウルフード」にまでなるというのは、何か他の背景もありそうだ。
これはぼくの憶測だが、粕汁は、全国家庭料理代表の一つである「豚汁」と、京都では同じ位置付けなのではないだろうか。
京都では、味噌汁はそれほど飲まず、それより吸物のことが多いと聞く。
豚汁が「豚肉の味噌汁」だとして、これを吸物でつくろうと思うとやはり豚肉の臭みが出るから、そこへ酒粕を入れたということなのかなと思うのである。
というわけで、豚肉の粕汁なのである。
具は豚肉の他には、定番の油揚げと大根、ニンジン、それに八百屋のご主人のおすすめで、海老芋をいれてある。
作り方は、京都人の友達が「料理屋から聞いた」というやり方をそのまま真似した。
「まず吸物の味をしつらえ、そこに酒粕を入れる」という話である。
さて「豚肉の粕汁」を作るのだが、まずだしを取る。
3カップ半の水にだし昆布の切れっ端とかつお節のミニパック3袋をいれ、中火にかける。
沸騰したらごく弱い火にし、ふつふつと小さく沸騰する加減をたもち、アクを取りながら5分煮る。
最後にザルで、だしを濾しとる。
そうすると、3カップくらいのだしが取れたと思うから、ここに吸物の味をつける。
うすくち醤油を大さじ2くらい、それに味を見ながら塩を少々。
あとから酒粕を入れるのだから、酒は使わなくていいのである。
それから豚コマ肉200グラムは、沸騰させたあと火を止めた熱湯で、サッと湯通ししておく。
こうしておくと、あとでアクをとる手間が省けるのである。
吸物味の煮汁で、まずは野菜を煮る。
昨日は海老芋をいれたから、これをまず5分くらい煮、そのあと短冊にした大根とニンジン、油揚げをやわらかくなるまで煮る。
野菜はゴボウやコンニャクなどを入れる人もいるようだ。
野菜を煮ているあいだに、鍋の煮汁を器にとり分け、酒粕をふやかしておく。
酒粕は基本的に、多ければ多いほど濃厚でコクが出る。
昨日は、ぼくの握りこぶしよりひと回り小さくらいの量をいれた。
野菜が煮えたら、豚肉をいれる。
つづいてすかさず酒粕をいれる。
2~3分煮て、酒粕がきちんと溶けたら、味を見て塩加減し、火を止める。
そのまましばらく置いておけば味がしみる。
器によそい、青ねぎをたっぷり振る。
ほっこりとして、体が温まるのである。
それから昨日は、残っていたブリの煮汁でおからを炊いた。
魚の煮汁でおからを炊くのは、定番中の定番だ。
おからは、スーパーに売っているかどうかは分からないが、ぼくはいつもお世話になっている豆腐屋で買った。
大量なのが50円。
この炊き方は、豆腐屋でよくよく聞いた。
ブリの煮汁に味があるから、具は「青ねぎ」だけでよく、コツは「煮汁を入れすぎビシャビシャにしないようにする」ことなのである。
まず鍋に、「ちょっと少ないかな」という量の煮汁を沸かし、青ねぎの小口切を大量に入れたら、すかさずおからをいれる。
全体を混ぜながら煮汁を足し、汁気の加減がちょうどよくなれば出来あがりだ。
煮汁は3カップほどあったから、かなり大量のおからが出来た。
これは料理する時の酒の肴に打ってつけなのである。
あとは3日目のブリ大根。
これでもかというくらい、味がしみている。
大根の皮や葉、だし殻昆布とかつお節のじゃこ炒め。
ゴマ油とちりめんじゃこで炒めたら、酒とうすくち醤油で味をつけ、汁気がなくなるまで炒めたら、器によそって一味をふる。
すぐき。
前に買った時より、味が深くなっている。
「京都の人は、『肉は豚より牛が好き』とも聞くけどね。」
それなのになぜ粕汁は豚なのか、それも不思議なんだよな。
コメント
初めまして。いつも楽しくブログ拝見させていただいています。
高野さんはお母様が札幌人とのことですが、私は北海道民です。
北海道では粕汁はあまりなじみがないのですが…。
ちなみに、北海道の料理と言われる鮭のチャンチャン焼きなどもあまり食べた記憶がないのです(汗)
ラム肉は好きなので、親戚が集まったりなにかある毎にジンギスカンはよく食べているのですが。。。
高野さんのお母様が作られた料理の中で、北海道を感じられる料理はなにかありますか?もしよろしければ教えてください。
鮭をとてもよく食べた記憶がありますね。
新巻鮭も毎年送られてきていました(^_^)
高野さんレシピでぶり大根作りましたぁ!
乾杯でーす(*^^*)♪♪
煮汁でおからを炊くの初めて知りました!こちらも真似してみたいと思います!
高野さんこんばんは
確かに京都の粕汁は豚ですね。実家の母も嫁も義母も豚です。私は肉類が苦手ですから、粕汁=豚という印象で粕汁が嫌いな食べ物になっていました。札幌の知人に話すと逆に驚かれます。北海道で粕汁といえば鮭以外の選択肢は無いようでした。肉といえば牛肉中心の京都で粕汁だけが豚主役というのは面白い現象です・・・
粕を入れる汁と言えば「どんがら汁」だ。どんがらとは魚のアラの意味でどんなアラを使ってもどんがら汁と言っています。庄内地方では1月末に寒ダラのどんがらを味噌汁にします。それに練り粕と、だだみ(白子)と岩海苔入れます。おっさん鼻血出るかもよ。
>>ゆきさん
私は京都人ですが、札幌に住んでいた事がありました。この時期いただいた鮭と大根のはさみ漬けやニシンの切り込み漬け、そして礼文の漁師が作った特大ホッケ干物が懐かしいです。市販品ですが「いずし」も美味しかったです。忘れられません。
>>どっこさん
鱈のアラ汁で白子も含めて味噌仕立てした物が札幌での冬の楽しみでした。関西ではなかなかいただく事ができませんが。
拝啓
初めてお便りします。
なかなかの腕前恐れ入りました。
そこで三句、
・豚の粕汁山城の味 フウフウ喰らう夫婦あじ
・えもいわれぬや山城の かすは粕でも匂いたまらぬ 千歳汁
・豚の粕汁その味は 今宵凍てつく主とうれしい二人鍋
宜しくどうぞ。
おっさんひとり飯 様机下
北の漁師 拝
いままでかす汁は鮭とメカジキでやってましたが、豚肉は驚きました。
高野さんレシピどうりにやってみたら大変美味しかったです。
今後も楽しみに読ませていただきます。